17:15 〜 19:15
[SCG62-P16] フェーズフィールド法による亀裂進展解析―物質境界の亀裂進展経路への影響評価―
キーワード:フェーズフィールド法、エネルギー解放率、亀裂、物質境界
亀裂進展経路の予測は,地質境界付近での断層の進展過程や構造物の亀裂に対する安全性を評価する上で極めて重要な検討課題である.例えば,地震時における断層の進展や構造物のフェイルセーフ設計では,亀裂の発生や進展経路を正確に予測することが求められる.さらに,材料の劣化や破壊を引き起こす亀裂進展は,長期的な耐久性評価やリスク管理においても重要な研究課題である.このような背景から,亀裂進展のメカニズムを理解し,それを数値的に解析するための理論的および計算的手法の開発が進められてきた.
近年,エネルギー汎関数を用いた変分的アプローチが注目されている.Francfort & Marigo[1]は,亀裂進展をエネルギー最小化問題として定式化し,破壊力学を統一的かつ定量的に扱う枠組みを提案している.Bourdinら[2]はこれを拡張して数値解析に適用可能な形式を提案し,Mieheら[3]はフェーズフィールド法を導入して熱力学的一貫性を備えたモデルを構築した.さらに,Ambatiら(2015)は効率的な計算手法を提案し,この分野の進展を体系化している.このような経緯で開発されてきたフェーズフィールド法は,亀裂を連続場としてモデル化し,亀裂の発生や進展,分岐を容易に模擬することができる.亀裂面を追跡する必要がなく,形状や進展経路の複雑さに対応可能な点で高い実用性を持つ.また,数値解析の観点からは,連立偏微分方程式の初期値・境界値問題を解くことに帰着するため,従来からある離散化手法である有限要素法や有限差分法との親和性が高いと言える.
本研究では,フェーズフィールド法を用いて亀裂進展解析を行い,物質境界が進展経路に与える影響を検討した.物質境界は地層境界や材料接合面などを想定し,単純せん断条件下でのモデルを用いた数値シミュレーションを実施した.モデルは切り欠きを有する1mm四方の正方形で,臨界エネルギー解放率の比(R)および亀裂進展方向と境界のなす角(θ)を変化させた96ケースのパラメトリックスタディを実施した.なお,一連のシミュレーションは汎用工学ソフトウェアCOMSOL Multiphysics 上で実装した.
結果,物質境界の影響はθ < 30°およびR > 1.8で顕著であり,亀裂が境界面に沿って進展する場合が多く確認された.また,Rが極端に小さい場合にも同様の影響が確認された.一方,θが大きくなると境界面の影響は減少し,亀裂が分岐するケースも見られた.以上のとおり,臨界エネルギー開放率の比で特徴づけられる物質境界面が亀裂進展に与える影響を網羅的に把握することができた.ただし,今回の検討では界面の状態が極めて均質な状態についての検討であるため,今後は界面粗さや材料組成の不均質性を考慮したより現実的な問題設定への適用が課題である.
参考文献
[1] G. A. Francfort and J.-J. Marigo, “Revisiting brittle fracture as an energy minimization problem,” J. Mech. Phys. Solids, vol. 46, no. 8, pp. 1319–1342, 1998.
[2] B. Bourdin, G. A. Francfort, and J.-J. Marigo, “The variational approach to fracture,” J. Elasticity, vol. 91, no. 1-3, pp. 5–148, 2008.
[3] C. Miehe, F. Welschinger, and M. Hofacker, “Thermodynamically consistent phase-field models of fracture: Variational principles and multi-field FE implementations,” Int. J. Numer. Methods Eng., vol. 83, no. 10, pp. 1273–1311, 2010.
[4] M. Ambati, T. Gerasimov, and L. De Lorenzis, “A review on phase-field models of brittle fracture and a new fast hybrid formulation,” Comput. Mech., vol. 55, no. 2, pp. 383–405, 2015.
近年,エネルギー汎関数を用いた変分的アプローチが注目されている.Francfort & Marigo[1]は,亀裂進展をエネルギー最小化問題として定式化し,破壊力学を統一的かつ定量的に扱う枠組みを提案している.Bourdinら[2]はこれを拡張して数値解析に適用可能な形式を提案し,Mieheら[3]はフェーズフィールド法を導入して熱力学的一貫性を備えたモデルを構築した.さらに,Ambatiら(2015)は効率的な計算手法を提案し,この分野の進展を体系化している.このような経緯で開発されてきたフェーズフィールド法は,亀裂を連続場としてモデル化し,亀裂の発生や進展,分岐を容易に模擬することができる.亀裂面を追跡する必要がなく,形状や進展経路の複雑さに対応可能な点で高い実用性を持つ.また,数値解析の観点からは,連立偏微分方程式の初期値・境界値問題を解くことに帰着するため,従来からある離散化手法である有限要素法や有限差分法との親和性が高いと言える.
本研究では,フェーズフィールド法を用いて亀裂進展解析を行い,物質境界が進展経路に与える影響を検討した.物質境界は地層境界や材料接合面などを想定し,単純せん断条件下でのモデルを用いた数値シミュレーションを実施した.モデルは切り欠きを有する1mm四方の正方形で,臨界エネルギー解放率の比(R)および亀裂進展方向と境界のなす角(θ)を変化させた96ケースのパラメトリックスタディを実施した.なお,一連のシミュレーションは汎用工学ソフトウェアCOMSOL Multiphysics 上で実装した.
結果,物質境界の影響はθ < 30°およびR > 1.8で顕著であり,亀裂が境界面に沿って進展する場合が多く確認された.また,Rが極端に小さい場合にも同様の影響が確認された.一方,θが大きくなると境界面の影響は減少し,亀裂が分岐するケースも見られた.以上のとおり,臨界エネルギー開放率の比で特徴づけられる物質境界面が亀裂進展に与える影響を網羅的に把握することができた.ただし,今回の検討では界面の状態が極めて均質な状態についての検討であるため,今後は界面粗さや材料組成の不均質性を考慮したより現実的な問題設定への適用が課題である.
参考文献
[1] G. A. Francfort and J.-J. Marigo, “Revisiting brittle fracture as an energy minimization problem,” J. Mech. Phys. Solids, vol. 46, no. 8, pp. 1319–1342, 1998.
[2] B. Bourdin, G. A. Francfort, and J.-J. Marigo, “The variational approach to fracture,” J. Elasticity, vol. 91, no. 1-3, pp. 5–148, 2008.
[3] C. Miehe, F. Welschinger, and M. Hofacker, “Thermodynamically consistent phase-field models of fracture: Variational principles and multi-field FE implementations,” Int. J. Numer. Methods Eng., vol. 83, no. 10, pp. 1273–1311, 2010.
[4] M. Ambati, T. Gerasimov, and L. De Lorenzis, “A review on phase-field models of brittle fracture and a new fast hybrid formulation,” Comput. Mech., vol. 55, no. 2, pp. 383–405, 2015.