日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM15] Electric, magnetic and electromagnetic survey technologies and scientific achievements

2025年5月27日(火) 15:30 〜 17:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:臼井 嘉哉(東京大学地震研究所)、後藤 忠徳(兵庫県立大学大学院理学研究科)、座長:市原 寛(名古屋大学大学院環境学研究科附属地震火山研究センター)、後藤 忠徳(兵庫県立大学大学院理学研究科)

15:50 〜 16:05

[SEM15-02] 物理探査を用いた泥炭性軟弱地盤に沈埋した盛土の状態把握と泥炭の電気的特性に関する検討

*深田 愛理1、橋本 聖1、山木 正彦1、尾西 恭亮2 (1.国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所、2.国立研究開発法人 土木研究所 )

キーワード:電気探査、EM探査、電気検層、泥炭

1.はじめに
 北海道では泥炭性軟弱地盤が広く分布し,その地盤上に盛土が施工,供用されている.その盛土に砂質土等の材料が使用された場合,圧密により地下水位が高い盛土飽和部が形成され,地震時にはその箇所が液状化を起こし大規模な盛土崩壊に至る事象が多数確認されている.そのため,盛土の弱点箇所となり得る盛土飽和部の分布と厚さを、定性的にでも広範囲かつ連続的に知ることは重要と考える.                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  
本報告は泥炭性軟弱地盤に沈埋した盛土の飽和部を簡易に把握する手法を検討するために,従来の地盤調査法に物理探査を加え,それらの結果を比較した内容である.
2.調査地
 北海道天塩郡天塩町にある泥炭性軟弱地盤上に施工された粗粒分が卓越した盛土(以下,粗粒盛土)と細粒分が卓越した盛土(以下,細粒盛土)の2つの林帯盛土で調査を実施した.
3.調査手法
本研究では従来の地盤調査法で得た盛土および泥炭地盤の情報を正として,これと比較,評価するために物理探査をおこなった.従来の地盤調査法はボーリング,標準貫入試験,電気検層を実施した.一方,物理探査は電気探査とEM探査をおこなった.物理探査は粗粒盛土,細粒盛土ともに盛土縦断方向に盛土天端中央部と左右の3測線(30m/測線)で実施し,各測線延長の中央部でボーリングを実施した. 以下,盛土中央部で実施した測線をC測線,左部と右部で実施した測線をそれぞれL測線,R測線とする.
4.結果
従来の地盤調査法で盛土および泥炭を調査した結果を以下に示す.
粗粒盛土の盛土厚はL測線で1.20m,C測線で1.60m,R測線で2.00m[g1] であり,そのうち盛土飽和部はL測線で0.25m,C測線で0.35m,R測線で0.40mであった.盛土の大半は砂分が70%越えた砂[g2] 質土であった.また,泥炭層の自然含水比および強熱減量は泥炭層上部がwn=706.9%, Li=84.2%,泥炭層下部ではwn=356.7%, Li=39.6%と上下部で有機物含有量が異なっていた.電気検層の結果,粗粒盛土の比抵抗は飽和・不飽和で変化せず盛土下部と泥炭層上部の境界はρ_T=30Ω・m,泥炭の比抵抗は泥炭層上部がρ_T=30~65Ω・m,泥炭層下部ではρ_T=30~50Ω・mであった.
 一方,細粒盛土の盛土厚はL測線で2.50m,C測線で2.60m,R測線で1.80m[g3] であり,そのうち盛土飽和部はL測線で1.05m,C測線は1.20m,R測線は0.15mであった.盛土の大半は細粒分含有率Fc=76.5%の粘性土であった.また,泥炭は自然含水比wn=670%以上,強熱減量Li=80%以上であった.電気検層の結果,細粒盛土の比抵抗は飽和・不飽和によらずρ_T =20Ω・m,泥炭の比抵抗はρ_T=40~80Ω・mであった.
 次に,物理探査(電気探査,EM探査)の結果を以下に示す.
 電気探査の結果,粗粒盛土では飽和・不飽和を問わず比抵抗ρ_a =60Ω・m以下,泥炭層はρ_a =70~130Ω・mと泥炭層で高比抵抗がみられた.細粒盛土では飽和・不飽和を問わずρ_a =20Ω・m以下,泥炭層はρ_a =40~100Ω・mと相対的に泥炭層が高比抵抗であった.
 EM探査の結果,粗粒盛土では飽和・不飽和を問わず盛土と泥炭層ともに導電率が40 mS/m以下であり,導電率に差がみられなかった.細粒盛土は飽和・不飽和を問わず盛土で導電率が60~120 mS/m,泥炭で30 mS/m以下と泥炭層で低導電率であった.
5.考察
電気探査とEM探査で盛土内水位を捉えられなかった理由は,飽和・不飽和による比抵抗や導電率の変化よりも土質の違いによる変化が大きかったため,把握できなかったと考えられる.
電気探査とEM探査で細粒盛土下部と泥炭層上部の境界を捉えることができた理由は,細粒盛土が低比抵抗、泥炭が高比抵抗の物性だったためと考えられる.Mohamadら(2021)は電気探査を用いて粘土と泥炭の比抵抗を比較した結果,泥炭の比抵抗が大きい傾向にあると報告している.本調査結果は泥炭と細粒盛土の物性の違いが比抵抗の差と表れたため,電気探査とEM探査で盛土下部と泥炭層上部の境界を捉えられたと考えられる.
次に,電気探査で粗粒盛土下部と泥炭層上部の境界を捉えることができた理由について述べる. Asadi(2009)は原位置の比抵抗測定装置を用いて泥炭層の比抵抗を比較した結果,含水量が多い,有機物含有量が多い,有機物の分解が進んでいるほど比抵抗が大きくなる傾向にあると報告している.本研究で計測した粗粒盛土の比抵抗はAsadiらの研究結果と調和的であり,wnLiが大きい泥炭が泥炭層上部にあったため,電気探査で捉えられたと考えられる.一方,EM探査で粗粒盛土下部と泥炭層上部の境界を捉えられなかった理由は,EM探査の探査適用深度より盛土下部と泥炭層上部の境界が浅層部に位置したことが挙げられる.
今後は,盛土高や舗装されている供用中の道路盛土を対象に調査を実施し,泥炭の物性の違いや飽和盛土部の範囲特定に資する物理探査の適用性について検討を継続したい.