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[SCG59-04] フラクチャーゾーンが沈み込む海洋リソスフェアの屈曲に与える影響
キーワード:断裂帯、海洋リソスフェア、沈み込み
海溝で沈み込む海洋リソスフェアの屈曲を説明するこれまでのモデルでは、沈み込む海洋リソスフェアの曲がりを薄い弾性板の曲げモデル(elastic model)で表現し、沈み込む前の海底の形状を説明した(Turcotte et al., 1978)。その結果、マリアナトラフや千島海溝の例に代表されるように、海溝に沈み込む海洋リソスフェアの形状のほぼ全てが、この薄い弾性板の曲げモデルでよく説明できた。一方で、薄い弾性板の曲げモデルで表現できない例外として、トンガ海溝に沈み込む海洋リソスフェアがあり、このモデルの結果から大きくずれている。そこで、Turcotteらは、この大きなずれをプレートの一部が塑性になるというElastic-perfectly plastic bendingモデルで説明した。本研究では、沈み込む海洋リソスフェアに存在するフラクチャーゾーンが海溝に平行である場合、この海洋リソスフェアの屈曲が示す特徴を紹介する。そして、この特徴が薄い弾性板の曲げモデルとは異なっていることから、フラクチャーゾーンでは海洋リソスフェアの強度低下が起こっているという仮説を提案する。研究対象は、伊豆小笠原海溝の沖合の沈み込む海洋リソスフェアである。ここでは、海溝軸から沖合300kmまでに、これまで3つのフラクチャーゾーンが認定されており、その走向が海溝にほぼ平行である。まず、地磁気異常のデータを見直すことにより、海溝軸から40kmほどのところに、これまで認定されていなかったフラクチャーゾーンが存在することを明らかにした。次に、海洋リソスフェアの屈曲の特徴を得るために、研究対象海域で、伊豆小笠原海溝に沈み込む海洋リソスフェアの海底地形の断面図を複数重ねて作成した。その結果、次のような3つの特徴が明らかになった。1)アウターライズに相当する部分が、フラクチャーゾーンでの高度差としてあらわれている。2)海洋リソスフェアの沈み込む角度が大きく、新たに見つけたフラクチャーゾーンでの折れ曲がりでその角度が大きくなるように変化している。3)海溝が深く(海溝と屈曲前の海洋底の深さの差が大きく)なっている。これらの特徴は、薄い弾性板の曲げモデルでは表現できないが、フラクチャーゾーンにおいて沈み込む海洋リソスフェアの強度が低下していれば説明可能である。その理由は、沈み込みに伴う弾性曲げ応力が、フラクチャーゾーンでの段差・角度変化として解消されていると考えられるからである。このため、このフラクチャーゾーンでの地形変化が高度差や急な角度変化としてあらわれ、海溝が深くなる。このような結果は、フラクチャーゾーンが、海洋リソスフェアの強度の低下している部分であることを示唆しており、我々はフラクチャーゾーンでの強度低下という仮説を提案する。今後、この近隣で行われた過去の反射法地震探査の結果等を見直し、この結果への追加情報として検討する。薄い弾性板の曲げモデルの例外となるトンガ海溝でも、フラクチャーゾーンでの強度低下という我々の仮説で説明できる。ここに沈み込む海洋リソスフェアのフラクチャーゾーンが海溝と平行に存在することが、Elastic-perfectly plastic bendingモデルの提案の後のテクトニクスの研究によって示されている(Taylor, 2006)。従って、フラクチャーゾーンでの強度低下という我々の仮説を確かめることができれば、Elastic-perfectly plastic bendingモデルという特異なモデルを導入することなく、より一般性のあるモデルとして提示することが可能となる。