日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM16] 地磁気・古地磁気・岩石磁気・環境磁気

2025年5月25日(日) 09:00 〜 10:30 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:川村 紀子(海上保安大学校 基礎教育講座)、加藤 千恵(九州大学比較社会文化研究院)、座長:望月 伸竜(熊本大学大学院先端科学研究部 基礎科学部門 地球環境科学分野)

09:30 〜 09:45

[SEM16-03] ε-Fe2O3 が担う古地磁気強度記録

*福間 浩司1 (1.同志社大学理工学部環境システム学科)

キーワード:古地磁気強度、ε-Fe2O3、テリエ法、赤褐色黒曜石

ε-Fe2O3 (luogufengite) は室温において 1 T をこえる巨大な保磁力をもつ磁性体であり,赤褐色黒曜石に例外なくふくまれる.特徴的な低いキュリー点 (~220℃) により ε-Fe2O3 を熱磁気分析で同定することは容易であるが,その残留磁化が過去の地球磁場を記録しているか否かは不明であった.今回ニュージーランドのタウポ火山とオレゴン州のグラスビュッテで得た赤褐色黒曜石および結晶化の少しすすんだ真珠岩について,熱消磁とテリエ法によりその残留磁化方向とテリエ法による古地磁気強度をもとめた.

赤褐色黒曜石と真珠岩は赤褐色と黒色のまだら模様を呈し,残留磁化は ε-Fe2O3 とマグネタイトに担われる.ε-Fe2O3 は180-250℃,マグネタイトは 500-580℃ とせまいアンブロッキング温度をもつ.それぞれの残留磁化方向はたがいに平行であり,逆帯磁であるグラスビュッテは ε-Fe2O3 が過去の地球磁場を記録していることをしめす.テリエ法の結果,ε-Fe2O3 が担う成分はTTAクライテリアを84%の試料でみたす一方,マグネタイトが担う成分は32%の試料でみたした.マグネタイト成分はpTRMチェックやアライ図で上に凸 のためクライテリアをとおらない試料が多かった.ε-Fe2O3 成分がしめす古地磁気強度はサイトでの標準偏差が平均値の10%以下とよく集中した値をあたえ,同一岩体のサイト間でも一致する.

ε-Fe2O3 はキュリー点 (~220℃) は低いが高い保磁力のため,地質学的な時間スケールの緩和時間をもち,生成時の古地磁気記録を保持できると考えられる.200℃ 前後の低いアンブロッキング温度のため,テリエ法における加熱で熱変質をこうむることがなく,熱化学残留磁化 (TCRM) 起源である可能性も低い.ε-Fe2O3 はきわめてまれにしかみられない磁性鉱物であるが,古地磁気強度を得るための理想的な記録媒体である.