日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学・GGOS

2025年5月25日(日) 09:00 〜 10:30 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)、座長:宮原 伐折羅(国土交通省国土地理院)、市川 隆一(情報通信研究機構)

10:00 〜 10:15

[SGD02-05] OFES2海洋モデルに基づく海洋角運動量の計算

*山口 竜史1古屋 正人2 (1.北海道大学理学院自然史科学専攻 地球惑星ダイナミクス講座、2.北海道大学大学院理学研究院 地球惑星科学部門)


キーワード:地球回転、極運動、チャンドラー極運動、励起関数、海洋角運動量

チャンドラー極運動は地球の極運動の1成分で、大気・海洋・陸水の質量再配分と固体地球に対する相対角運動量の変化によって励起される地球の自由振動の1つである(Gross, 2015)。チャンドラー極運動はこれまで100~200ミリ秒角(mas)程度の振幅を持っていたが、最小二乗法を用いたモデリングによって2015年以降振幅が30mas程度まで減少しており、観測史上初の消失を起こしていることが明らかになった(Yamaguchi & Furuya, 2024)。Yamaguchi & Furuya (2024)はERA5とJRA-55に基づく大気角運動量(AAM)が整合的に減少していることを指摘し、大気の寄与の減少を一因として提案したが、海洋の寄与についてはMPIOMとECCOに基づく海洋角運動量(OAM)が整合していないことを示し、消失の完全な原因解明には至っていない。 Xu et al. (2024)は、NCEPの大気データから計算した大気角運動量(AAM)及びECCOのモデルデータから出力されたデータを用いて計算した海洋角運動量(OAM)を積分することで、チャンドラー極運動の消失と同時期に、チャンドラー極運動の励起における大気の効果と海洋の効果が打ち消しあっていることを示した。しかし、前述した通りYamaguchi & Furuya (2024)の計算結果では、ECCOのモデルデータによるOAMの積分値とMPIOMの海洋モデルに基づくOAMの積分値とは整合したものではなく、海洋による励起の振る舞いの変化について議論するにはデータが限られている。また、Yamaguchi & Furuya (2024)はNCEPのAAMはERA5, JRA-55とは必ずしも整合していないことも示していた。
本研究では、OFES2海洋モデルデータ(Sasaki et al., 2020)に基づいて、OAMの計算を行った。駆動源としてJRA-55のデータを用いているため、Yamaguchi & Furuya(2024)のJRA-55によるAAMの寄与を補完する目的もある。OAMの計算は、海水の質量再配分に伴う慣性乗積の変化量である物質項(Matter term)と、海流による固体地球との相対角運動量の変化である運動項(Motion term)とに分割して計算した。物質項は、まず海底面上の海水圧を計算し、これを空間的に積分することによって求めた。一方運動項は、各等深面上の海流速度を積分し、さらにこれを空間的に積分することによって計算した。
OFES2に基づいてOAMを計算することによって、チャンドラー極運動の励起に対する海洋の寄与を見積もることが期待できる。