日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 変動帯ダイナミクス

2025年5月29日(木) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和((国研)産業技術総合研究所)、座長:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、飯尾 能久

09:45 〜 10:00

[SCG61-16] 弾性-粘弾性二層構造媒質中の水平断層および低角逆断層によって生じる非直観的な変位場について

*小出 鯉太朗1深畑 幸俊2 (1.京都大学理学研究科、2.京都大学防災研究所)


キーワード:変位場、粘弾性緩和、地形発達

断層運動によって生じる変位場には,しばしば直観的には理解しにくいものがある.無限弾性媒質の場合には,ダブルカップルの力を与えたとき変位場は断層面について対称となり,ダブルカップルの力を考えることで容易に理解できる.しかし,例えば半無限弾性媒質中の逆断層が作る地表面変位は,上盤側が大きく隆起する一方,下盤側の沈降量は隆起量に比べてはるかに小さいという非対称なパターンとなる.これは自由表面の存在が強く影響している.さらに,岡田 (2003) は逆断層運動が起こった場合でも,下盤側に沈降が生じないケースがあることを示した.媒質が粘弾性層を含む場合には,変形場の直観的理解がさらに難しくなる.
 本研究では,弾性-粘弾性水平二層構造媒質中の断層運動が作る変位場を計算し,その変形メカニズムを考察した.粘弾性媒質としては,Maxwell粘弾性体を仮定した.計算にはFukahata & Matsu’ura (2005, 2006) の半解析解を用いた.
 まず,表層 (弾性層) の浅部,中間部,深部それぞれの深さに逆断層を置いたときに生じる地表面の変位場を計算した.この結果は小出・深畑 (2023, 2024,連合大会)ですでに発表している.浅部に逆断層を置いた場合には,上盤側が弾性変形で隆起し,その後の粘弾性緩和によって沈降が生じた.一方,弾性層の深部に逆断層を置いた場合には,弾性変形で全体的に隆起し,粘弾性緩和によってさらに隆起が大きくなった.この結果は粘弾性緩和が重力平衡を回復するように起きるといる理解が必ずしも正しくないことを示している.一般に,粘弾性緩和が完了した後には,粘弾性層 (Maxwell粘弾性体) は流体として,弾性層は弾性板として振る舞うこととなる.弾性層の浅部か深部のどちらかにのみ断層が存在する場合,上下方向に短縮量の不均衡が生まれる.そのため,断層があることで短縮量が大きくなった部分が凹むように弾性板が曲がる変形をし,上述の変形場が生じたと考えられる.
 弾性層内の水平断層が作る変位場についても計算した結果を報告する.水平断層は弾性層の真ん中の深さに置いた.水平断層の運動には,上側が左に,下側が右に動く変位の食い違いを与えた.このときの地表面変位は,弾性変形により断層の左端直上付近で隆起し,右端直上付近で沈降するパターンとなった.この変位パターンは,ダブルカップルの力を考えることで無理なく理解できる.その後,粘弾性緩和が進行するにつれて隆起と沈降はさらに大きくなった.水平断層による内部変形場を見ると,粘弾性緩和の完了後には,断層の左側で全体に鉛直上向き,右側で鉛直下向きの変位場となった.粘弾性緩和完了後には弾性層が板のように振る舞うが,弾性媒質の厚みは上下方向には有限であるのに対し,水平方向には無限である.そのため,ダブルカップルの力のうち,鉛直方向の力が変形に大きく寄与し,断層の両端で反対称となる上下方向の変位が生じたと考えられる.