日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 変動帯ダイナミクス

2025年5月28日(水) 15:30 〜 17:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和((国研)産業技術総合研究所)、座長:岩森 光(東京大学・地震研究所)、松本 聡(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

16:30 〜 16:45

[SCG61-11] “地震モーメント比”とb値による地殻応力状態評価の試み(3)

*松本 聡1 (1.九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

キーワード:b値、地震活動、地震モーメント、時間変化

マグニチュードと地震発生頻度の関係(グーテンベルグ・リヒター則)におけるb値は地殻中の差応力に逆比例する結果が得られている.一方Matsumoto et al.(2024)は高精度の発震機構解をもとにして応力臨界状態に近づくとb値が小さいこと(規模の大きい地震が発生する)を示した.すなわち,b値は差応力と臨界状態に関係していることが明らかになった.臨界状態とは,クーロン則をもとにして,ここでは応力状態をモール円で表した場合,それが破壊基準に接する点をさし,このむきの断層の状態を示す.モール円の内側の断層は流体圧が上昇するなどしない限り動くことはない.つまり,“臨界状態”の断層が大きい地震を起こしえるという結果を得た.
この状態を簡単に表すために,地震モーメントテンソルを足し合わせと個々の地震モーメントの和の比(地震モーメント比,Mst,/M0)を導入した.弾性ひずみは主応力と45度をなす最大せん断方向の面で滑りが発生するとき最も“効率的”にひずみエネルギーが解放され,比は1になる.既存の亀裂が非最適面でかつ流体圧が高い場合,モーメント比は徐々に低下する.これは,モール円で考えると円の頂点に近い場合高く,内側に入ると低下することに対応する.ここから,地震で解放されるモーメントと解放される非弾性ひずみの比は地殻の臨界状態を示していると考えられる.
本研究では,差応力と臨界状態に関係するb値とモーメント比の大地震前後における時間変化,さらに地震による非弾性変形レートを見ることで地震発生臨界度の評価を試みる.2016年熊本地震や2019年Ridgecrest地震について調べた.これらの地震は本震発生前に前震活動があり,約1日前にM6クラスの前震が発生した活動である.震源域では地震前にb値の小さい領域がみられたことは従来の研究で指摘されている.Mstk/M0を調べると,地震断層付近では,震源領域で地震前に低b値,高Mst,/M0をとり,臨界状態であることが示されている.さらに,最大前震後ー本震間と本震後のMstk/M0変化を見ると,前者ではMstk/M0が高いままで,後者は低下している.これは最大前震発生後も臨界状態が続いていることを示していて,興味深い.この比をモニターすることによって大きな地震後にさらに大きな地震が発生するか否かを考える一つの指標となる可能性がある.このようにb値だけでなくMstk/M0をモニターすることで地震活動を分析するうえで重要な情報が得られることが示唆される.