日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM16] 地磁気・古地磁気・岩石磁気・環境磁気

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:川村 紀子(海上保安大学校 基礎教育講座)、加藤 千恵(九州大学比較社会文化研究院)

17:15 〜 19:15

[SEM16-P05] 始新世“温室期”の陸域環境復元に向けたグリーンリバー湖成層の古地磁気層序構築の試み

*松本 裕貴1穴井 千里2長谷川 精1泉 奏1池原 実1佐久間 杏樹3隈 隆成4山本 裕二1 (1.高知大学、2.京都大学、3.東京大学、4.宮崎大学)


キーワード:古地磁気、残留磁化、始新世、ハイパーサーマル、古地磁気層序、湖成層

始新世前期は,『ハイパーサーマル(Hyperthermal)』とよばれる急激な温暖化イベントが繰り返し発生した“温室期”として知られる(Westerhold et al., 2020).しかし,Hyperthermalイベントにおける陸域環境の応答はほとんど分かっていない.本研究では,急激な温暖化に対する陸域環境変動の解明を目指し,始新世前期~中期に堆積した湖成層(グリーンリバー層)を対象とした.
  グリーンリバー層は米国ユタ州・ワイオミング州・コロラド州にまたがって分布しており,始新世前期の陸域中緯度に巨大な湖が存在したことを示唆する重要な記録である(Tänavsuu‐Milkeviciene, & Sarg, J., 2012).同層は介在する凝灰岩の40Ar/39Ar年代から,始新世前期~中期(約54~44Ma)の連続した堆積記録を持つことが分かっている(Smith et al., 2008).しかし,同層下部の49~53Maの区間には凝灰岩が介在しておらず,詳細な年代モデルの構築には至っていない.そこで本研究では,グリーンリバー湖成層に対して古地磁気層序を構築し,地磁気年代層序と対比することで詳細な年代モデルの構築を試みた.
  2024年6月に米国ユタ州のIndian canyonセクションで調査を行い,同層下部の500m層位から148層準分の古地磁気試料を採取した.まず初生及び二次磁化を保持する磁性鉱物を検討するため,Lowrie(1990)に基づき3軸IRM(等温残留磁化)の熱消磁実験を行った.その結果,すべての試料で580~600℃での磁化の消失が見られたことから,初生磁化はmagnetiteがキャリアであると解釈した.また,多くの試料でgoethiteやpyrrhotite,maghemiteと推定されるキュリー温度が確認されたことから,グリーンリバー層では磁性鉱物の変質による二次磁化成分を獲得していることが示唆された.
  次に117層準分の試料に対して段階交流消磁及び段階熱消磁を行い,48層準で原点に向かって直線的に消磁される特徴的磁化成分(ChRM)が抽出できた.抽出したChRMのうち,最大角標準偏差(MAD)が30˚以下のものは44層準であった.現状では1試料ずつの測定のため,平均方位での検討はできないが,ChRMが初生磁化であると仮定してVGPを計算し,その緯度から極性を判断することで,古地磁気極性層序を構築した.その結果,グリーンリバー層下部(500m層厚)から,C22n/C22r境界,C22r/C23n境界,C23n/C23r境界に対応する6か所の地磁気逆転境界が認定された.そして始新世における地磁気年代層序と対比した結果,グリーンリバー層の層位100~500mのうち特に河川成層が発達する層準が,始新世前期“温室期”のHyperthermalイベントに対応する可能性が示唆された.