16:30 〜 17:00
[SCG62-15] 一ノ目潟産マントル捕獲岩から読み解くリソスフェア-アセノスフェア境界域のダイナミクス
★招待講演
キーワード:マントル捕獲岩、リソスフェアアセノスフェア境界、レオロジー、歪み速度、粘性構造
リソスフェア-アセノスフェア境界(LAB)はプレートテクトニクスにおける「プレートの底」であり、上部マントルに存在する粘性コントラストである。LABのダイナミクスを理解するには物質科学的手法により抽出したレオロジー情報が有効である。捕獲岩はマグマにより取り込まれたマントル物質の断片であり、レオロジーとその履歴に関する情報を抽出することが可能だが、岩石学的な解析が必要不可欠となる。本研究は秋田県男鹿半島一ノ目潟に産するスピネルカンラン岩捕獲岩(8個)を用いて、岩石学的にLABの粘性コントラストを復元することを試みた。そのために捕獲岩から①温度、②圧力(深さ)、③鉱物組成、④化学組成(含水量)、⑤変形微細構造、⑥変形履歴を抽出する必要があった。岩石学的マントル構造を復元し(Sato & Ozawa, 2019AM, 2023JGR)、含水量を推定し(Sato et al., 2023EPSL)、変形微細構造から変形機構と履歴を明らかにして、歪み速度と粘性の構造に焼き直すことでLABの構造とダイナミクスを復元した。
捕獲岩の温度圧力推定のために、造岩鉱物の化学組成累帯構造から熱履歴を解読し、捕獲岩のマグマ輸送直前のマントルに存在した時の平衡化学組成を追究することで、スピネルカンラン岩の圧力推定を実現した。Ca-in-OPX温度圧力計とTwo-pyroxene温度圧力計を用いて0.7-1.6 GPa、28-54 km、832-1084 °Cという熱構造を復元した。マントルの岩石学的構造を復元した結果、低温・粗粒(カンラン石直径0.415-0.814 mm)・等粒状組織・含水鉱物(角閃石と流体包有物)を呈するマントル浅部(28-32 km)と、高温・細粒(0.147-0.293 mm)・ポーフィロクラスチック組織・メルト(粒間含水ガラス)を呈するマントル深部(41-55 km)という、深さ~40 kmを境界とした層構造を示すことが分かった。
FTIRとSIMSを用いて造岩鉱物の含水量を分析した。カンラン石には18-33 ppm、直方輝石には205-468 ppm、単斜輝石には446-787 ppmの水が含まれ、分配係数(DOPX/OL=14±3、DCPX/OPX=2.1±0.3)は実験値と一致した。推定された含水量は岩石学的層構造と相関せず、深さ変化は認められなかった。水の拡散プロファイルを線・面分析で調べたところ、鉱物の縁の~200μmにわたって脱水する過程が認められた。脱水の拡散時間は20秒から48分と推定され、捕獲岩のマグマ輸送時間(1-68日)に比べても極端に短い。これは、マントルにおける水の情報が鉱物のコア部に保存されていることを示している。
カンラン石の格子定向配列(LPO)は深さと相関し、マントル浅部(28-41 km)は主にA-typeを示すのに対して、マントル深部(45-55 km)は主にD-typeとAG-typeを示す。粒子内部の歪み具合をGrain average misorientation(GAM)として測定したところ、浅部(28-32 km)由来の等粒状組織を呈する捕獲岩は粒子サイズに対してGAMが一定であり、岩石全体が一様に歪んでいるのに対して、深部(41-51 km)由来の捕獲岩はGAMが粒子サイズと正相関を示し、小さい粒子ほど歪んでいない。これは浅部では変形機構が転位クリープであるのに対し、深部では動的再結晶であることを示唆している。さらに、深部(45-55 km)由来の捕獲岩には、輝石中の離溶スピネルラメラが粒界移動によって隣接する鉱物に取り込まれた変形組織(spinel bleb)が見られる。これは変形史と熱史を結びつける組織であり、捕獲岩噴出直前のマントルにおける変形と加熱(~12 kyrs)によって変形微細構造が形成されたことが解読できる。
