14:30 〜 14:45
[SCG61-04] プレート境界断層に沿う歪の解放に伴った地質構造と岩石組織の観察

キーワード:層面滑り、主境界衝上断層、微細組織観察、摩擦発熱、剪断面、構造地質
はじめに ヒマラヤ地域は、インド亜大陸とアジア大陸の衝突に伴い形成され、3つの主要なプレート収束境界断層 (主前縁衝上断層 (MFT)・主境界衝上断層 (MBT)・主中央衝上断層 (MCT))が存在する。現在でもインド亜大陸は北上を続けており、その結果ヒマラヤ地域では地震が発生している。Bilham (2019)の研究では、沈み込みに伴って蓄積された歪は、地震によって完全には解放されておらず、いずれMw=8.6レベルの地震が1~2回発生する可能性が強いと結論づけている。一方で、実際にプレートの沈み込みに際し、プレート境界でどのような地質現象が生じているのかということは明らかにされていない。そこで本研究では、このことを明らかにするために、地質調査および岩石の微細組織の観察を行った。特に、沈み込み過程の脆性変形領域に着目した。
研究対象地域 インド・ヒマチャルプラデシュ州サバスー市に露出するMBTを挟む3×2 ㎞の範囲である。MBTは、約10 Maから約 0.5 Maの間に活動した断層である。地表に露出するMBTの上盤は地下220℃、下盤は180℃で変形した岩石が露出すると考えられる(Sarkar et al., 2021)。MBTの上盤には、先カンブリア時代の砂岩層が主に分布する。砂岩単層の層厚は約5 cm - 30 cmである。泥岩層(単層の層厚約2 ㎝)との互層も確認できる。下盤には新第三期の石灰質砂岩が主に露出し、方解石の脈が広く確認できる。
野外調査 1)MBTの上盤側では、調査域全体の岩石が層面滑りをしていた。2)褶曲や小断層が発達する幅約100 m – 500 mの領域(ダメージゾーン)が複数確認できる。ダメージゾーンと整然層の分布からセクション分けすると、それぞれのダメージゾーンと整然層の地層は走向がほぼ同一ながら、傾斜はセクションごとに最大で約60度回転している。3)層面滑り面に伴い、発達するすべり線とキンクバンドから、すべりの方向と主圧縮軸の方向をそれぞれ求めた。その結果、それらはMBTの活動と整合的なものが多いことが明らかとなった。4)すべり面上に、すべり線と平行な5 cm-10 ㎝の白い筋が確認された。
層面滑りを受けた砂岩の微細組織観察 5)層面滑りの多くは、砂岩単層内部の層理面に平行な層厚1 ㎜-10 mmの複数の剪断面に沿って発達する。6)各剪断面は小歪から大歪の状態を記録している。歪が大きくなるに従って、石英(あるいは長石)が流体と反応し細粒化するとともに白雲母が晶出する。7)すべり面(剪断帯)の内部には、砂岩を構成する約100 μmの石英粒子が剪断方向に伸長し波動消光を示している。この様な塑性変形した石英から石英脈が生じている。このことは、砂岩を構成する石英粒子が剪断による摩擦熱によって塑性変形し、石英粒子から石英脈が形成されたことを強く示唆する形成されたことを強く示唆する。この石英脈は、4)の白い筋に対応する。8)塑性変形した石英粒子の結晶方位をEBSDによって測定した。その結果、basalすべりによる転位クリープによって形成されたCPOが確認できた。このCPOは300~400℃で卓越することが知られている。石英脈中の動的再結晶を受けた石英の粒径は約2 μmである。再結晶粒径による地質差応力計を用いて差応力を見積もり、温度と差応力値から石英脈形成時の歪速度を推定した。その結果、差応力 925 MPa、歪速度 10-10~10-8 /s、すべり速度 10-12~10-10 m/sとなった。このすべり速度は、Rowe et al., 2015で示されたSSEのすべり速度と対応する。
これらの結果は、プレートの沈み込みを起因として生じる歪エネルギーの一部が、“層面滑りの運動”と“すべりによる摩擦発熱”によって解放されている可能性を示唆する。
現在、これらの結果から推定された条件下で、摩擦発熱による温度上昇によって、80℃以上の温度の上昇が起きるのかを確認するための、コンピューターシミュレーションを行っている。
研究対象地域 インド・ヒマチャルプラデシュ州サバスー市に露出するMBTを挟む3×2 ㎞の範囲である。MBTは、約10 Maから約 0.5 Maの間に活動した断層である。地表に露出するMBTの上盤は地下220℃、下盤は180℃で変形した岩石が露出すると考えられる(Sarkar et al., 2021)。MBTの上盤には、先カンブリア時代の砂岩層が主に分布する。砂岩単層の層厚は約5 cm - 30 cmである。泥岩層(単層の層厚約2 ㎝)との互層も確認できる。下盤には新第三期の石灰質砂岩が主に露出し、方解石の脈が広く確認できる。
野外調査 1)MBTの上盤側では、調査域全体の岩石が層面滑りをしていた。2)褶曲や小断層が発達する幅約100 m – 500 mの領域(ダメージゾーン)が複数確認できる。ダメージゾーンと整然層の分布からセクション分けすると、それぞれのダメージゾーンと整然層の地層は走向がほぼ同一ながら、傾斜はセクションごとに最大で約60度回転している。3)層面滑り面に伴い、発達するすべり線とキンクバンドから、すべりの方向と主圧縮軸の方向をそれぞれ求めた。その結果、それらはMBTの活動と整合的なものが多いことが明らかとなった。4)すべり面上に、すべり線と平行な5 cm-10 ㎝の白い筋が確認された。
層面滑りを受けた砂岩の微細組織観察 5)層面滑りの多くは、砂岩単層内部の層理面に平行な層厚1 ㎜-10 mmの複数の剪断面に沿って発達する。6)各剪断面は小歪から大歪の状態を記録している。歪が大きくなるに従って、石英(あるいは長石)が流体と反応し細粒化するとともに白雲母が晶出する。7)すべり面(剪断帯)の内部には、砂岩を構成する約100 μmの石英粒子が剪断方向に伸長し波動消光を示している。この様な塑性変形した石英から石英脈が生じている。このことは、砂岩を構成する石英粒子が剪断による摩擦熱によって塑性変形し、石英粒子から石英脈が形成されたことを強く示唆する形成されたことを強く示唆する。この石英脈は、4)の白い筋に対応する。8)塑性変形した石英粒子の結晶方位をEBSDによって測定した。その結果、basalすべりによる転位クリープによって形成されたCPOが確認できた。このCPOは300~400℃で卓越することが知られている。石英脈中の動的再結晶を受けた石英の粒径は約2 μmである。再結晶粒径による地質差応力計を用いて差応力を見積もり、温度と差応力値から石英脈形成時の歪速度を推定した。その結果、差応力 925 MPa、歪速度 10-10~10-8 /s、すべり速度 10-12~10-10 m/sとなった。このすべり速度は、Rowe et al., 2015で示されたSSEのすべり速度と対応する。
これらの結果は、プレートの沈み込みを起因として生じる歪エネルギーの一部が、“層面滑りの運動”と“すべりによる摩擦発熱”によって解放されている可能性を示唆する。
現在、これらの結果から推定された条件下で、摩擦発熱による温度上昇によって、80℃以上の温度の上昇が起きるのかを確認するための、コンピューターシミュレーションを行っている。