09:30 〜 09:45
[SGD03-03] GNSS時系列と変位ベクトルのスタッキングを用いた沖縄本島周辺で発生する短期的SSEの検出
キーワード:短期的スロースリップイベント、沖縄本島、GNSS、琉球沈み込み帯
1.はじめに
スロースリップイベント(以下:SSE)とは、地震波を放出せず測地学的なシグナルのみが観測されるスロー地震の一種であり、数日から数週間の継続時間を持つイベントは短期的SSEと呼ばれる。琉球海溝沈み込み帯の沖縄本島周辺でも短期的SSEの発生が確認されており(e. g., Nishimura, 2014)、超低周波地震(VLFE)や低周波地震(LFE)と同期して発生することが報告されている(Nakamura, 2017)。しかし、沖縄本島周辺ではGNSS観測点が南部に集中しているため、SSEの検知能力は地域によって大きく異なっている。そのため、先行研究では主に南部の沖合でSSEが検出されているが、SSEに伴う地表変位は2-3mm程度と小さく、本当に南部のみで発生しているのかは不明であった。京都大学では、2019年に3つの観測点を沖縄本島北部に設置しており、北部でもSSEの検知能力が向上したことが期待される。そこで、本研究では、20年間以上のGNSS時系列と変位ベクトルのスタッキングを用いて、沖縄本島周辺の短期的SSEの時空間的検出を試みた。
2.データと解析手法
本研究では、1997年4月から2024年9月までの期間における、国土地理院GEONET、京都大学、海上保安庁と九州大学の計33点のGNSS観測点を使用した。観測点の日座標値として、GipsyXを用いて、バイアス整数化精密単独測位法(PPP-AR)により推定されたものを用いた。GNSSデータの前処理として、観測点周辺の植生などにより、座標値が乱れることがあるため、データの取捨選択を行った。具体的には、観測期間の1/3以上が欠測しているか、目視にて明らかに外れ値が多い観測点は解析から除外した。次に、アンテナ交換などに伴うオフセット補正を行った後、地心座標系のデータを東西・南北・上下成分の局所座標系に変換した。その後、欠測値の線形補間を行った後、21日間での四分位偏差の1.8倍以上を外れ値として除去した。また、沖縄本島周辺を取り囲むGEONETの観測点7点に共通する短周期変動を共通誤差とみなして、全観測点のデータから除いた。さらに、SSEに伴う変動を見えやすくするために、21日間の移動中央値を計算した。
これらの処理で得られたデータを用いて、約28年のGNSS時系列とVLFE発生時の変位のスタックングを行った。時系列スタッキングではBletery & Nocquet(2023)で提案された手法を一部改変し、各観測点の各成分ごとの観測変位と計算変位の内積を日毎に足し合わせる手法を用いた。計算変位はOkada(1992)の手法を利用し、Nishimura(2014)により2006年12月9日ごろに沖縄本島南方沖に推定されたイベント(南部断層モデル)、およびそれを海溝に沿って北東方向に30km平行移動させた北部断層モデルを仮定した。それぞれの断層モデルによる計算変位を求め、南部断層モデルと北部断層モデルそれぞれでスタッキングを行い、スタッキング時系列s(t)を算出した。得られたs(t)から、統計的手法を用いて客観的にSSEの発生を確認するため、s(t)を一次関数およびステップ付き一次関数でフィッティングし、180日間の移動ウィンドウを1日ずつずらしながら2つの関数に対するAICの差(ΔAIC)を計算した。また、断層モデルから予測される方向の変位のみに注目するため、正のステップ以外ではΔAICを0として計算した。
次に、沖縄本島周辺のSSEは、VLFEと同期して発生することが報告されていることから、VLFEとSSEが同期して発生すると仮定し、2004年から2014年に発生した沖縄本島周辺の沖縄本島南方沖のVLFEデータ(Asano et al., 2015)を使用して、VLFEのバースト的活動に同期した変位分布をスタッキングすることにより、平均的なSSEに伴う変位分布を求めた。VLFEが1日5回以上発生した日をVLFEのバーストとし、各バースト時の変位分布を目視で確認して、SSEから想定される南東方向と明らかに異なる大きな変位が観測されたバーストはスタッキングから除外した。
3.結果と考察
時系列スタッキングのAICを用いたSSEの同定では、南部断層モデルと北部断層モデルのΔAICを比較したところ、両者の時間変化が概ね一致し、北部だけでΔAICが負のピークを示すことがなかった。このことから、沖縄本島北部単独ではSSEが発生していない可能性が示唆される。一方で、変位スタッキングの結果は、沖縄本島南部だけでなく、北部および背弧側の一部でも変位が顕著であった。このことから、VLFEに同期するSSEの断層は、本研究で仮定した南部断層モデルよりもさらに沖合に位置する可能性が考えられる。
謝辞
