日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM15] Electric, magnetic and electromagnetic survey technologies and scientific achievements

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:臼井 嘉哉(東京大学地震研究所)、後藤 忠徳(兵庫県立大学大学院理学研究科)

17:15 〜 19:15

[SEM15-P10] 樽前山火口原における局所的磁場変化の原因推定

*立石 悟1橋本 武志2、鈴木 敦生2、高田 真秀2 (1.北海道大学理学院自然史科学専攻、2.北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

キーワード:樽前山、異常位相、地磁気

樽前山は、北海道南西部に位置する支笏火山の後カルデラ火山のひとつであり、約9,000年前に活動を開始した活火山である(古川・中川, 2010)。これまで樽前山の火口原では、火山活動の把握を目的として札幌管区気象台や北海道大学による全磁力の観測が継続的に実施されてきた。全磁力観測は、数ヶ月から数年スケールで変化する火山活動の消長を捉えることを主な目的としており、1999年から2000年の地盤膨張期の消磁や、2010年以降の地盤収縮期の帯磁などが報告されている(例えば、橋本・他, 2018)。
こうした全磁力の繰り返し観測では、調査領域内の磁気点を移動しながら測量を行い、参照点における同時刻のデータとの単純差をとることで、地球外部起源の変動成分を除去している。その際、外部起源の変動成分は調査領域内で一様であることが前提となっている。しかし、近接した観測点間でも実際には数時間以上の変動成分に数nT程度の違いが見られることが、樽前山での気象庁の全磁力連続観測や最近の臨時調査などでわかってきた。こうした地点ごとの磁場変化の違いは、多くの場合その振幅が小さく問題視されていなかったが、樽前山ではそれが顕著であるため、火山活動起源の変動を検出する上での誤差となり、消帯磁源モデルの推定結果にも影響を与えうる。そこで本研究では、まずこうした局所的な磁場変化の原因を特定するための手がかりを得ることを目的として、火口原内で電磁場の5成分観測を行った。
現地観測は、2024年8月21日から9月3日まで、火口原内の3ヶ所で電場2成分と磁場3成分を観測した。磁場の観測にはBartington社製フラックスゲート型センサを、データ収録にはNTシステムデザイン社製Elog-MTを使用した。この観測データを用いて、まず成分ごとの電磁場時系列プロットの目視による比較を試みたが、この方法では地点ごとの特徴を抽出することは困難であった。そのため次に、MT応答関数を求めて地点による違いが見られるかを調べた。これは、火山の不均質な地下構造によって誘導電流が特定の領域に集中し、その二次磁場が局所的な磁場変化の原因になっているのではないかと考えたためである。
観測データには一部に顕著な電場ノイズが含まれていたため、京都大学防災研究所から能登半島の電磁場データの提供を受けてリモートリファレンス処理を施した。解析にはBIRRPコード(Chave and Thomson, 2004)を用いて、見かけ比抵抗および位相を算出した。その結果、3観測点のうち1地点のみで長周期帯のyx成分に異常位相が確認された。長周期帯で特定の成分に異常位相が現れる傾向は、Inoue and Hashimoto (2024) が提案した、傾斜した柱状の導電体の効果と類似していた。
Yamaya et al. (2009)がMT法探査に基づいて提示した比抵抗構造モデルによれば、樽前山の地下浅部には山頂火口原の中央部に柱状の良導体が推定されている。また、空中磁気測量からは、火口原の直下に傾いた柱状の着磁領域が推定されている(渋谷, 2022)。さらには、広域のMT探査に基づいて樽前山直下から北西方向の地下深部へと向かう低比抵抗体の存在が示されている(山際, 2022)。これらがつながっているとすれば、誘導電流を集中させ、長周期帯の異常位相や局所的な磁場変化の原因となっている可能性が考えられる。ただし、現時点ではこの仮説の検証には至っていない。今後、こうした特異な比抵抗構造によって火口原で異常位相がどのように現れるかをフォワード計算で再現し、観測結果との比較を行うことが必要である。

謝辞:本研究における観測にあたって京都大学防災研究所よりフラックスゲート型磁力計をお借りしました。鈴木敦生様、髙田真秀様、藤原直哉様、藤田知之様、福安幸緒様、平戸悠登様、泉那由多様、太西敦哉様、中屋晟様、筒井優斗様、小川ひかる様に観測機器の設置にご協力いただきました。ここに記して感謝申し上げます。