日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学・GGOS

2025年5月25日(日) 10:45 〜 12:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)、座長:渡邉 俊一(海上保安庁海洋情報部)、川元 智司(国土交通省国土地理院)

11:45 〜 12:00

[SGD02-11] 2024年9月の能登半島豪雨に伴う地殻変動:降雨荷重は海域に残るか?

*日置 幸介1、鄭 碩2 (1.北海道大学大学院理学研究院、2.香港理工大学)

キーワード:全地球航法衛星システム、2024年能登半島豪雨、雨水荷重、沈降

2024年9月21日を中心に線状降水帯によってもたらされた能登半島の豪雨では、半島北部海岸の輪島で24時間の降水が400 mmを越え、同年一月にMw7.5の地震で被害を受けた地域に再び洪水等の自然災害をもたらした。本研究では稠密GNSS観測網であるGEONETのF5解からZhan et al. (2021 JGR)の方法で共通誤差(CME)を取り除き、雨水荷重がもたらした数 cmの一時的な沈降を検出した。能登半島を含む広域で積分した沈降(volumetric subsidence)は、同じ地域における一日毎の総降雨量に比例し、Heki &Arief (2022 EPSL)が見出した1 Gtの降雨に対する 0.1 立方kmの沈降という経験則に従うことが明らかにされた。
Zhan et al. (2021)では、2019年台風19号通過時の太平洋岸の験潮所でみられた潮位の上昇が、台風に伴う気圧の低下量にほぼ見合うことから、雨水による荷重は海底には働かないと結論づけた。つまり海域の降水は素早く拡散するため荷重として無視できる(雨水荷重は陸地にのみ働く)と考えた。能登半島の沖合約50 kmに浮かぶ舳倉島は、その面積が1 平方kmを下回るため、陸水荷重による沈降はほぼ無視できる。しかし9月21日の豪雨に伴う舳倉島GNSS局の1-2cmの沈降は能登半島陸域の局の沈降量とほぼ同じであり、海域に雨水荷重が残存する可能性を示唆する。
能登半島北部の験潮所はいずれも陸地の地震時隆起のため2024年一月の地震以後の潮位データが取得できていない。そこで能登半島の北西50 kmに位置する佐渡島の験潮所における豪雨前後の潮位を調べた。そこでは気圧の低下分を上回る潮位の上昇が確認され、降雨が短い時間スケールでは荷重として残存している可能性が示唆された。この事例は海洋のIB (Inverted barometer)応答がどの程度短い時間スケールの気圧変動にまで及ぶか、またそれは個々の海洋の特性にどれだけ依存するか(太平洋と日本海で応答が異なるか)、という測地学の古典的な問題につながる。