本研究では、国土地理院GEONETおよび海上保安庁のGNSSデータとVLFE(Asano et al., 2015)データを使用させていただきました。また、西川友章博士には、多大なるご指導いただきました。ここに感謝の意を表します。
スロースリップイベント(以下:SSE)とは、地震波を放出せず測地学的なシグナルのみが観測されるスロー地震の一種であり、数日から数週間の継続時間を持つイベントは短期的SSEと呼ばれる。琉球海溝沈み込み帯の沖縄本島周辺でも短期的SSEの発生が確認されており(e. g., Nishimura, 2014)、超低周波地震(VLFE)や低周波地震(LFE)と同期して発生することが報告されている(Nakamura, 2017)。しかし、沖縄本島周辺ではGNSS観測点が南部に集中しているため、SSEの検知能力は地域によって大きく異なっている。そのため、先行研究では主に南部の沖合でSSEが検出されているが、SSEに伴う地表変位は2-3mm程度と小さく、本当に南部のみで発生しているのかは不明であった。京都大学では、2019年に3つの観測点を沖縄本島北部に設置しており、北部でもSSEの検知能力が向上したことが期待される。そこで、本研究では、20年間以上のGNSS時系列と変位ベクトルのスタッキングを用いて、沖縄本島周辺の短期的SSEの時空間的検出を試みた。
2.データと解析手法
本研究では、1997年4月から2024年9月までの期間における、国土地理院GEONET、京都大学、海上保安庁と九州大学の計33点のGNSS観測点を使用した。観測点の日座標値として、GipsyXを用いて、バイアス整数化精密単独測位法(PPP-AR)により推定されたものを用いた。GNSSデータの前処理として、観測点周辺の植生などにより、座標値が乱れることがあるため、データの取捨選択を行った。具体的には、観測期間の1/3以上が欠測しているか、目視にて明らかに外れ値が多い観測点は解析から除外した。次に、アンテナ交換などに伴うオフセット補正を行った後、地心座標系のデータを東西・南北・上下成分の局所座標系に変換した。その後、欠測値の線形補間を行った後、21日間での四分位偏差の1.8倍以上を外れ値として除去した。また、沖縄本島周辺を取り囲むGEONETの観測点7点に共通する短周期変動を共通誤差とみなして、全観測点のデータから除いた。さらに、SSEに伴う変動を見えやすくするために、21日間の移動中央値を計算した。
これらの処理で得られたデータを用いて、約28年のGNSS時系列とVLFE発生時の変位のスタックングを行った。時系列スタッキングではBletery & Nocquet(2023)で提案された手法を一部改変し、各観測点の各成分ごとの観測変位と計算変位の内積を日毎に足し合わせる手法を用いた。計算変位はOkada(1992)の手法を利用し、Nishimura(2014)により2006年12月9日ごろに沖縄本島南方沖に推定されたイベント(南部断層モデル)、およびそれを海溝に沿って北東方向に30km平行移動させた北部断層モデルを仮定した。それぞれの断層モデルによる計算変位を求め、南部断層モデルと北部断層モデルそれぞれでスタッキングを行い、スタッキング時系列s(t)を算出した。得られたs(t)から、統計的手法を用いて客観的にSSEの発生を確認するため、s(t)を一次関数およびステップ付き一次関数でフィッティングし、180日間の移動ウィンドウを1日ずつずらしながら2つの関数に対するAICの差(ΔAIC)を計算した。また、断層モデルから予測される方向の変位のみに注目するため、正のステップ以外ではΔAICを0として計算した。
次に、沖縄本島周辺のSSEは、VLFEと同期して発生することが報告されていることから、VLFEとSSEが同期して発生すると仮定し、2004年から2014年に発生した沖縄本島周辺の沖縄本島南方沖のVLFEデータ(Asano et al., 2015)を使用して、VLFEのバースト的活動に同期した変位分布をスタッキングすることにより、平均的なSSEに伴う変位分布を求めた。VLFEが1日5回以上発生した日をVLFEのバーストとし、各バースト時の変位分布を目視で確認して、SSEから想定される南東方向と明らかに異なる大きな変位が観測されたバーストはスタッキングから除外した。
3.結果と考察
時系列スタッキングのAICを用いたSSEの同定では、南部断層モデルと北部断層モデルのΔAICを比較したところ、両者の時間変化が概ね一致し、北部だけでΔAICが負のピークを示すことがなかった。このことから、沖縄本島北部単独ではSSEが発生していない可能性が示唆される。一方で、変位スタッキングの結果は、沖縄本島南部だけでなく、北部および背弧側の一部でも変位が顕著であった。このことから、VLFEに同期するSSEの断層は、本研究で仮定した南部断層モデルよりもさらに沖合に位置する可能性が考えられる。
謝辞
本研究では、国土地理院GEONETおよび海上保安庁のGNSSデータとVLFE(Asano et al., 2015)データを使用させていただきました。また、西川友章博士には、多大なるご指導いただきました。ここに感謝の意を表します。