以上より捕獲岩が噴出する直前のマントル構造と変形機構が明らかになったので、実験的に求められた含水カンラン石多結晶体の流動則を用いて一ノ目潟下の歪み速度と粘性の構造を復元した。マントル浅部(28-32 km)の歪み速度は10-16-10-12 s-1であるのに対し、深部(41-55 km)は10-12-10-10 s-1と推定された。粘性は浅部で1019-1023 Pa・s、深部では1017-1019 Pa・sとなった。深部領域の粘性は地球物理観測によって推定されたアセノスフェアの粘性と一致する。よって一ノ目潟下のマントル構造は、深さ~40 kmにLABがあり、深部がアセノスフェア上部、浅部がリソスフェリックマントルだと解釈される。このマントル構造とspinel blebから解読した変形史と対応させると、一ノ目潟噴火前の動的なリソスフェア薄化によって形成されたことが考えられる。
捕獲岩の温度圧力推定のために、造岩鉱物の化学組成累帯構造から熱履歴を解読し、捕獲岩のマグマ輸送直前のマントルに存在した時の平衡化学組成を追究することで、スピネルカンラン岩の圧力推定を実現した。Ca-in-OPX温度圧力計とTwo-pyroxene温度圧力計を用いて0.7-1.6 GPa、28-54 km、832-1084 °Cという熱構造を復元した。マントルの岩石学的構造を復元した結果、低温・粗粒(カンラン石直径0.415-0.814 mm)・等粒状組織・含水鉱物(角閃石と流体包有物)を呈するマントル浅部(28-32 km)と、高温・細粒(0.147-0.293 mm)・ポーフィロクラスチック組織・メルト(粒間含水ガラス)を呈するマントル深部(41-55 km)という、深さ~40 kmを境界とした層構造を示すことが分かった。
FTIRとSIMSを用いて造岩鉱物の含水量を分析した。カンラン石には18-33 ppm、直方輝石には205-468 ppm、単斜輝石には446-787 ppmの水が含まれ、分配係数(DOPX/OL=14±3、DCPX/OPX=2.1±0.3)は実験値と一致した。推定された含水量は岩石学的層構造と相関せず、深さ変化は認められなかった。水の拡散プロファイルを線・面分析で調べたところ、鉱物の縁の~200μmにわたって脱水する過程が認められた。脱水の拡散時間は20秒から48分と推定され、捕獲岩のマグマ輸送時間(1-68日)に比べても極端に短い。これは、マントルにおける水の情報が鉱物のコア部に保存されていることを示している。
カンラン石の格子定向配列(LPO)は深さと相関し、マントル浅部(28-41 km)は主にA-typeを示すのに対して、マントル深部(45-55 km)は主にD-typeとAG-typeを示す。粒子内部の歪み具合をGrain average misorientation(GAM)として測定したところ、浅部(28-32 km)由来の等粒状組織を呈する捕獲岩は粒子サイズに対してGAMが一定であり、岩石全体が一様に歪んでいるのに対して、深部(41-51 km)由来の捕獲岩はGAMが粒子サイズと正相関を示し、小さい粒子ほど歪んでいない。これは浅部では変形機構が転位クリープであるのに対し、深部では動的再結晶であることを示唆している。さらに、深部(45-55 km)由来の捕獲岩には、輝石中の離溶スピネルラメラが粒界移動によって隣接する鉱物に取り込まれた変形組織(spinel bleb)が見られる。これは変形史と熱史を結びつける組織であり、捕獲岩噴出直前のマントルにおける変形と加熱(~12 kyrs)によって変形微細構造が形成されたことが解読できる。
以上より捕獲岩が噴出する直前のマントル構造と変形機構が明らかになったので、実験的に求められた含水カンラン石多結晶体の流動則を用いて一ノ目潟下の歪み速度と粘性の構造を復元した。マントル浅部(28-32 km)の歪み速度は10-16-10-12 s-1であるのに対し、深部(41-55 km)は10-12-10-10 s-1と推定された。粘性は浅部で1019-1023 Pa・s、深部では1017-1019 Pa・sとなった。深部領域の粘性は地球物理観測によって推定されたアセノスフェアの粘性と一致する。よって一ノ目潟下のマントル構造は、深さ~40 kmにLABがあり、深部がアセノスフェア上部、浅部がリソスフェリックマントルだと解釈される。このマントル構造とspinel blebから解読した変形史と対応させると、一ノ目潟噴火前の動的なリソスフェア薄化によって形成されたことが考えられる。