日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GC 固体地球化学

[S-GC37] Volatiles in the Earth - from Surface to Deep Mantle

2025年5月27日(火) 15:30 〜 17:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:角野 浩史(東京大学先端科学技術研究センター)、Caracausi Antonio(National Institute of Geophysics and Volcanology)、清水 健二(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、羽生 毅(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、座長:清水 健二(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、羽生 毅(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、角野 浩史(東京大学先端科学技術研究センター)、Antonio Caracausi(National Institute of Geophysics and Volcanology)

16:00 〜 16:15

[SGC37-13] 2021年福徳岡ノ場の爆発的噴火に関与したH2OとCaに富む玄武岩質メルト

*萩原 雄貴1吉田 健太1清水 健二1牛久保 孝行1渋谷 岳造1羽生 毅1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:福徳岡ノ場、軽石、爆発的噴火、メルト包有物

はじめに:爆発的噴火を引き起こす要因として,例えば,火道内でのマグマの速い上昇速度と低い脱ガス速度(e.g., Zhang, 1999),マグマ-水または氷の相互作用(e.g., Swanson et al., 2012),結晶量増加によるマグマ粘性の増加(e.g., Lavallée et al., 2007),高い揮発性成分量(e.g., Sable et al., 2006)など様々な機構が提案されている.特に島弧火山において最も普遍的な噴火の駆動力は深部の揮発性成分に富む熱いマグマが浅部のマグマだまりに貫入することである (Hilley et al., 2022).そこで本研究では,2021年に福徳岡ノ場で発生した爆発的噴火の引き金になったと考えられている地下深部に由来する玄武岩質メルト(e.g., Yoshida et al., 2023, 2022)の化学的特徴や起源に関する知見を得るため,軽石中の斑晶に含まれるメルト包有物中の主成分・揮発性元素濃度を測定した.

試料:色彩の観点から,外見の異なる3つの軽石を選択した.軽石は琥珀色,灰色,黒色を呈し,それぞれ奄美大島,喜界島,沖縄本島で採取された.ただし,琥珀色の軽石は外見上明るい部分と暗い部分の大きく2つに分かれるため,両者の境界で切断しそれぞれを区別した.破砕後の試料から,かんらん石,単斜輝石,斜長石をハンドピックし鏡面研磨した.灰色の軽石中のかんらん石中のメルト包有物は均質である傾向があったが,それ以外の軽石中のメルト包有物はPost-entrapment crystallizationを被り不均質な場合が多かった.不均質なメルト包有物から正確に揮発性元素濃度を推定するために,それらのメルト包有物は加熱ステージにより約1300–1380°Cまで加熱し溶融させ,急冷することで均質化させた.

分析手法:メルト包有物中のshrinkage bubbleに含まれるCO2濃度を推定するため,ラマン分光法を用いてCO2密度を測定した.メルト包有物中のガラスの主成分元素濃度はEPMAで測定した.揮発性元素濃度はShimizu et al. (2017)が確立した手法に従いSIMSにより測定した.

結果と議論:SiO2 vs. Na2O+K2O図から,福徳岡ノ場のメルト包有物はトラカイトと玄武岩に大きく区別され,先行研究で報告されているデータ(e.g., Yoshida et al., 2022; Maeno et al., 2022)と概ね一致する (図を参照).玄武岩質のメルト包有物は,IBM弧の他の火山のそれと比較してAl2O3濃度(~ 13 wt.%)が低く,CaO濃度(~ 15 wt.%)とH2O濃度(~ 5 wt.%)が高いことが明らかになった.shrinkage bubble中のCO2密度は平均して0.014 g/cm3程度であり,CO2が爆発的噴火に大きく貢献したと考えられる他の火山の噴火のそれ(e.g., 0.1–0.3 g/cm3; Sunset Crater (Arizona); Allison et al., 2021)と比較して1桁低い.また,メルト包有物のガラスのCO2濃度は最大約300 ppmであり,IBM弧の他の火山と同等であった.小笠原弧南部ではradiogenicなPb同位体組成を持つ溶岩やメルト包有物が報告されており(Li et al., 2024; Ishizuka et al., 2008; Tatsumoto, 1966),HIMU的な化学的特徴を持つ海山の沈み込みの関与が示唆されている.また,Li et al. (2024)が報告したメルト包有物のCaO濃度は最大12.65wt%と比較的高い値を示している.従って,福徳岡ノ場の2021年の噴火に関与した玄武岩質メルトもHIMU的な化学的特徴を持つ沈み込んだ海山に由来するかもしれない.今後は,メルト包有物の微量元素濃度やPb同位体比の測定を行い,福徳岡ノ場の玄武岩的組成を持つメルト包有物の起源に更なる制約を与える予定である.

参考文献:Allison et al. (2021) Nat. Commun. 12, 217.; Hilley et al. (2022) Stanford Digital Repository.; Ishizuka et al. (2008) Geochem. Geophys. Geosyst., 8, Q06008; Maeno et al. (2022) Commun. Earth Environ. 3:260; Lavallée et al. (2007) Geology 35, 843–846; Li et al. (2024) Nat. Commun. 15:4088; Shimizu et al. (2017) Geochem. J. 51, 299-313; Sable et al. (2006) J. Volcanol. Geotherm. Res. 158, 333–354; Swanson et al (2012) J. Volcanol. Geotherm. Res. 215–216, 8–25; Tatsumoto (1966) J. Geophys. Res. 71, 1721–1733; Yoshida et al. (2023) Sci. Rep. 13, 7117; Yoshida et al. (2022) Island Arc, 31, e12441; Zhang (1999) Nature 402, 648–650.