日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GC 固体地球化学

[S-GC37] Volatiles in the Earth - from Surface to Deep Mantle

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:角野 浩史(東京大学先端科学技術研究センター)、Caracausi Antonio(National Institute of Geophysics and Volcanology)、清水 健二(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、羽生 毅(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)

17:15 〜 19:15

[SGC37-P06] 高圧変成岩中の流体包有物により直接的に制約した,沈み込むスラブ由来の深部流体安定同位体組成

*吉田 健太1植村 立2井尻 暁3池原 実4、平島 崇男5 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.名古屋大学、3.神戸大学、4.高知大学、5.京都大学)

キーワード:地殻流体、流体包有物、安定同位体、高圧変成岩、有馬型熱水

水流体の酸素水素同位体組成はその起源を示す重要な情報である.西南日本の有馬・宝塚地域に見られる「有馬型熱水」は,非火山性の前弧域に湧出するにも拘らず高塩濃度・高δ18O, 高3He/4He比・低δDといった特徴を持っている(例えばMatsubaya et al., 1973; Kusuda et al., 2014).温泉水の化学組成分析とスラブ流体のモデル計算から,この有馬型熱水は沈み込むスラブからの脱水流体が起源であると考えられている(Kusuda et al., 2014; Adachi & Yamanaka, 2024).
沈み込み帯の岩石に由来する高圧変成岩中に見られる石英脈は,かつての沈み込み帯での流体活動に関する情報を保持しており,深部流体の直接分析に適した試料と言える.Yoshida et al. (2015) では西南日本三波川変成帯で採取した石英脈から,流体包有物の粉砕抽出分析を行い,温泉水の研究からスラブ起源流体の指標とされていた流体濃集元素(B/Cl: 大沢ほか,2010;Li/Cl:風早ほか,2014)の特徴が,流体包有物中の水にも見られることを示した.本研究では,Yoshida et al. (2015) で高Li/B流体が見いだされた石英脈試料を用い,近年鍾乳石の炭酸塩中の流体包有物の破砕分析のために開発・運用されているcavity ring-down spectroscopy(CRDS)法(Uemura et al., 2016)により,流体包有物の酸素水素同位体組成を調べた.また,母相石英の酸素同位体についても,continuous-flow isotope ratio mass spectrometry(CF-IRMS)法(Ijiri et al., 2014)により調べた.石英脈中の流体包有物は天水線から大きく離れた値をとり,先行研究のモデル計算とよく一致する値を示した.また,母岩変成岩のピーク圧力(到達深度)が,モデル計算の示す流体形成深度と概ね一致した.岩体上昇中に浅部で形成された石英脈でも流体包有物組成を調べたところ,高Li/B流体試料と異なり,スラブ流体と天水線の間の組成を示した.石英-水の酸素同位体平衡を仮定して平衡温度を計算すると,変成岩のピーク温度より優位に低い温度を示したため,石英脈全体と流体との間には同位体平衡が成立していないと考えられる.これらの結果は,スラブ起源流体の同位体組成を直接的に示した初めてのものであるとともに,平衡計算によらない直接測定の重要性を示すものであると言える.