17:15 〜 19:15
[SCG60-P10] 生成AIによる地震動時刻歴生成モデルに関する基礎的検討
キーワード:機械学習、生成AI、地震動、時刻歴波形
1. はじめに
従来の地震動評価手法には、地震動予測式を用いた簡便法と断層モデルを用いた詳細法がある。簡便法は、特定の地震動指標を代表的なパラメータを用いて説明した経験的回帰式であり、簡便で計算コストがかからないという利点がある。詳細法は、時刻歴を評価できるため、地震動が本来持っている情報を簡便法よりもはるかに多く反映させられるという利点がある一方、断層パラメータの設定、地下構造のモデル化、適切な波形合成手法の選択など、高い専門性と煩雑な計算を要する。
一方で、近年、音声合成への適用実績があるニューラルネットワークを地震動に適用した研究が盛んに進められている(例えば、Matsumoto et al., 2023、Yamaguchi et al., 2024、Shi et al., 2024など)。これらで提案されている方法では、簡便法と同様のパラメータあるいは一様乱数を入力条件とし、教師データとした観測地震動に近い性質を有する模擬地震動の時刻歴を直接的かつ簡便に得ることを実現している。震源やサイトに固有のパラメータを各地震動に条件づければ、非エルゴード的な時刻歴生成モデルの構築にもつながる可能性があり、将来の強震動予測や地震動ハザード評価等へのさらなる活用・展開が期待される。しかしながら、各種ニューラルネットワークによって生成される時刻歴波形の差異や、教師データとした観測地震動に条件づけた特徴量の影響度合いについてはあまり議論されていない。
そこで本検討では、生成AIの地震動への適用に関する基礎的検討として、WaveGANとDiffWaveという2つの既存のニューラルネットワークを活用して、同じ観測地震動群から成る教師データを学習させたモデルを作成し、それぞれのモデルにより生成される地震動の再現性を比較する。また、観測地震動の学習に用いられた特徴量が生成される地震動に及ぼす影響について検討する。
2. モデルと学習用データセット
基礎とするニューラルネットワークとして、音声合成の分野で提案されたWaveGAN(Donahue et al., 2019)と拡散モデルに基づくDiffWave(Kong et al., 2021)をそれぞれ採用し、2種類の地震動時刻歴生成モデルを作成した。いずれのモデルにおいても、特徴量を条件づけられるようにネットワークを追加で接続した。
学習用の地震動データは、日本及びその周辺で発生したMw5.0~7.8の80地震(内陸地殻内地震31個、プレート境界地震19個、スラブ内地震30個)で防災科学技術研究所強震観測網K-NET、KiK-netにおいて観測された14,313波の加速度時刻歴である。P波初動から記録され、周期0.1~10秒のフーリエ振幅スペクトルのSN比が明瞭な観測記録を選定した。加速度時刻歴の成分は、水平2成分を45度軸方向に回転させて得られる1成分で代表させ、周期0.1~10秒のバンドパスフィルターを施した。ただし、学習時には最大振幅値の絶対値が1になるように基準化し、データ長さは160秒に統一した。全波形のうち、8割を教師データ、残りの2割をテストデータとした。各時刻歴に条件づける特徴量には、Mw、震源距離、震源深さ、表層10m平均S波速度、表層30m平均S波速度、S波速度1,400m/s層上面の深さ、および地震基盤上面の深さの7種類を用いた。
3. 生成された地震動の評価
教師データとした地震動の再現性を検証するために、学習時と同じ特徴量をモデルに入力し生成された時刻歴波形と元の観測時刻歴波形との差異について評価した。評価指標には加速度応答スペクトル、応答継続時間スペクトル(石井, 2012)、および群遅延時間の平均値を用いた。
モデルに共通した傾向として、加速度応答スペクトルおよび群遅延時間の平均値は、短周期帯域が良好である一方、長周期帯域はそれよりもやや劣ることが確認された。また、応答継続時間スペクトルは、短周期・長周期帯域ともに同程度に良好な結果が得られた。
震源距離が比較的近い領域のデータに対して、DiffWaveモデルによって生成された地震動の中には、観測時刻歴波形よりも波群の重心が遅れ、長周期成分が極端に励起されたものが含まれていたことから、DiffWaveモデルにおける特徴量の影響度合いがWaveGANモデルと異なり、遠方の大規模な地震による地震動の影響を受けやすくなっていた可能性が示唆された。
