日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG60] 機械学習による固体地球科学の牽引

2025年5月26日(月) 13:45 〜 15:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、直井 誠(北海道大学)、矢野 恵佑(統計数理研究所)、田中 優介(国土地理院)、座長:田中 優介(東北大学)、久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

13:45 〜 14:00

[SCG60-01] 地震研究における大規模言語モデル活用の挑戦

*久保 久彦1Wu Stephen2加納 将行3加藤 慎也4、小穴 温子5岡崎 智久6岡田 望海7亀 伸樹4小寺 祐貴8佐藤 大祐9椎名 高裕10下條 賢梧8溜渕 功史11直井 誠12西山 竜一4平原 和朗6,13、宮本 崇14山田 真澄15 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所、2.統計数理研究所、3.東北大学、4.東京大学地震研究所、5.清水建設株式会社技術研究所、6.理化学研究所革新知能統合研究センター、7.静岡大学、8.気象研究所、9.海洋研究開発機構、10.産業技術総合研究所、11.気象庁、12.北海道大学、13.香川大学、14.山梨大学、15.京都大学防災研究所)

キーワード:大規模言語モデル、地震研究、ハッカソン

大規模言語モデル(LLM)に関する近年の技術革新およびサービス展開は目覚ましく、私たちの生活の様々な場面で使われている。事務的作業や教育においても取り入れられつつあるが、研究活動への適用は限定的であり、それぞれの学術分野で試行錯誤が続いている。こうした背景の中、地震研究分野におけるLLMの活用を探るハッカソンを2024年夏に開催した。ハッカソンは、様々なバックグラウンドを持つ人々が集まり、特定のテーマに関するアイデアを短期間で形にするイベントである。本ハッカソンには18名が参加し、以下の4つの課題に取り組んだ。なお本ハッカソンで扱ったLLMはハッカソン時点(2024年8月)のものであることに留意されたい。

1. シミュレーション結果の特徴抽出・解説付与
防災科研J-SHISで公開されている地震動予測地図の震度分布について、地震発生時の強震動域や地盤特性に関する解説をLLMによって自動生成することを試みた。今回は解説付与対象を首都直下地震の一つとして想定される立川断層帯に限ったが、対象とすべき地震は膨大かつ多様であり、LLM の活用は網羅的な解説付与に有効と考えられる。また、関数最適化問題において自然言語を利用する試みとしてChatGPT による対話形式およびTextGrad (Hou et al. 2023)による非対話形式で問題を解くことも試みた。従来マニュアル操作で行われていた外れ値の自動認識や説明付与などでの活用につながると考える。

2. 地震関連ソーシャルデータの自動収集・解析
2024年8月8日の日向灘地震と南海トラフ地震臨時情報に関する Webニュース記事とコメントを収集し、社会の反応をLLMで解析した。具体的には、特定のカテゴリに分類できるコメント内容の要約、記事のスタンスとコメントの傾向の関係性、コメントの質的変化分析、科学者に対する感情の時間変化、コメントのクラスター分析を行った。そのうち、解析者が一定の方向性を示してコメントの要約を求めるようなタスクにおいては、主観的な印象とよく一致する結果が得られた。さらにコメントへのラベル付けおよび定量解析も試みたが、LLMによるラベル付けの信頼性が課題となった。それでも短時間で大量の情報を自動処理して社会の反応をモニタリングするツールとしては、十分に有用であるという印象を得た。

3. 地震・火山に関する想定問答の自動生成
気象庁や内閣府、地震調査研究推進本部、火山噴火予知連絡会より公開されているPDF資料を検索拡張生成(Retrieval-Augmented Generation、RAG)機能付きのLLMで読み込み、地震や火山に関する想定質問に対する回答の自動生成を試みた。クローズドLLM の一つであるNotebookLM(Google 2024)とLlama 3.1やGemma2などのローカルLLMを比較し、精度を評価した。Notebook LMは直感的な操作のみで妥当な回答を得られることが多かったが、場合によってはハルシネーションが発生することも確認した。ローカルLLMによる回答は不十分なものになることが多かったが、これは単純なRAG技術を今回採用したことによると考えられる。またLLMによる回答精度向上のためには、データや質問の整理が重要であることも実感した。

4. シミュレーションコードの自動生成
沈み込み帯における巨大地震の繰り返し発生を再現する地震サイクル・シミュレーションと、関連するデータ同化のためのPythonコードの作成を目的に、以下の3つの課題に取り組んだ:ばねブロックモデルを用いた地震サイクル計算、ローレンツ63モデルの粒子フィルタによるデータ同化、プレート境界での摩擦特性推定のための4次元変分法データ同化。いずれにおいても最終的な目的は達成されたが、その過程においては人の手で数式等の修正を指示するなどの試行錯誤が必要であった。それでもLLMを活用することでコーディング作業が大幅に効率化されることが示された。

このハッカソンを通じて、地震研究におけるLLM活用について一定の方向性を示せたと考える。今後のLLMの進展により、さらに多くの研究シーンでの活躍が期待される。