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[SCG61-P05] 東北地方南部地殻比抵抗構造の再解析と比抵抗と地震波速度を用いた地殻流体量の推定
キーワード:電気比抵抗、地殻流体、群発地震、地震波速度構造、断層バルブモデル
我々はこれまで東北地方南部で観測された広帯域MTデータを統合し、広域地殻比抵抗構造解析を進めてきた(本山 他, 2019 JpGU; Motoyama et al., 2020 JpGU; Wakao et al., 2023 JpGU; 若尾 他, 2024 JpGU)。しかし統合したデータセットは、会津・米沢・吾妻地域の観測が空白となっている。会津・米沢地域は、東北地方太平洋沖地震後に群発地震が活発化した地域であり、この群発地震は、東北地方太平洋沖地震後の浅部への流体の移動によって引き起こされたと考えられている(Okada et al., 2015)。また吾妻山直下の上部地殻には、低比抵抗体(Ichiki et al., 2021)および低速度体(Okada et al., 2015)が推定されており、活発な火山活動と流体との関連が示唆されている。しかしMotoyama et al. による比抵抗構造では、群発地震域下の下部地殻には低比抵抗体が存在するものの、群発地震域は1000Ωm程度の高比抵抗を示しており、流体の存在を示唆する結果とはなっていない。一方吾妻山地下の上部地殻には低比抵抗体は全く推定されておらず、火山活動や他の地球物理学的構造と結果が調和的でない。本研究ではこの広帯域MT観測の空白域で新たに吾妻山の探査を目的として観測された広帯域MTデータ18観測点(Ichiki et al., 2021)を加え、Usui (2015)による4面体要素有限要素法を用いた3次元インバージョン解析を行い、広域地殻比抵抗構造を再解析した。比抵抗構造を解釈する際に低比抵抗体を含水率が高い領域として解釈する場合が殆どであるが、低比抵抗体が必ずしも流体に起因するものであるとは限らない。そこで本研究では、推定した比抵抗構造と地震波速度構造から地殻流体量の定量化を行うジョイントインバージョンを開発した。ジョイントインバージョンは深さ20 km程度までの地殻深部を対象に比抵抗と地震波速度から流体量と塩分濃度を同時推定するもので、主に群発地震震源域周辺の流体分布を評価することを目的としている。
新しく得られた比抵抗構造では、会津・米沢地域の群発地震は高比抵抗領域と低比抵抗領域の境界に位置していることがより明瞭になった。群発地震より深部の20-45 kmには低比抵抗体が存在している。この低比抵抗体の直上の深さ5-20 kmには地震波反射面が確認されており(鈴木, 2018 東北大学修士論文)、深部のマグマ溜まりから脱水した流体が浅部へと移動し、高比抵抗体と低比抵抗体の境界で群発地震が発生したことが示唆される。ただし、下部地殻から上部地殻に至る流体経路を示唆するような連続した低比抵抗体のパターンは得られなかった。この群発地震域において地殻流体量ジョイントインバージョンを適用した結果、深さ1 kmから11 km付近までは空隙率の変化は少なく、2.5 vol.% 程度の値を取っていたものの、12 km付近を境に空隙率は大きく上昇し、19 km地点では3.8 vol.%となった。空隙率が上昇した深度は群発地震域の下限やS波反射面が集中する深度と対応しており、流体貯留層の水頭やFault-valveモデルにおける過剰流体圧をもつ流体だまりの先端、不透水性のシール領域と対応している可能性が示唆された。
吾妻山直下の上部地殻には柱状の低比抵抗体が推定され、下部地殻に向けて山形-福島県境に沿うように西側へと広がっていることがわかった。この下部地殻低比抵抗体をメルト領域であると仮定した場合のメルト体積分率の推定より、このメルト領域は8 wt %という非常に高い含水率をもつメルトが1.8 – 6.8 vol.%の体積分率で存在していると推定され、この周辺で起きている地震活動は、水で飽和した状態のメルトが固化に伴い大量に水を放出することで引き起こされたと解釈した。
新しく得られた比抵抗構造では、会津・米沢地域の群発地震は高比抵抗領域と低比抵抗領域の境界に位置していることがより明瞭になった。群発地震より深部の20-45 kmには低比抵抗体が存在している。この低比抵抗体の直上の深さ5-20 kmには地震波反射面が確認されており(鈴木, 2018 東北大学修士論文)、深部のマグマ溜まりから脱水した流体が浅部へと移動し、高比抵抗体と低比抵抗体の境界で群発地震が発生したことが示唆される。ただし、下部地殻から上部地殻に至る流体経路を示唆するような連続した低比抵抗体のパターンは得られなかった。この群発地震域において地殻流体量ジョイントインバージョンを適用した結果、深さ1 kmから11 km付近までは空隙率の変化は少なく、2.5 vol.% 程度の値を取っていたものの、12 km付近を境に空隙率は大きく上昇し、19 km地点では3.8 vol.%となった。空隙率が上昇した深度は群発地震域の下限やS波反射面が集中する深度と対応しており、流体貯留層の水頭やFault-valveモデルにおける過剰流体圧をもつ流体だまりの先端、不透水性のシール領域と対応している可能性が示唆された。
吾妻山直下の上部地殻には柱状の低比抵抗体が推定され、下部地殻に向けて山形-福島県境に沿うように西側へと広がっていることがわかった。この下部地殻低比抵抗体をメルト領域であると仮定した場合のメルト体積分率の推定より、このメルト領域は8 wt %という非常に高い含水率をもつメルトが1.8 – 6.8 vol.%の体積分率で存在していると推定され、この周辺で起きている地震活動は、水で飽和した状態のメルトが固化に伴い大量に水を放出することで引き起こされたと解釈した。