日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 変動帯ダイナミクス

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和((国研)産業技術総合研究所)

17:15 〜 19:15

[SCG61-P04] IODP第403次研究航海での掘削孔内の比抵抗画像検層によるフラム海峡東部堆積層内の応力場スタディ

*酒井 雄飛1林 為人1、Andreia Plaza-Feverola2、Renata G. Lucchi3、Kristen St.John4、Thomas Ronge5、国際深海科学掘削計画第403次研究航海 乗船研究者 (1.京都大学、2.トロムソ大学、3.イタリア国立海洋・応用地球物理学研究所、4.ジェームズ・マディソン大学、5.テキサスA&M大学 国際深海科学掘削計画)


キーワード:原位置応力、中央海嶺、氷床変動、メタン噴出

フラム海峡は北極海と外洋を繋ぐ唯一の深い海峡で、グリーンランドとスヴァールバル諸島の間に位置する。同海峡東部の地殻は、連続する複数の中央海嶺やトランスフォーム断層というテクニックな要因、さらには、中央海嶺の東側の海域においてはスヴァールバル・バレンツ海氷床の発達・融解に起因する氷河性地殻均衡など、過去~現在まで複数の応力要因にさらされており、複雑な応力場分布をもつと考えられている。また同海域では、大陸斜面に沿った暖流由来の広大な堆積層が炭化水素ガスやガスハイドレートを胚胎しているが、堆積層内~海底まで続く断層やチムニーを伝ったガスの海中への噴出が観測されている。よって、上記の複雑な応力要因の理解に加え、堆積層内の流体の流動や断層・チムニーの発達のメカニズムの理解のため、同堆積層の応力場分布を解明することが期待される。
現在観測されている堆積層から海中へのガス噴出の程度には空間的なばらつきがあるため、複雑な応力場分布との関連が示唆される。広域的な地殻内応力場分布を推定したモデリング研究が先行して存在するが、すべての応力要因を考慮できていないことや堆積層内への外挿が難しいことで不確実性を伴っているため、実測に基づいて不確実性を低減し、堆積層内の応力場分布のより詳細かつ確度の高い制約を行うことが期待される。しかしながら、これまで同海域の応力場分布について、大深度掘削による原位置での応力の実測データは存在していない。
そこで本研究では、国際深海科学掘削計画 (International Ocean Discovery Program, IODP) 第403次研究航海の2つの掘削サイトにおいて孔壁の比抵抗画像を取得・観察し、孔壁破壊のパターンから水平面内の主応力方向を決定することによって、同海域ではじめてとなる原位置の応力測定データを得た。アクティブな噴出が多く存在するサイトに位置するU1618B孔では、認定された孔壁破壊の数が少なく、北西-南東方向に最大水平主応力軸を持つ正断層応力場が示唆された。Bellsundフィヨルド沖合の大陸斜面上のサイトに位置するU1623D孔では多くの孔壁破壊を認定したが、深度によって孔壁破壊の発生した方角が異なる結果となり、深度によって水平面内の主応力方向が変化しているか、水平面内の差応力が小さい応力場をもつことが示唆された。これにより、先行するモデリング研究との関連からフラム海峡東部堆積層内の応力場分布の制約を行い、流体流動や噴出メカニズムの解明につながることが期待される。