11:30 〜 11:45
[SCG63-04] 短波海洋レーダのよる津波情報と活用
★招待講演
キーワード:短波海洋レーダ、津波計測、避難情報
1.海洋レーダ
沿岸域での海洋表層流速場を高い時空間分解能で計測できる海洋レーダは、例えば津波の検知、重油流出事故などに伴う汚染物質の漂流・拡散の予測、水産業に係る海況情報提供など、沿岸域の海況把握・予測に極めて有効な観測手段である。このため、近年海洋レーダを導入する機関が増えている。
海洋レーダは短波帯の周波数を用いた地表波モードにより伝播し、沿岸に設置のレーダから水平線を越えて遠方海面での散乱波を受信するドップラーレーダである(Fig. 4)。使用電波の波長に対してブラッグ共鳴条件を満たす波浪の動きから表層流や波浪情報が取得できる。流速測定精度はレーダ観測時間に因るが、5~10cm/sである。また、海洋レーダは電波照射範囲内の流速場、波高分布等の海象情報を面的にリアルタイムで計測できることが特徴である。観測可能距離は、表面伝搬モードの伝搬減衰が海面状況と使用周波数に依存し、国内外で良く利用されている25MHz帯では最大60km、13MHz帯で最大100kmである。
2.海洋レーダによる津波計測
海洋レーダによる津波計測は、津波波動の動きに応じて津波上での波浪の速度変化としてとらえることによって行われる。その可能性は、海洋レーダの開発当初から述べられてきた(Barrick, 1979)が、東北地方太平洋沖地震によって発生した津波の流速場が、Fig. 2に示すように日本、米国およびチリで観測され実証された(Hinata et al.,2011; Lipa et al., 2011; Dzvonkovskaya et al. 2012; Benjamin et al., 2016)。
また、海洋レーダでの流動場の2次元観測の特徴を生かして海洋レーダの有用性、紀伊水道と伊勢湾での津波で引き起こされる副振動の流動場が明らかになった(日向ら, 2012; Toguchi et al., 2018)。副振動は海岸形状によってその構造が複雑であり、副振動により最大波高が発生する場合があることから、津波警報解除のタイミングの判断には海洋レーダによる流速場の面的計測が有効である。
海洋レーダで観測された流速データを用いたデータ同化に基づく津波到達高予測手法が検討されている(Mulia et al., 2020; Wang et al., 2022)。さらに、Sahana et al.(2024)は、複数台のレーダを用いて、レーダビーム交差角による測定誤差を考慮した予測精度の向上を図っている(Fig. 3)。
3.海洋レーダの有用性
津波避難において、「大きな揺れを感じたら避難」、「津波警報が発表されたら避難」などと予め決めていた状況になったら避難をするというタイプは全体の2〜3割程度で、ほとんどの住民は地域に醸成される切迫感を感じ取って,直感的に避難を開始している(高橋・奥村, 2024)。海洋レーダでの津波観測では、面的な観測により、徐々に津波が接近する状況をモニタリングすることができる。その様子を適切に住民へ伝えることができれば、緊迫感の醸成により避難行動を効果的に促すことのできる有用な情報源となることが期待される。
津波観測に利用されている洋上のGPS波浪計や海底設置の水圧計は設置および保守に莫大な費用を要する。これに対して、陸上設置の海洋レーダは、日本全国海岸をカバーする150~200基を設置しても、1/10~1/20の費用で展開することが可能である(Fig. 4)。海洋レーダネットワークの全国展開により、S-net, N-net, DONETといった海底地震津波観測網の観測範囲から漏れている海域や海岸から50㎞以近の沿岸域をカバーできる。さらに、海洋レーダは平常時においては海況モニタリングに使用することができ、海洋環境保全、海難救護、水産業、海上交通など様々な用途に活用できることから、それらの分野との費用分担によって維持コストの削減が期待される。
沿岸域での海洋表層流速場を高い時空間分解能で計測できる海洋レーダは、例えば津波の検知、重油流出事故などに伴う汚染物質の漂流・拡散の予測、水産業に係る海況情報提供など、沿岸域の海況把握・予測に極めて有効な観測手段である。このため、近年海洋レーダを導入する機関が増えている。
海洋レーダは短波帯の周波数を用いた地表波モードにより伝播し、沿岸に設置のレーダから水平線を越えて遠方海面での散乱波を受信するドップラーレーダである(Fig. 4)。使用電波の波長に対してブラッグ共鳴条件を満たす波浪の動きから表層流や波浪情報が取得できる。流速測定精度はレーダ観測時間に因るが、5~10cm/sである。また、海洋レーダは電波照射範囲内の流速場、波高分布等の海象情報を面的にリアルタイムで計測できることが特徴である。観測可能距離は、表面伝搬モードの伝搬減衰が海面状況と使用周波数に依存し、国内外で良く利用されている25MHz帯では最大60km、13MHz帯で最大100kmである。
2.海洋レーダによる津波計測
海洋レーダによる津波計測は、津波波動の動きに応じて津波上での波浪の速度変化としてとらえることによって行われる。その可能性は、海洋レーダの開発当初から述べられてきた(Barrick, 1979)が、東北地方太平洋沖地震によって発生した津波の流速場が、Fig. 2に示すように日本、米国およびチリで観測され実証された(Hinata et al.,2011; Lipa et al., 2011; Dzvonkovskaya et al. 2012; Benjamin et al., 2016)。
また、海洋レーダでの流動場の2次元観測の特徴を生かして海洋レーダの有用性、紀伊水道と伊勢湾での津波で引き起こされる副振動の流動場が明らかになった(日向ら, 2012; Toguchi et al., 2018)。副振動は海岸形状によってその構造が複雑であり、副振動により最大波高が発生する場合があることから、津波警報解除のタイミングの判断には海洋レーダによる流速場の面的計測が有効である。
海洋レーダで観測された流速データを用いたデータ同化に基づく津波到達高予測手法が検討されている(Mulia et al., 2020; Wang et al., 2022)。さらに、Sahana et al.(2024)は、複数台のレーダを用いて、レーダビーム交差角による測定誤差を考慮した予測精度の向上を図っている(Fig. 3)。
3.海洋レーダの有用性
津波避難において、「大きな揺れを感じたら避難」、「津波警報が発表されたら避難」などと予め決めていた状況になったら避難をするというタイプは全体の2〜3割程度で、ほとんどの住民は地域に醸成される切迫感を感じ取って,直感的に避難を開始している(高橋・奥村, 2024)。海洋レーダでの津波観測では、面的な観測により、徐々に津波が接近する状況をモニタリングすることができる。その様子を適切に住民へ伝えることができれば、緊迫感の醸成により避難行動を効果的に促すことのできる有用な情報源となることが期待される。
津波観測に利用されている洋上のGPS波浪計や海底設置の水圧計は設置および保守に莫大な費用を要する。これに対して、陸上設置の海洋レーダは、日本全国海岸をカバーする150~200基を設置しても、1/10~1/20の費用で展開することが可能である(Fig. 4)。海洋レーダネットワークの全国展開により、S-net, N-net, DONETといった海底地震津波観測網の観測範囲から漏れている海域や海岸から50㎞以近の沿岸域をカバーできる。さらに、海洋レーダは平常時においては海況モニタリングに使用することができ、海洋環境保全、海難救護、水産業、海上交通など様々な用途に活用できることから、それらの分野との費用分担によって維持コストの削減が期待される。