13:45 〜 14:00
[SCG59-01] 北海道根室沖の前弧構造と沈み込む海洋プレート構造 -稠密OBS探査データの全波形インバージョン解析-
キーワード:千島海溝沈み込み帯、全波形インバージョン、プレート境界構造、17世紀千島海溝地震
稠密海底地震計(OBS)アレイによる探査データに全波形インバージョン(FWI)を適用した構造モデリングによって、南海トラフなどの巨大地震発生帯においてプレート境界付近の低速度層の存在や詳細な断層形状などの把握が進みつつある。一方、千島海溝巨大地震発生帯においては、走時トモグラフィを適用したモデリングによって、上盤プレート先端部のfrontal wedgeと島弧地殻の間の区間において、流体の存在を示唆するreflective zone (RZ)の付近で水平方向にVpが大きく変化することが分かってきたが、RZの詳細な実態や成因についてはよくわかっていない。RZの発達はプレート境界浅部の大すべり分布と密接な関係を持つと考えられている (Azuma et al., in revision) ため、FWIによるRZやその周辺部の地下構造の詳細モデリングによって、プレート沈み込みとRZなど前弧構造の発達の関係、そしてすべり様式の関係の理解が深まることが期待される。
本研究では、海洋研究開発機構の研究船「かいれい」KR19-07航海で取得された千島海溝の前弧域(水深200m)から海溝(水深7400m)を横切りアウターライズに至る全長208 kmの測線沿いにOBS 80台を約2 km間隔で設置して取得したデータに周波数領域の音響波FWIを適用した。FWIの適用にあたり、multiscale layer-stripping workflow (e.g., Górszczyk+ 2017) に則り、4種のオフセット範囲のデータ、6種の周波数帯 (min=2.5 Hz, max=3.5–8.5 Hz expanding by 1 Hz) を設定したモデリングを行った。
FWIの初期構造としては初動走時を用いて構築したトモグラフィ構造を使った。しかし、初動トモグラフィでは堆積層・基盤の境界面などシャープな速度境界も鈍ってモデリングされるため、本データのケースではnear offsetで観測される堆積層・基盤境界付近からの後続波(反射波)をうまく説明できないという問題が、FWI結果に悪影響を及ぼすことが分かった(Azuma et al., SSJ, 2024)。そこで、本研究では、near-offset trace の重みを下げることで問題の後続波の影響を抑制し、FWIモデリングの安定化に成功した。
FWI解析の結果、上盤プレートの全体的な構造は走時インバージョンモデルの特徴と整合的でありつつ、浅部堆積層やfrontal wedge内部にはより短波長のVp不均質がイメージングされ、それらの特徴が反射法イメージング結果と非常に整合的なことが分かってきた。一方、incoming plate については、走時インバージョンや反射法解析では推定することができなかった深部の構造が明らかになってきたことで、海溝から約30km陸側でdip angleが増加する様子が初めて明らかになった。このincoming plate のdip変化は上盤内にRZが発達している付近に位置しており、RZの成因、そしてその付近における地震時すべり様式の変化に、沈み込む太平洋プレートの形状変化が密接に関与している可能性を示唆している。一方、沈み込んだ海洋地殻内のVpには顕著な変化がみとめられず、少なくともFWIによってVpが把握できる海溝から80 kmあたりまでは、ほとんど変質しないまま沈み込んでいることを示唆している。
本研究では、海洋研究開発機構の研究船「かいれい」KR19-07航海で取得された千島海溝の前弧域(水深200m)から海溝(水深7400m)を横切りアウターライズに至る全長208 kmの測線沿いにOBS 80台を約2 km間隔で設置して取得したデータに周波数領域の音響波FWIを適用した。FWIの適用にあたり、multiscale layer-stripping workflow (e.g., Górszczyk+ 2017) に則り、4種のオフセット範囲のデータ、6種の周波数帯 (min=2.5 Hz, max=3.5–8.5 Hz expanding by 1 Hz) を設定したモデリングを行った。
FWIの初期構造としては初動走時を用いて構築したトモグラフィ構造を使った。しかし、初動トモグラフィでは堆積層・基盤の境界面などシャープな速度境界も鈍ってモデリングされるため、本データのケースではnear offsetで観測される堆積層・基盤境界付近からの後続波(反射波)をうまく説明できないという問題が、FWI結果に悪影響を及ぼすことが分かった(Azuma et al., SSJ, 2024)。そこで、本研究では、near-offset trace の重みを下げることで問題の後続波の影響を抑制し、FWIモデリングの安定化に成功した。
FWI解析の結果、上盤プレートの全体的な構造は走時インバージョンモデルの特徴と整合的でありつつ、浅部堆積層やfrontal wedge内部にはより短波長のVp不均質がイメージングされ、それらの特徴が反射法イメージング結果と非常に整合的なことが分かってきた。一方、incoming plate については、走時インバージョンや反射法解析では推定することができなかった深部の構造が明らかになってきたことで、海溝から約30km陸側でdip angleが増加する様子が初めて明らかになった。このincoming plate のdip変化は上盤内にRZが発達している付近に位置しており、RZの成因、そしてその付近における地震時すべり様式の変化に、沈み込む太平洋プレートの形状変化が密接に関与している可能性を示唆している。一方、沈み込んだ海洋地殻内のVpには顕著な変化がみとめられず、少なくともFWIによってVpが把握できる海溝から80 kmあたりまでは、ほとんど変質しないまま沈み込んでいることを示唆している。