日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学・GGOS

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)

17:15 〜 19:15

[SGD02-P01] ヘルマート重力異常の解析的下方接続の安定的かつ高精度な計算方法

*松尾 功二1 (1.国土地理院)

キーワード:ジオイド、重力、下方接続

地表または空中で観測された重力異常値を、ジオイド面または楕円体面上の重力異常値に変換する手続きは「下方接続」と呼ばれる。この手続きは、重力的手法に基づくジオイド起伏の決定や地球内部構造の推定において重要な役割を果たす。下方接続の計算方法としては、テイラー展開を用いた解析的手法(Moritz, 1980)や、ポアソン積分公式に基づく数値的手法(Vaníček et al., 1996)が広く用いられている。前者は「解析接続」と呼ばれ、後者は「ポアソン接続」と呼ばれる。
下方接続は、数学的に不安定な問題として知られている。特に、短波長ノイズが増幅されやすいという課題があるため、計算は最適な条件下で実施される必要がある。例えば、Martinec (1996) は、Canadian Rocky Mountain のように急峻な地形を持つ地域では、重力異常場のグリッド間隔(grid step size)を 5 秒角(約 9 km)以上に設定することで、安定した下方接続計算が可能であることを示した。一方、Goli (2024) は、イランとその周辺を対象にフリーエア重力異常の解析接続の安定性を調査し、1 秒角(約 2 km)のグリッドでは計算が容易に発散するのに対し、2 秒角(約 4 km)のグリッドでは、異なるノイズレベルにおいても安定性を維持できることを確認した。
本研究では、ストークス・ヘルマート法に基づく重力ジオイド計算の高度化を目的として、解析接続を用いたヘルマート重力異常の最適な下方接続計算方法について検証を行った。検証対象とした項目は以下の4点である:(1) 凝縮地形深度、(2) テイラー展開の次数、(3) 繰り返し計算の有無、(4) 計算に使用する重力グリッドの解像度。検証方法としては、ヘルマート重力異常をこれらの項目ごとに様々な設定で下方接続計算し、その結果を基に重力ジオイド計算を行った。次に、計算結果と実測ジオイドデータとの整合性を評価することで、各項目の最適な設定値を探索した。検証地域は、良質な重力データと検証用ジオイドデータが利用可能な米国コロラド州を選定した。
検証の結果、以下の条件で最も安定的かつ高精度な結果が得られた:(1) 凝縮地形深度 = 0 km、(2) テイラー展開次数 = 3、(3) 繰り返し計算あり、(4) 重力グリッド間隔 = 5 秒角(約 9 km)。この結果が得られた理由としては、(1) により間接効果が最小化されたこと、(2) および (3) により短波長シグナルが適切に増幅されたこと、さらに (4) により短波長ノイズの発散が軽減されたことが挙げられる。ただし、これらの条件は計算対象地域の地形的特徴や利用可能な重力データの品質に依存するため、地域ごとに最適な設定条件を探索する必要がある。