日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 変動帯ダイナミクス

2025年5月29日(木) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和((国研)産業技術総合研究所)、座長:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、飯尾 能久

09:30 〜 09:45

[SCG61-15] 超稠密GNSS観測網から得られる日本列島の地殻ひずみ速度分布

*大舘 未来1太田 雄策1大園 真子2高橋 浩晃2 (1.東北大学大学院理学研究科、2.北海道大学大学院理学研究院)


キーワード:GNSS、稠密観測網、ソフトバンク独自基準点、ひずみ速度、地殻変動

国土地理院のGEONETの推定座標値を用いた定常的な地殻ひずみ場は,これまでSagiya et al. (2000)やOkazaki et al. (2021)などが報告しており,内陸のひずみ集中帯の存在やその分布について議論されてきた.しかし,平均観測点間距離が20kmのGEONETのみでは,個々の断層のひずみ等,局所的な変形に対する感度は十分ではない.一方,ソフトバンク株式会社(以下,SB)が運用する独自基準点は全国に3,300点以上に達し,この観測点数はGEONETの観測点数の3倍近くにも達する.すなわち,地殻変動解析の観点において,空間分解能の圧倒的な向上が期待できる.そのため,本研究ではGEONETとSB点を併用したこれまでにない超稠密GNSS観測網データから,高空間分解能のひずみ速度分布を推定したので,その結果を報告する.
「SoftBank独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム(CSESS)」(https://csess.jp/)の枠組みで提供されているGNSS観測データは,現在,東北大学により独自の日座標値推定がルーチン的に実施され,CSESS内部での研究に活用されている.東北大学では,CSESSの枠組みで取得したSB独自基準点のRINEXデータとGEOENTに対してGipxyX Ver.2.2 の精密単独測位法 (PPP-AR) を適用することで,日座標値推定を実施している.RINEXデータ自体はマルチGNSSのデータを含むが,日座標値推定にはGPSのみを用いた.保守・地震オフセットを除去した後,2021年5月2日~5月11日の日座標中央値, 2022年4月24日~5月2日の日座標中央値の差から1年間の変位量を計算した.その後,周囲とは明らかに異なる変動をしている観測点を除去するために,GEONET,SBそれぞれで階層クラスタリングにより各地を約40観測点毎のクラスターに分け,クラスター内に属する観測点の東西・南北成分それぞれで四分位範囲を用いた外れ値検定を行い,それら観測点を除外した.
ひずみ速度場の推定にはStrain_2D software (Materna and Maurer, 2023)のうち, The Velocity Interpolation for Strain Rate (VISR) algorithm (Shen et al., 2015)を使用した.VISR algorithmは従来のShen et al. (1996)と比較して,超パラメータWtを決定する必要がある点は変わらない.一方,距離減衰定数Dは観測点密度に基づいて自動調整される.同手法では,重みづけの種類を選択できるが,そのうち (i) Voronoi×Gaussianと(ii) Azimuth×Gaussian を使用した.
初めに,GEONETのみ,SBのみそれぞれで,超パラメータを等しくWt=20とし,(i) Voronoi×Gaussianの重みを用いてひずみ速度分布の推定を行った.推定に使用されたDの分布はGEONETのみの場合は観測点数が少ない北海道や観測網の端で50㎞を超える.また,静岡などの比較的観測点密度が稠密な地域では20㎞程度となり,空間的にその値が一様ではない.一方,SBのみを用いた場合,全国的に約20㎞が選択され,同観測網の配置の空間的な均質性が明瞭である.この分布の違いは観測点数が密なほどDの値が小さくなる,つまり局所的な一様性を仮定する範囲が小さくなることを示し,VISR algorithmを用いる際はより観測点密度の高い状況が適切であることを定量的に確認できた.
上記を踏まえて,従来よりも稠密な観測網である(1) SBのみと(2) GEONET+SBの2つのデータセットを使用してひずみ速度場の推定を行った.この際,超パラメータWtはLカーブ法を用いて最適値を決定した.それぞれのデータセットで適切なWtを使用して推定されたひずみ速度場はGEONETのみを使用した先行研究よりも短波長の現象を反映した結果となった.発表ではより具体的に微小地震や火山,活断層などの他の情報との比較し,議論を行う予定である.

謝辞:本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは,「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて,ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました.