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[SCG61-18] 近畿三角帯の形成メカニズム
キーワード:近畿三角帯、日本海の形成、インバージョンテクニクス、上盤プレートの変形
はじめに 近畿三角帯は逆断層型活断層の高密度での分布で特徴づけられる。ここでは、深部地殻構造探査をはじめ、地震波トモグラフィや地質学的諸資料を基に、近畿三角帯の形成について考察する。
近畿三角帯の形成メカニズム 日本列島は日本海形成期に大きな変動を被った。伊豆弧との衝突に伴って西南日本の東部の内帯は垂直な軸をもつメガキンクが形成され、北方に屈曲したことが知られている(Kano et al., 1990)。中央構造線が弱面として機能し、ひずみを調整する働きをとっている。西南日本の内帯の屈曲を考える時、伊豆弧の衝突に起因する中央構造線の北方への屈曲は、近畿三角帯の東端付近であり、近畿三角帯の南部では西南日本ブロックの屈曲によって中央構造線に平行する方向での伸張変形が推定される(図1)。近畿三角帯では日本海拡大期に第一瀬戸内層群とよばれる浅海性の堆積物が当時の海水準変動に対応して堆積物している(入月ほか,2021)。非隆起的な環境は保持されたと推定される。吉田(1993)は第一瀬戸内層群の堆積期は正断層が卓越する条件にあったと推定している。近畿圏の地殻構造探査によって明らかになった基盤岩中の断層の角度は中角度である(Sato et al., 2009; 文部科学省,2007)。近畿三角帯中の南北走向の逆断層群が、水平圧縮応力場で形成されたと仮定すると、現在みられる南北方向の逆断層の基盤岩中の傾斜は非適合である。近畿三角帯において地殻の厚化が認められないこと、基盤岩中(先新第三系)の断層の傾斜が中角度であること、第一瀬戸内層群の堆積によって示される非隆起的な造構環境にあったことから、日本海拡大期末期の西南日本の伊豆-小笠原弧との衝突にともなう屈曲によって、近畿三角帯南部の南北性の正断層群が形成された推定される。
なぜ近畿三角帯で逆断層型の活断層が卓越するのか? 近畿三角帯における東西水平圧縮は、基本的にはフィリピン海プレートの西北西進によって形成される東西方向の圧縮成分の他、太平洋プレートの沈み込みに伴う東西圧縮応力などが推定されている。南北方向の逆断層運動が活発化するのは狭義の六甲変動の約70万年前からであり(藤田,1968)、紀ノ川沿いの中央構造線の右横ずれ運動の開始時期(Sato et al., 2015)とも一致する。従って、東西方向の水平圧縮成分の増大はフィリピン海プレートの運動方向の変化に起因する可能性が高い。しかし、こうしたモデルでも中部日本や中国地方で横ずれ活断層が卓越するのに、近畿三角帯で南北方向の逆断層が卓越するという事象の説明には不充分である。この説明には二つの要因が考えられる。一つは、近畿三角帯の南部に既に南北方向の正断層が形成され、中部地方にはメガキンクによる先新第三系の変形のため横ずれ型の断層が形成されていて、それらの再活動によって活断層の動きが規制されているという考えである。応力状態には大きな違いはなくとも、既存断層の形状によって活動する断層形状が変化するということになる。もう一つの要因としては、伊勢湾から若狭にいたる軸で北にプランジした背斜状を示すフィリピン海プレート(PHS)の形状の影響である。近江測線の構造探査では、養老山地の直下ではモホ面よりも浅い位置にPHS上面からの反射面が存在することが確認されている。若いPHSは西南日本の下で変形構造を示し、伊豆衝突帯や伊勢湾下などの西側では強い東西方向の短縮変形域を作り出している。こうしたスラブの形状を伴うPHSの運動が、近畿三角帯の変形に影響を及ぼしていると考えられる(三好・石橋,2008)。但し、一般の大陸プレートでは柔らかい下部地殻をもつジャムサンドイッチ状のレオロジー構造が推定されており、その妥当性を含め上盤プレートの変形には一層の検討が必要である。
文献: 藤田和夫,(1968):第四紀研究,7, 248-260. 入月俊明ほか(2021): 地質学雑誌, 127, 415–429. Kano, K. et al. (1990): Tectonophys., 176, 333-3. Matsubara, M. et al. (2017): Tectonophys., 710-711, 97-107. 三好崇之・石橋克彦(2008): 第四紀研究,47,223-232. 文部科学省(2007):「大都市圏地殻構造調査研究」(平成18年度)成果報告書, 87-214. Sato, H. et al. (2015): Tectonophys., 644-645, 58-67. Sato, H. et al. (2009): Tectonophys., 472, 86-94. 吉田史郎(1992):地質調査所月報,43, 43-67.
