17:15 〜 19:15
[SCG60-P11] レオロジーモデルに基づくニューラルネットワークを用いた岩石と地殻の非線形摩擦モデル

キーワード:ニューラルネットワーク、解釈可能性、摩擦モデル、レオロジーモデル
これまで固体地球科学では、断層挙動の理解を目指し、多数の摩擦モデルが検討されてきた。古典的なモデルとして、バネとブロックを組み合わせた、いわゆるばねブロックモデルが存在し、さらにダッシュポットを組み込むことで粘弾性的な変形を考慮したモデルも存在する(Yoshino, 1998など)。本研究では、このようなモデルをレオロジー摩擦モデルと呼ぶ。一方、近年ではニューラルネットワークを用いた摩擦モデルも考案されており、例えばPhysics-informed neural networks (PINNs) を用いた研究などが存在する(Li et al., 2024など)。
地震現象とニューラルネットワークはともに多要素からなる複雑系であり、要素の閾値性と要素間の相互作用という共通性が指摘されている(甘利, 1987)。したがって、ニューラルネットワークを用いた摩擦モデルにおいて、この共通性に着目することでより本質的な理解に繋がるモデルが構築されると考えられる。しかし、近年のニューラルネットワークを用いた研究の多くは、強力なパラメータ推定手法である誤差逆伝播法に着目した、ツールとしての使用方法を重視したものである(Rouet-Leduc et al., 2017など)。そこで、本研究では各要素での粘弾性的な微変形と要素間の弾性的な相互作用を持つレオロジー摩擦モデルを対象として、ニューラルネットワークとの数学的な等価関係を検討した。
結果として、内部データの回帰する構造を持つニューラルネットワークによってレオロジー摩擦モデルが表現されることが明らかになった。このモデルはブロック滑りの判定をおこなうゲート構造と内部状態を制御するリセット構造からなる。それによりある歪速度下における断層面の時空間的な応力・歪状態の変化、あるいはすべりの時空間パターンを記述することができる。また、例えば歪速度とすべり分布の関係を記述するモデルとみなすと、観測データを入出力としての解析が可能である。さらに、歪速度と断層のすべり分布からなるデータセットを用意することにより、誤差逆伝播法から断層面の弾性率や周囲の粘性率の分布を推定できる逆解析を検討することも可能である。
また、ニューラルネットワーク内における計算式に対し極限操作と多項式近似による整理をおこなった。結果として、サンプリング間隔を0に近づけた時に、ニューラルネットワークの各重みは構成方程式の応力、歪の最高階数の導関数に対する係数と二項係数によって定まることが明らかになった。この係数は応力と歪、または歪速度との増分関係を表すものである。これより、誤差逆伝播法によるパラメータフィッティングは連続的なデータにおいてこの増分関係をデータから見出していると解釈される。
本研究で扱うニューラルネットワークは、入力、回帰、相互作用、出力の4要素からなることから、既存の物理方程式との対比関係を考えることもできる。たとえば、Ruina (1983) の速度状態依存摩擦構成則では、すべり速度と入力、状態変数と回帰、摩擦係数と出力が対応する。また、一次元の圧密現象を記述するTerzaghi (1924) の数式では、次時刻の間隙水圧が回帰と相互作用によって説明される。
最後に、本研究モデルは、相互作用のある複雑系である摩擦挙動を、ニューロンの複雑系であるニューラルネットワークで表現したものである。これは、スピングラスとニューラルネットワークの類似性を指摘したHopfield (1982) のように物理系とニューラルネットワークの対比をおこなった新たな事例となる。両者の対比はニューラルネットワークの解釈可能性や誤差逆伝播法の意味を考える上で重要だと考えられる。
地震現象とニューラルネットワークはともに多要素からなる複雑系であり、要素の閾値性と要素間の相互作用という共通性が指摘されている(甘利, 1987)。したがって、ニューラルネットワークを用いた摩擦モデルにおいて、この共通性に着目することでより本質的な理解に繋がるモデルが構築されると考えられる。しかし、近年のニューラルネットワークを用いた研究の多くは、強力なパラメータ推定手法である誤差逆伝播法に着目した、ツールとしての使用方法を重視したものである(Rouet-Leduc et al., 2017など)。そこで、本研究では各要素での粘弾性的な微変形と要素間の弾性的な相互作用を持つレオロジー摩擦モデルを対象として、ニューラルネットワークとの数学的な等価関係を検討した。
結果として、内部データの回帰する構造を持つニューラルネットワークによってレオロジー摩擦モデルが表現されることが明らかになった。このモデルはブロック滑りの判定をおこなうゲート構造と内部状態を制御するリセット構造からなる。それによりある歪速度下における断層面の時空間的な応力・歪状態の変化、あるいはすべりの時空間パターンを記述することができる。また、例えば歪速度とすべり分布の関係を記述するモデルとみなすと、観測データを入出力としての解析が可能である。さらに、歪速度と断層のすべり分布からなるデータセットを用意することにより、誤差逆伝播法から断層面の弾性率や周囲の粘性率の分布を推定できる逆解析を検討することも可能である。
また、ニューラルネットワーク内における計算式に対し極限操作と多項式近似による整理をおこなった。結果として、サンプリング間隔を0に近づけた時に、ニューラルネットワークの各重みは構成方程式の応力、歪の最高階数の導関数に対する係数と二項係数によって定まることが明らかになった。この係数は応力と歪、または歪速度との増分関係を表すものである。これより、誤差逆伝播法によるパラメータフィッティングは連続的なデータにおいてこの増分関係をデータから見出していると解釈される。
本研究で扱うニューラルネットワークは、入力、回帰、相互作用、出力の4要素からなることから、既存の物理方程式との対比関係を考えることもできる。たとえば、Ruina (1983) の速度状態依存摩擦構成則では、すべり速度と入力、状態変数と回帰、摩擦係数と出力が対応する。また、一次元の圧密現象を記述するTerzaghi (1924) の数式では、次時刻の間隙水圧が回帰と相互作用によって説明される。
最後に、本研究モデルは、相互作用のある複雑系である摩擦挙動を、ニューロンの複雑系であるニューラルネットワークで表現したものである。これは、スピングラスとニューラルネットワークの類似性を指摘したHopfield (1982) のように物理系とニューラルネットワークの対比をおこなった新たな事例となる。両者の対比はニューラルネットワークの解釈可能性や誤差逆伝播法の意味を考える上で重要だと考えられる。