日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、桂木 洋光(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、澤 燦道(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、村松 弾(東京大学地震研究所)

17:15 〜 19:15

[SCG62-P11] ビッカース変形試験機を用いたエンスタタイトの変形誘起相転移

*岩合 麻耶1田阪 美樹1 (1.静岡大学)


キーワード:エンスタタイト、変形誘起相転移、ビッカース変形試験

岩石に局所的なダメージを与えると、ダメージを起点にして変形が進行し歪みの局在化が起きるというダメージ理論が地球物理学の分野で提案されている(Bercovici and Ricard, 2014Nature)。ダメージを加えた時に結晶スケールではどのような変化が起きるのか素過程を明らかにするために、本研究では輝石の一種であるエンスタタイト(Mg2Si2O6)多結晶体を用いてマイクロビッカース変形試験を行い、変形誘起相転移の荷重と粒径依存性を調べた。
エンスタタイトは高温で安定なプロトエンスタタイト(PEn、T = 985-1557℃)から低温で安定なクライノエンスタタイト(CEn T <500℃)に相転移する際に体積が-6%変化し、相転移に伴う体積変化に起因して局所的に変形が進行する。この特性は試料にダメージを加えた時に結晶スケールの微細構造変化を調べるアナログ物質に応用できると考えた。先行研究よりPEnからCEnへの相転移に粒径や応力依存があることが分かっている(Ohi et al., 2022Can. Min.; Tasaka and Iwago, 2024PCM) 。
ビッカース変形試験機を用いピラミット形状の圧子を鏡面研磨した試料に押し付け、荷重一定で15秒保持したのち圧子を抜く変形実験を行った。局所領域(7.6~2660µm2)に荷重0.1〜20 Nを加え試料に高応力(~10GPa)を加えた。焼結温度と時間を変えることで粒径を変化させPEn100%とPEnとCEnの割合が91:9%の初期試料を準備した。実験の結果、荷重0.1〜10 Nの範囲で荷重増加と伴にCEnの割合が増加することが確認されたが、荷重20 Nでは大きな亀裂が発生しCEnの割合は変化しなかった。また、圧痕を付けた直後よりも時間が経過するとCEnの割合がさらに増加する傾向が見られた。特に圧痕付近ではCEnの割合が顕著に増加した。このことから、変形誘起相転移は荷重に依存し、PEnからCEnへの相転移は未変形試料のCEnの割合(初期試料の粒径)に影響を受けることが明らかになった。
本研究の実験結果は、局所的な変形が鉱物の相転移を促進させることを示している。ビッカース変形試験機による変形は低温塑性変形(パイエルス機構)の変形機構で起きる。本研究で調べた輝石の相転移はマントル遷移層(深さ520km)のウォズリアイトからリングウッダイトへの相転移と比較して、相転移の体積変化率が似ている、低温塑性変形で低温・高応力下で強く変形するという共有点があり、今後エンスタタイト以外のケイ酸塩鉱物への応用も期待される。