日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 変動帯ダイナミクス

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和((国研)産業技術総合研究所)

17:15 〜 19:15

[SCG61-P13] 日本列島の東西圧縮応力場に対するフィリピン海プレートの西進運動成分の効果

武田 陸1、*橋間 昭徳1 (1.東京学芸大学)

キーワード:応力蓄積、フィリピン海プレート、東北日本、プレート沈み込み、粘弾性

1. はじめに
現在、東北日本は東西圧縮的なテクトニクス下にある。これを説明するために、高橋 (2006) は日本列島域周辺のプレートの運動と東北日本の変形の関係を考察した。彼は、フィリピン海プレートが西進すると東北日本もそれに伴い移動し、その結果として日本列島の東西圧縮が発生すると結論づけた。しかし、高橋 (2006) の考察は定性的であり、フィリピン海プレートの西進成分が東北日本の圧縮を引き起こすのに十分な力を起こすのかは検討されていない。本研究の目的はこのモデルを定量的に検証することである。
2. 方法
本研究では、房総沖三重会合点に関わる太平洋、ユーラシア、フィリピン界の三枚のプレートの相互作用による変形計算を行った。プレート間相互作用は、プレート境界面上のすべりを与えることによって表現することができる。プレート境界面形状は高橋 (2006)のモデルの本質を失わないように日本-伊豆小笠原海溝を南北方向の直線、南海-相模トラフは東西方向の垂直な横ずれ断層と単純化した。太平洋-ユーラシアプレート間の相対速度は10 cm/yr、太平洋-フィリピン海プレート間の相対速度は7 cm/yr、フィリピン海-ユーラシアプレート間の相対速度は3 cm/yrとした。これらの相対運動を与えれば高橋 (2006) の想定した状況を設定することができる。実際の計算は、太平洋プレートのユーラシア-フィリピン海プレートへの7 cm/yrでの一様な沈み込み、太平洋プレートのユーラシアのみの3 cm/yrでの沈み込み、フィリピン海-ユーラシアの3 cm/yrの横ずれ運動による変形速度場をそれぞれ計算し、それらの結果を足し合わせた。
3. 結果
プレート内部の速度場を計算した結果、大局的にはプレート剛体運動が再現されていることがわかった。しかし、三重会合点付近ではユーラシアプレート上の遠方の固定点に対して数mm/yr程度のわずかな速度が見られた。これは、ユーラシアプレートでは各プレート相対運動成分により、変形が起きていることを意味する。変形の様子を定量的に把握するために、ひずみ速度の東西成分を計算した。その結果、ユーラシア側の三重会合点付近で短縮ひずみが起きていることがわかる。ただし、そのひずみ量は10^-9 /yrのオーダーだった。
4. 議論
本研究の3枚のプレート間相互作用の計算により、ユーラシアプレートに短縮ひずみが形成されることが確認できた。しかし、短縮ひずみが起こる範囲は、三重会合点からせいぜい300 kmの距離以内に過ぎない。また、計算で得た東西圧縮ひずみ速度の値(10^-9 /yr)は実際の東北日本における地質学的な圧縮ひずみ(10^-8 /yr)の1/10程度であった。以上のことから、高橋 (2006) が主張するようにフィリピン海プレートの西進が現在の東北日本における東西圧縮場の主要因であると結論づけることはできなかった。東北日本の圧縮の原因として、伊豆半島の衝突や日本海溝における部分衝突(Hashimoto and Matsu’ura, 2006)などが挙げられるが、その解明は今後の課題である。