近畿三角帯の形成メカニズム 日本列島は日本海形成期に大きな変動を被った。伊豆弧との衝突に伴って西南日本の東部の内帯は垂直な軸をもつメガキンクが形成され、北方に屈曲したことが知られている(Kano et al., 1990)。中央構造線が弱面として機能し、ひずみを調整する働きをとっている。西南日本の内帯の屈曲を考える時、伊豆弧の衝突に起因する中央構造線の北方への屈曲は、近畿三角帯の東端付近であり、近畿三角帯の南部では西南日本ブロックの屈曲によって中央構造線に平行する方向での伸張変形が推定される(図1)。近畿三角帯では日本海拡大期に第一瀬戸内層群とよばれる浅海性の堆積物が当時の海水準変動に対応して堆積物している(入月ほか,2021)。非隆起的な環境は保持されたと推定される。吉田(1993)は第一瀬戸内層群の堆積期は正断層が卓越する条件にあったと推定している。近畿圏の地殻構造探査によって明らかになった基盤岩中の断層の角度は中角度である(Sato et al., 2009; 文部科学省,2007)。近畿三角帯中の南北走向の逆断層群が、水平圧縮応力場で形成されたと仮定すると、現在みられる南北方向の逆断層の基盤岩中の傾斜は非適合である。近畿三角帯において地殻の厚化が認められないこと、基盤岩中(先新第三系)の断層の傾斜が中角度であること、第一瀬戸内層群の堆積によって示される非隆起的な造構環境にあったことから、日本海拡大期末期の西南日本の伊豆-小笠原弧との衝突にともなう屈曲によって、近畿三角帯南部の南北性の正断層群が形成された推定される。
なぜ近畿三角帯で逆断層型の活断層が卓越するのか? 近畿三角帯における東西水平圧縮は、基本的にはフィリピン海プレートの西北西進によって形成される東西方向の圧縮成分の他、太平洋プレートの沈み込みに伴う東西圧縮応力などが推定されている。南北方向の逆断層運動が活発化するのは狭義の六甲変動の約70万年前からであり(藤田,1968)、紀ノ川沿いの中央構造線の右横ずれ運動の開始時期(Sato et al., 2015)とも一致する。従って、東西方向の水平圧縮成分の増大はフィリピン海プレートの運動方向の変化に起因する可能性が高い。しかし、こうしたモデルでも中部日本や中国地方で横ずれ活断層が卓越するのに、近畿三角帯で南北方向の逆断層が卓越するという事象の説明には不充分である。この説明には二つの要因が考えられる。一つは、近畿三角帯の南部に既に南北方向の正断層が形成され、中部地方にはメガキンクによる先新第三系の変形のため横ずれ型の断層が形成されていて、それらの再活動によって活断層の動きが規制されているという考えである。応力状態には大きな違いはなくとも、既存断層の形状によって活動する断層形状が変化するということになる。もう一つの要因としては、伊勢湾から若狭にいたる軸で北にプランジした背斜状を示すフィリピン海プレート(PHS)の形状の影響である。近江測線の構造探査では、養老山地の直下ではモホ面よりも浅い位置にPHS上面からの反射面が存在することが確認されている。若いPHSは西南日本の下で変形構造を示し、伊豆衝突帯や伊勢湾下などの西側では強い東西方向の短縮変形域を作り出している。こうしたスラブの形状を伴うPHSの運動が、近畿三角帯の変形に影響を及ぼしていると考えられる(三好・石橋,2008)。但し、一般の大陸プレートでは柔らかい下部地殻をもつジャムサンドイッチ状のレオロジー構造が推定されており、その妥当性を含め上盤プレートの変形には一層の検討が必要である。
文献: 藤田和夫,(1968):第四紀研究,7, 248-260. 入月俊明ほか(2021): 地質学雑誌, 127, 415–429. Kano, K. et al. (1990): Tectonophys., 176, 333-3. Matsubara, M. et al. (2017): Tectonophys., 710-711, 97-107. 三好崇之・石橋克彦(2008): 第四紀研究,47,223-232. 文部科学省(2007):「大都市圏地殻構造調査研究」(平成18年度)成果報告書, 87-214. Sato, H. et al. (2015): Tectonophys., 644-645, 58-67. Sato, H. et al. (2009): Tectonophys., 472, 86-94. 吉田史郎(1992):地質調査所月報,43, 43-67.