11:30 〜 11:45
[SGC38-04] 沈み込み帯高枯渇度かんらん岩の成因:神居古潭帯超苦鉄質岩の全岩化学組成・オスミウム同位体比分析
キーワード:強親鉄性元素、オスミウム同位体、マントル、かんらん岩
リソスフェアを構成するかんらん岩の多くは、始原的なマントル組成と比べてメルト成分に枯渇している。キンバーライトにより地表へもたらされたかんらん岩捕獲岩の研究から、太古代地殻直下のリソスフェアは特にメルト成分が欠乏していることが知られており、これらの起源を理解することは太古代に支配的であったテクトニクスを考察する上で重要である。太古代リソスフェアが高度に枯渇している原因については、当時の高いマントルポテンシャル温度を反映しているとする説が有力視されているが、未だ結論は得られていない。一方、太古代リソスフェアと同程度に枯渇するかんらん岩は環太平洋の沈み込み帯の各地域で報告されており、高枯渇度を達成するにはプレート沈み込みに伴うプロセスが必要と考える研究者も多い。北海道神居古潭帯の南北に不連続に露出する超苦鉄質岩は、高度に枯渇したかんらん岩を原岩とすることが知られているが、全域を通して著しく蛇紋岩化を被っているため、全岩化学組成に関する網羅的な研究は未だ行われていない。そこで本研究では、太古代リソスフェアの成因を考える上でのアナログとなりうる敏音知・幌加内・鷹泊・岩内岳の超苦鉄質岩の全岩化学分析を行い、得られた主要、微量、強親鉄性元素(HSE: Os, Ir, Ru, Pt, Pd, Re)およびオスミウム同位体比のデータを用いて本岩体の溶融環境、年代に関する制約を試みた。
神居古潭帯の超苦鉄質岩は強く蛇紋岩化作用を受けているものの、主要元素や一部の流体移動元素を除く微量元素やHSE、オスミウム同位体比への影響はほとんど見られない。微量元素組成においては、中〜重希土類元素が海洋底かんらん岩に比べて著しく枯渇している反面、軽希土類元素に比較的富んでいることが判明した。このような組成を説明するために、系へのスラブ流体の流入による軽希土類元素の付加を考える必要があり、沈み込み帯前弧域での含水条件での溶融が高度な枯渇の原因となった可能性がある。またHSE存在度パターンは、通常固相側に濃集するオスミウムやイリジウムが著しく枯渇した特殊なパターンを示す試料が多いことで特徴付けられる。得られた結果はオスミウム濃度が0.001〜28.6 ppb、イリジウム濃度が0.01〜20.7 ppbと非常に広いバリエーションを示しており、これらの岩石が経験した沈み込み帯での溶融環境を反映したシグナルである可能性がある。一方、187Re/188Osと187Os/188Osの間に明瞭な相関関係は認められず、オスミウム同位体に基づくアイソクロン年代は得られなかった。これはオスミウムの低下を伴う分別プロセス、つまり沈み込み帯における含水環境での溶融が、極めて新しい年代に起きたことを示している。これに対して神居古潭帯の超苦鉄質岩の187Os/188Osは0.121にピークを持ち、これはレニウム枯渇モデル年代(TRD )に換算すると約10億年前のマントルと見なすことができる。
以上の知見から、本研究地域の超苦鉄質岩は沈み込み帯における含水条件での溶融により、高度に枯渇した組成と特殊な微量元素・HSEs組成を獲得するに至ったと考えられ、本地域における鉱物学的な観点から沈み込み帯での溶融モデルを提案する先行研究とも調和的である。またオスミウム同位体に記録された年代と、オスミウム低下が生じたと考えられる年代のギャップからは、これらの超苦鉄質岩は異なる造構場(例えば中央海嶺と沈み込み帯)で少なくとも二度の溶融を受けたことが示唆される。
神居古潭帯の超苦鉄質岩は強く蛇紋岩化作用を受けているものの、主要元素や一部の流体移動元素を除く微量元素やHSE、オスミウム同位体比への影響はほとんど見られない。微量元素組成においては、中〜重希土類元素が海洋底かんらん岩に比べて著しく枯渇している反面、軽希土類元素に比較的富んでいることが判明した。このような組成を説明するために、系へのスラブ流体の流入による軽希土類元素の付加を考える必要があり、沈み込み帯前弧域での含水条件での溶融が高度な枯渇の原因となった可能性がある。またHSE存在度パターンは、通常固相側に濃集するオスミウムやイリジウムが著しく枯渇した特殊なパターンを示す試料が多いことで特徴付けられる。得られた結果はオスミウム濃度が0.001〜28.6 ppb、イリジウム濃度が0.01〜20.7 ppbと非常に広いバリエーションを示しており、これらの岩石が経験した沈み込み帯での溶融環境を反映したシグナルである可能性がある。一方、187Re/188Osと187Os/188Osの間に明瞭な相関関係は認められず、オスミウム同位体に基づくアイソクロン年代は得られなかった。これはオスミウムの低下を伴う分別プロセス、つまり沈み込み帯における含水環境での溶融が、極めて新しい年代に起きたことを示している。これに対して神居古潭帯の超苦鉄質岩の187Os/188Osは0.121にピークを持ち、これはレニウム枯渇モデル年代(TRD )に換算すると約10億年前のマントルと見なすことができる。
以上の知見から、本研究地域の超苦鉄質岩は沈み込み帯における含水条件での溶融により、高度に枯渇した組成と特殊な微量元素・HSEs組成を獲得するに至ったと考えられ、本地域における鉱物学的な観点から沈み込み帯での溶融モデルを提案する先行研究とも調和的である。またオスミウム同位体に記録された年代と、オスミウム低下が生じたと考えられる年代のギャップからは、これらの超苦鉄質岩は異なる造構場(例えば中央海嶺と沈み込み帯)で少なくとも二度の溶融を受けたことが示唆される。