日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 変動帯ダイナミクス

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和((国研)産業技術総合研究所)

17:15 〜 19:15

[SCG61-P02] 中部東北日本弧地殻・上部マントル変形構造 - 2019年陸域制御震源探査結果の総合的解釈-

*岩崎 貴哉1佐藤 比呂志2蔵下 英司3、石毛 宏和4、清水 英彦5石山 達也3飯高 隆6篠原 雅尚3、川崎 慎治4阿部 進5平田 直3 (1.公益財団法人 地震予知総合研究振興会、2.静岡大学防災総合センター、3.東京大学地震研究所、4.(株)地球科学総合研究所、5.(株) 石油資源開発 技術本部、6.東京大学・大学院情報学環・総合防災情報研究センター)

キーワード:島弧地殻・上部マントル構造、東北日本弧、制御震源地震探査、地殻変形、地震活動、日本海拡大

緒言: 2021年以来,我々は日本海大和堆から東北日本弧中部を経て日本海溝に至る測線で2019年に実施された海陸統合探査の陸域部データに対して,その詳細な解析を行なってきた.本講演では,これまでに提出してきた速度構造モデル(例えばIwasaki et al., 2024),反射法断面(佐藤・他 2021a,b; 蔵下他 2022)に更に地質・地球物理学的情報を加え,東北日本弧下地殻・マントル最上部構造に対してその発達・変形過程を含めた総合的解釈を行う(Fig.1).陸域探査は,庄内平野から奥羽脊梁山地,北上河谷帯を経て北上山地に至る全長155 kmの測線で行われた.地質学的に,測線西部は日本海拡大時に噴出した玄武岩,中部は島弧火成活動によるカルデラ群で特徴づけられ,測線東部は南部北上帯に属する.
上部地殻:我々の速度構造モデルによれば,地殻最浅部は,著しい変形を受けた数層の堆積岩・火山砕屑岩で構成される.その形状は,背弧拡大期に生成された断層群やその後の島弧火成活動に伴うカルデラ群とよい対応を示す.測線西端部では層境界の速度コントラストが極めて大きく(0.5-1 km/s),より東側の部分と異なった形成過程を経た可能性がある.基盤上部は二層から成り,全体の厚さは3~5 kmである.上層の速度は5.65~5.8から5.8~5.9 kmで,測線西部から中部に向かって徐々に低下する.一方,下層の速度は,6.0-6.2 km/sである.反射法断面によれば,これら二層は測線西部・中部下で局所的に反射的であるに対し,北上低地帯・南部北上帯下では透明である.
 上部地殻の構造での新たな知見は,南部北上帯の高速度(5.8~5.9-6.3 km)の基盤上部がすぐ西側の北上河谷帯下に入り込み,数kmの厚みを持った緩やかな西傾斜構造境界を形成していることである.北上山地からその西側沈降域の間には、日本海拡大期に数条の西傾斜の正断層が形成されている.この断層群は西側の断層ほど正断層ブロック(ドミノブロック)の回転により低角となり,最も西側に位置する北上河谷帯付近でその変位が最大となると考えられる.上記の緩傾斜構造境界もこのような変形構造に対応していると思われる.また,北上河谷帯下は,東北地方北部の南北方向の構造と南部の北東-南西方向の活断層の卓越方向の屈曲点に相当し、我々の結果はその三次元的な構造の影響を受けている可能性もある.
この高速度ブロック内では地震活動が活発であり,2003年宮城県北部地震(Mj=6.4)もこの領域内で発生した.また,構造境界周辺では深さ15kmまでかなり顕著な地震活動が認められる.一方,その西側の北上河谷帯側の比較的低速度(Vp=5.8-6.1 km/s)上部地殻内における地震活動は極めて低調である.従って,西縁境界部を含む南部北上帯の高速度ブロックは,単に構造の面だけでなく,その力学的挙動も北上河谷帯下上部地殻と異なっている可能性が高い.
 測線中部のカルデラ域では浅部地震活動は深さ7-9 km以浅に限られ,火成活動によって脆性-延性境界が浅い位置に形成されているのであろう.更に,屈折・広角反射法解析によって局所的反射体が5 kmの深さに検出されており,これも火成活動との関連性が考えられる.測線西部の地震活動は,20 km程度の深さにまで及んでいる.この地域は日本海拡大時の中絶リフト帯縁辺に対応し,融点の高い玄武岩の貫入によって深部脆性-延性境界が形成されたと考えられる.先の述べた高速度の基盤上部も,この玄武岩貫入による可能性が高い.
中部・下部地殻:中部地殻は厚さが6~7 km,速度が6.3-6.5 km/sである.測線中央部における下部地殻は反射的で三層から成り,その速度は6.6-7.1 km/sである.2 kmの厚さを持つ最下層は速度勾配が大きく(1.5-2 s-1).マントルから下部地殻への遷移層であると考えられる.
最上部マントル:Moho面の深さは30.5-32 kmでPn速度は約7.8 km/sである.屈折・広角反射法解析によれば,マントル最上部の深さ38及び46 kmに反射面が存在し,反射法断面でも対応する部分が反射的である.低周波地震は反射的下部地殻及びマントル最上部の深さ17-40 kmで発生している.上述のマントル反射面は低周波地震発生域の下に対応し,マントルからの流体の上方移動が低周波地震発生を制御している可能性がある.

参考文献 : 岩崎・他, 2024, 2024年地震学会秋季大会, S06-02; 蔵下他, 2022. 日本地球惑星科学連合2022年大会,SCG50-03, 佐藤・他,2020a. JpGU-AGU 2020年合同大会,MIS03-P05, 佐藤・他,2020b. 2020年石油技術協会春季大会,016.