本発表では、各モデルによって生成された地震動の違いを調べた結果について報告する。
従来の地震動評価手法には、地震動予測式を用いた簡便法と断層モデルを用いた詳細法がある。簡便法は、特定の地震動指標を代表的なパラメータを用いて説明した経験的回帰式であり、簡便で計算コストがかからないという利点がある。詳細法は、時刻歴を評価できるため、地震動が本来持っている情報を簡便法よりもはるかに多く反映させられるという利点がある一方、断層パラメータの設定、地下構造のモデル化、適切な波形合成手法の選択など、高い専門性と煩雑な計算を要する。
一方で、近年、音声合成への適用実績があるニューラルネットワークを地震動に適用した研究が盛んに進められている(例えば、Matsumoto et al., 2023、Yamaguchi et al., 2024、Shi et al., 2024など)。これらで提案されている方法では、簡便法と同様のパラメータあるいは一様乱数を入力条件とし、教師データとした観測地震動に近い性質を有する模擬地震動の時刻歴を直接的かつ簡便に得ることを実現している。震源やサイトに固有のパラメータを各地震動に条件づければ、非エルゴード的な時刻歴生成モデルの構築にもつながる可能性があり、将来の強震動予測や地震動ハザード評価等へのさらなる活用・展開が期待される。しかしながら、各種ニューラルネットワークによって生成される時刻歴波形の差異や、教師データとした観測地震動に条件づけた特徴量の影響度合いについてはあまり議論されていない。
そこで本検討では、生成AIの地震動への適用に関する基礎的検討として、WaveGANとDiffWaveという2つの既存のニューラルネットワークを活用して、同じ観測地震動群から成る教師データを学習させたモデルを作成し、それぞれのモデルにより生成される地震動の再現性を比較する。また、観測地震動の学習に用いられた特徴量が生成される地震動に及ぼす影響について検討する。
2. モデルと学習用データセット
基礎とするニューラルネットワークとして、音声合成の分野で提案されたWaveGAN(Donahue et al., 2019)と拡散モデルに基づくDiffWave(Kong et al., 2021)をそれぞれ採用し、2種類の地震動時刻歴生成モデルを作成した。いずれのモデルにおいても、特徴量を条件づけられるようにネットワークを追加で接続した。
学習用の地震動データは、日本及びその周辺で発生したMw5.0~7.8の80地震(内陸地殻内地震31個、プレート境界地震19個、スラブ内地震30個)で防災科学技術研究所強震観測網K-NET、KiK-netにおいて観測された14,313波の加速度時刻歴である。P波初動から記録され、周期0.1~10秒のフーリエ振幅スペクトルのSN比が明瞭な観測記録を選定した。加速度時刻歴の成分は、水平2成分を45度軸方向に回転させて得られる1成分で代表させ、周期0.1~10秒のバンドパスフィルターを施した。ただし、学習時には最大振幅値の絶対値が1になるように基準化し、データ長さは160秒に統一した。全波形のうち、8割を教師データ、残りの2割をテストデータとした。各時刻歴に条件づける特徴量には、Mw、震源距離、震源深さ、表層10m平均S波速度、表層30m平均S波速度、S波速度1,400m/s層上面の深さ、および地震基盤上面の深さの7種類を用いた。
3. 生成された地震動の評価
教師データとした地震動の再現性を検証するために、学習時と同じ特徴量をモデルに入力し生成された時刻歴波形と元の観測時刻歴波形との差異について評価した。評価指標には加速度応答スペクトル、応答継続時間スペクトル(石井, 2012)、および群遅延時間の平均値を用いた。
モデルに共通した傾向として、加速度応答スペクトルおよび群遅延時間の平均値は、短周期帯域が良好である一方、長周期帯域はそれよりもやや劣ることが確認された。また、応答継続時間スペクトルは、短周期・長周期帯域ともに同程度に良好な結果が得られた。
震源距離が比較的近い領域のデータに対して、DiffWaveモデルによって生成された地震動の中には、観測時刻歴波形よりも波群の重心が遅れ、長周期成分が極端に励起されたものが含まれていたことから、DiffWaveモデルにおける特徴量の影響度合いがWaveGANモデルと異なり、遠方の大規模な地震による地震動の影響を受けやすくなっていた可能性が示唆された。
本発表では、各モデルによって生成された地震動の違いを調べた結果について報告する。