日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学・GGOS

2025年5月25日(日) 09:00 〜 10:30 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)、座長:宮原 伐折羅(国土交通省国土地理院)、市川 隆一(情報通信研究機構)

10:15 〜 10:30

[SGD02-06] 光原子時計の長期安定運用を想定した地球潮汐モデル補正の評価

*市川 隆一1田中 愛幸2本多 亮3 (1.情報通信研究機構、2.東京大学、3.山梨県富士山科学研究所)

キーワード:重力、光原子時計、地球潮汐、秒の再定義

2015年頃より、光原子時計に基づく「秒の再定義」について、国際的な時間・周波数分野のコミュニティにおいて議論され始めた。光原子時計の開発の進展は目覚ましく、最近の結果では18桁の精度での周波数変化検出が実証されている。この性能を応用すれば、距離には依存せずリアルタイムかつ高時間分解能で、水準測量とほぼ同程度の1cm精度での高度差計測が可能となる。そのため、振幅が10cmから20cmに及ぶ固体地球潮汐、海洋潮汐荷重変形、余効地殻変動、あるいは地下水の変化に伴う地盤上下変動に起因する周波数変化の振る舞い把握することが重要である。特に、実用的かつ連続的な光原子時計の運用において、潮汐変形の理論モデルの使用により、重力赤方偏移に起因する時計の不確実性を低減することが期待されるが、モデル化しきれていない周期的な変動が光原子時計の運用に影響する可能性がある。

NICTでは、重力赤方偏移に起因する光原子時計の不確かさ評価のため、2021年より様々な測地観測を実施してきた。その一環として、2021年末からは相対重力計Micro-g LaCoste gPhoneXを導入し、重力連続観測を行っている。重力連続観測データには、重力変化をもたらす様々な影響が含まれるが、地球潮汐変動もその一つである。そこで、今回我々は、理論モデルによる地球潮汐変化を評価するために、BAYTAP-Gを用いてgPhoneX連続データを解析し、NICT本部における潮汐変化の推定を試みた。2024年2月〜8月の7ヶ月間での理論モデルとBAYTAP-G潮汐推定値との比較では、理論モデルによる予測値が過大評価気味であり、双方の差は最大10μGal以上に達することがわかった。これは高さに換算して約3.2cm、周波数変動幅に換算すると3.2X10-18に及び、光原子時計の不確かさ評価で無視できない大きさである。

光原子時計の測地応用として、リアルタイム、高精度かつ高時間分解能での上下変動モニター観測がある。この観測では、複数地点に設置された光原子時計間を光ファイバーで接続して、お互いの周波数差を計測することが想定される。そこで、2022年夏季の約2ヶ月半のNICT本部および国立天文台水沢VLBI観測所でのgPhoneX連続観測データについて、先と同じような解析を行った。小金井と水沢におけるBAYTAP-G地球潮汐推定値を求め、各々の場所での理論モデルの地球潮汐予測値との差を求めた。実際の周波数変化観測を想定して、さらに双方の差分を求めた結果、その値の平均は0.6μGal、標準偏差は1.6μGalであった。これは、高さ変化に換算すると約5mm、周波数変化では5X10-19であり、現在の光原子時計の周波数不確かさに比べれば検出限界以下である。ただし、このずれには地域性があると予測されるため、今後他の観測点間についても同様の解析を進め、本講演ではそれらの結果について報告する。