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[SCG62-09] SiO2メルト/ガラスの分子動力学シミュレーション:引張下における分子スケール構造

爆発的噴火の発生要因であるマグマ破砕は,火道内を上昇するマグマ中の珪酸塩メルトが高速変形し,脆性的に破壊する現象である。一方で,歪み速度の上昇に伴い珪酸塩メルトの粘性率は低下(シェアシニング)することが知られている。つまり,高速変形下の珪酸塩メルトは固体的な性質と液体的な性質をあわせ持つといえる。Okumura et al. (2023) は,珪酸塩メルトから得られるX線回折パターンのFirst Sharp Diffraction Peak (FSDP) の位置が,高速変形下において変化することを実験的に示した。FSDPは最近接原子間距離以上の長さスケールを持つ中距離構造の存在を示すピークであり,珪酸塩メルトの構造中ではSiO4四面体が連結して形成するリングが中距離構造に相当する。そのため上記の実験結果から,リングの変形が脆性的な破壊およびシェアシニングの起源であることが提案された。しかしながら,X線回折実験のみでは詳細な分子構造を直接観察することはできず,高速変形下の珪酸塩メルトにおいてどのような分子構造変化が起こっているのかを特定することは困難である。そこで本研究では,分子動力学 (MD) シミュレーションを用いて,引張変形下におけるSiO2メルトのFSDPおよび分子構造の変化を調べることを目的とした。計算にはLAMMPSを用いて,引張変形と保持を繰り返すシミュレーションを行った。ポテンシャルはVashishta et al. (1990) で提案されたものを使用した。また構造因子とリングサイズ分布はRINGSを用いて調べた。計算の結果,2000 K以下では歪みの増加に伴い5員環および6員環が減少し,より大きなリングが増加することが示された。一方,2500 K以上ではリングサイズ分布の系統的な変化は見られなかった。また2000 K以下の引張変形下においてFSDPが低波数側に移動することが示された。2500 K以上では変形に伴うFSDPの系統的な変化は見られなかった。本研究の結果は,変形が緩和よりも早い条件においては珪酸塩メルト中のリングサイズ分布が変化し,そのリングサイズ分布の変化がFSDPのピーク位置の移動の原因であることを示している。