日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG60] 機械学習による固体地球科学の牽引

2025年5月26日(月) 13:45 〜 15:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、直井 誠(北海道大学)、矢野 恵佑(統計数理研究所)、田中 優介(国土地理院)、座長:田中 優介(東北大学)、久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

14:30 〜 14:45

[SCG60-04] 状態空間モデルを用いた時系列データのトレンド抽出と異常検知への応用

*土谷 真由1、長濱 裕幸1武藤 潤1、安岡 由美2 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻、2.神戸薬科大学放射線管理室)

キーワード:機械学習、ランダムフォレスト解析、状態空間モデル、大気中ラドン濃度、東北地方太平洋沖地震、異常検知

現在、地震発生を予測するために、地震前に発生する様々な異常が研究されているが、その一つが放射性元素ラドン(²²²Rn)である。土壌、水、大気中のラドン濃度は、地殻変動に応じて変動することが知られている。最近の研究では、地震前のラドン濃度の変動を統計的に解析することで異常を検出し、ラドンの定量的な評価を行っている。このうち大気中のラドン濃度の測定にはα-ガードという測定器が広く使用されている。α-ガードは小型で安価な機器であることから大規模な観測設備を設置する必要がなく、さまざまな場所で測定を行うことができるという利点がある。しかし小型であることから容積が小さく、中に取り込める空気が少ないことから大型の通気式空間電離箱と比較すると濃度の過大評価・過小評価が起こりやすく、測定結果にばらつきが多いという特徴がある。そこで、状態空間モデルと呼ばれる、時系列データの中から見えない要素を抽出できるモデルを使用して、α-ガードによる大気中ラドン濃度の観測値から変動のトレンド抽出を行った。抽出されたトレンドは、ばらつきが多く短波長の変動をしているα-ガードの観測値と比較すると長周期の変動をしており、通気式の空間電離箱を用いて同じ地点で同時に測定された大気中ラドン濃度変動とも類似していた。この手法を宮城県牡鹿半島に位置する、宮城県原子力センター小積局に設置されたα-ガードで測定された大気中ラドン濃度にも適用させた結果、小積局のα-ガードで観測された大気中ラドン濃度からも状態空間モデルによってトレンドを抽出することができた。抽出されたトレンドが高まっていたタイミングは、福島県立医科大学で測定された大気中ラドン濃度を用いてラドン濃度の異常検知を行った先行研究と同様のタイミングであった。さらに、このトレンドを用いて機械学習の一種であるランダムフォレスト解析で異常検知を行った。抽出されたトレンドとランダムフォレストによって求められた予測値の差分を計算すると、東北沖地震の前に差分の標準偏差の3倍を上回る濃度が観測されていた。加えて、牡鹿半島のGPSデータと比較すると抽出されたトレンドと予測値の差分の正負が変化するタイミングの近傍でGPSデータが大きく変位していたことから、変形に起因する大気中ラドン濃度変動を捉えていたと考えられる。抽出されたトレンドと同様に、α-ガードの生データでもランダムフォレスト解析を行ったところ、地震前の異常は検知できたがそれ以外の時期でも異常が頻繁に見られたことから、α-ガードの生データを異常検知に使用するためには異常とみなす新基準の検討が必要となる。これらのことから、状態空間モデルは従来の手法で大気中ラドン濃度の異常検知を行う場合にばらつきの大きいデータの解釈を容易にするために効果的な手法であると考えられる。