16:00 〜 16:15
[SCG61-09] 北海道東部の上部地殻におけるS波偏向異方性
キーワード:S波偏向異方性、S波スプリッティング
S波スプリッティングは異方性媒質中においてS波が偏向異方性として分裂し, 互いに直交し速度が異なる2つの剪断波として検出される現象である. 上部地殻においては異方性媒質が応力による亀裂の選択的配向によって生じる場合, SHmax(最大水平圧縮軸)方向に平行な異方性を示す. 断層帯や火山の近傍において広域応力場と異なる方向の異方性が見られる場合では, 断層平行のフラクチャや局所応力場, 流体の上昇経路などを反映していると推測される(Boness and Zoback, 2006 ; Johnson et al., 2011 ). S波スプリッティングでは震源と観測点1ペアからデータを得ることができるため観測点の少ない領域や検知できる観測点数が少ない微小地震に対しても有効であり, さらに地震の発生間隔がそのまま時間分解能となるので, 応力場や地殻構造の反映として異方性の時間変化を追うことに適している. なお、原因となる地殻内の微小亀裂の大きさや異方性媒質の広がりの大きさに従い、S波スプリッティングのパラメータには周波数依存性が見られることも知られている.
北海道東部は太平洋プレートの沈み込みに伴う西北西-東南東圧縮の応力場にあり(Terakawa and Matsu’ra, 2010;田上・他, JpGU2025, 2025), かつ複数の活火山・カルデラ(アトサヌプリや屈斜路カルデラなど)で構成される火山フロントが存在する. また同領域には火山フロントに沿って走向NE-SWの活断層が分布し、網走湖の東には走向N-Sの逆断層が確認されている(AIST, 2024) このことから北海道東部では複雑な地殻構造が推測されている. しかしS波スプリッティングを用いた解析を道東地域の陸域にて行なった例は少ない. そこで本解析では道東地域にてS波偏向異方性を用いた応力場や地殻構造の推定とその時間変化を明らかにすることを目的として, 気象庁一元化震源に基づく地震波形データを利用し, MFAST(Multiple Filter Automatic Splitting Technique, Savage et al., 2010)を用いてS波スプリッティングのパラメータを測定した. またその際, 同アルゴリズムのフィルタと時間窓の調整を行うことで周波数依存性を検討した.
道東全域での異方性の周波数依存性を含む検討では, 低周波帯, 高周波帯ともにS波の高速成分の振動方向 φ(異方性の方向)は西北西-東南東方向が卓越しており, 広域応力場の最大水平圧縮方向に整合的であった. 低周波帯では異方性の方向に地域的な違いが見られ, 火山フロントを境に前弧側ではおよそ西北西-東南東方向の異方性が優勢であったのに対し, 火山フロントから背弧側では異方性の不均質性が見られた. 高周波帯では地域によらず様々な異方性の方向が見られた. さらに細かなスケールで確認した結果, 網走東部, 江鳶山の北西において異方性の方向に西北西-東南東方向と南-北方向の2つのピークが見られた. それぞれ広域応力場とこの地域の逆断層の走向に平行な異方性であり, 特に2020年には地震活動に伴って前者から後者への異方性の方向の時間変化も見られた. 屈斜路湖の近傍では異方性の方向がアトサヌプリ山頂から放射状に広がるような傾向を示した他, 屈斜路カルデラの周囲ではカルデラ境界断層や流体の上昇経路を示唆するような円周方向の異方性も見られた. 屈斜路湖付近を含め, 道東地域では火山性の地殻変動が観測されており, マグマだまり由来の応力変動などを反映した異方性の時間変化の検出が期待できる.
北海道東部は太平洋プレートの沈み込みに伴う西北西-東南東圧縮の応力場にあり(Terakawa and Matsu’ra, 2010;田上・他, JpGU2025, 2025), かつ複数の活火山・カルデラ(アトサヌプリや屈斜路カルデラなど)で構成される火山フロントが存在する. また同領域には火山フロントに沿って走向NE-SWの活断層が分布し、網走湖の東には走向N-Sの逆断層が確認されている(AIST, 2024) このことから北海道東部では複雑な地殻構造が推測されている. しかしS波スプリッティングを用いた解析を道東地域の陸域にて行なった例は少ない. そこで本解析では道東地域にてS波偏向異方性を用いた応力場や地殻構造の推定とその時間変化を明らかにすることを目的として, 気象庁一元化震源に基づく地震波形データを利用し, MFAST(Multiple Filter Automatic Splitting Technique, Savage et al., 2010)を用いてS波スプリッティングのパラメータを測定した. またその際, 同アルゴリズムのフィルタと時間窓の調整を行うことで周波数依存性を検討した.
道東全域での異方性の周波数依存性を含む検討では, 低周波帯, 高周波帯ともにS波の高速成分の振動方向 φ(異方性の方向)は西北西-東南東方向が卓越しており, 広域応力場の最大水平圧縮方向に整合的であった. 低周波帯では異方性の方向に地域的な違いが見られ, 火山フロントを境に前弧側ではおよそ西北西-東南東方向の異方性が優勢であったのに対し, 火山フロントから背弧側では異方性の不均質性が見られた. 高周波帯では地域によらず様々な異方性の方向が見られた. さらに細かなスケールで確認した結果, 網走東部, 江鳶山の北西において異方性の方向に西北西-東南東方向と南-北方向の2つのピークが見られた. それぞれ広域応力場とこの地域の逆断層の走向に平行な異方性であり, 特に2020年には地震活動に伴って前者から後者への異方性の方向の時間変化も見られた. 屈斜路湖の近傍では異方性の方向がアトサヌプリ山頂から放射状に広がるような傾向を示した他, 屈斜路カルデラの周囲ではカルデラ境界断層や流体の上昇経路を示唆するような円周方向の異方性も見られた. 屈斜路湖付近を含め, 道東地域では火山性の地殻変動が観測されており, マグマだまり由来の応力変動などを反映した異方性の時間変化の検出が期待できる.