日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 変動帯ダイナミクス

2025年5月29日(木) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和((国研)産業技術総合研究所)、座長:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、飯尾 能久

09:15 〜 09:30

[SCG61-14] 長野県西部地震はなぜ起こったのか?(その2)

*飯尾 能久1 (1.京大防災研・NPO阿武山・東北大学)

キーワード:長野県西部地震、応力、メカニズム解、非地震性すべり

長野県西部地域では、1979年の御嶽山の噴火前後から地震活動が活発化し、1984年に長野県西部地震(Mj6.8)が発生した。気象庁による発震機構解が正断層成分を持っていること、震源断層直上における石の飛びの分布が正断層的なすべりを示唆していること(Iio & Yoshioka, 1992)、NEDOのボーリングコアから推定された応力の空間分布において(Yamamoto et al., 1990)、震源断層に近いほど最小圧縮応力が小さく、引っ張り的な応力場が見られることなどから、震源断層の北側の地震発生域直下に存在するS波の反射面(Inamori et al., 1992)上で非地震性すべりが発生し、震源断層に応力集中を起こしたという仮説が提唱された(飯尾,1994)。
 一方、1986年に行われた合同地震観測により、余震域では逆断層型のメカニズム解がほとんどであるのに、震源断層近傍に、横ずれ断層型のメカニズム解が集中していることが報告されていた(Yamazaki et al., 1992)。その解釈は難しかったが、Yukutake et al.(2010)は、1995年から余震域の東部を中心に設置された10kHzサンプリングの高精度地震観測網のデータを用いて、横ずれ断層型の余震のほとんどはoff-fault(断層面外で起こっている)の地震であること、および、震源断層の下部延長の非地震性すべりにより震源断層近傍に横ずれ型の応力集中が発生していることにより、これらの余震が説明可能であることを示した。Iio et al. (2017)もその解釈を支持している。
 最近、満点地震観測データを含めた空間分解能の高い応力逆解析により、500mグリッドのより詳細な応力場が推定された(Iio et al., 2025、査読中)。それにより、横ずれ断層型の地震が起こっている領域の幅は、断層の直交方向において1kmより狭いことが分かった。これを下部延長のすべりによる応力集中で説明する場合、浅いほど下部延長から離れるので、応力集中が大きな領域の幅が広がってしまい、断層の近傍のみの狭い範囲に横ずれ型の応力場を作ることは簡単でないことが分かった。
 このことは、これまで提唱されていた深部すべりによる発生過程のモデルの再検討が必要であることを示している。横ずれ型の応力場は、横ずれ型の多数のメカニズム解に引きずられた見かけ上のものではないこと、および、狭い領域に応力集中を起こす仕組みの提案が検討課題となる。
 現時点における見立ては以下のとおりである。震源断層近傍における高角の節面を持つメカニズム解には、正断層成分が見られるものがあること、および、主応力の1つが地表に直交する逆断層型の応力場ではこれらを説明しにくいことから、横ずれ型の応力場は確からしいと考えられる。狭い幅のみに横ずれ型の応力集中を起こすためには、すべりが発生する断層面上の広がりを狭くする必要があるが、長野県西部地震の地震時のすべり分布をバックスリップ的に解釈することが一つの可能性となる。