日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD03] 地殻変動

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)、野田 朱美(気象庁)、姫松 裕志(国土地理院)、座長:西村 卓也(京都大学防災研究所)、岡崎 智久(理化学研究所革新知能統合研究センター)


10:15 〜 10:30

[SGD03-06] 海岸段丘形成シミュレーションに基づく喜界島の地震発生履歴の解明

*神谷 猛1伊藤 武男2 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.名古屋大学大学院環境学研究科附属地震火山研究センター)

キーワード:喜界島、完新世海岸段丘、地震発生履歴、粘弾性応答、隆起サンゴ礁

南西諸島では, フィリピン海プレートの沈み込みに伴い, 巨大地震の発生が懸念されている. しかし, 明瞭な地震の痕跡が少ないため, 地震発生ポテンシャルの評価が困難な状況にある. このような中, 喜界島の完新世海岸段丘は過去の地震の痕跡として注目されており, 段丘面を構成するサンゴ化石を用いた地質学的議論が現在も行われている. また, 喜界島は奄美海台の沈み込みの影響で, 10万年前から平均隆起速度2.1 ~ 2.3 mm/yrで隆起しており (Inagaki & Omura, 2006). この特異な地殻変動に加え,海岸段丘形成には波浪や生物活動といった外的要因も深く関与しており, 喜界島の地殻変動史は未だ明確には解明されていない. そこで本研究では, 喜界島に見られる4段の海岸段丘地形を対象とし, 地震学および地質学の観点を融合した数値シミュレーションを行うことで, その地殻変動史を解明することを目的とする.

本研究では、数値シミュレーションで生成した海岸段丘面と実際の地形データを比較し, 非線形探索によるパラメータの最適化を行なう. まず、マントルの粘弾性応答やプレートの沈み込みが地殻変動に加えて沿岸プロセスが地形形成に与える影響を考慮した地形発達モデルを構築した. 沿岸プロセスについてはShikakura (2014), 粘弾性応答については伊藤・他 (2015)の手法を採用し, FEMにより過去1万年にわたる地形の時空間発展を1年毎にシミュレーションした. さらに, プレートの沈み込みに伴う定常隆起速度、サンゴの最大成長速度、波浪による最大侵食速度、マントルの粘性率、そして3回の地震発生年の7つのパラメータを用いてパラメータスタディおよび最適化を実施し, 最適値の探索を試みた.

最適化解析の結果, 喜界島周辺での地震発生年や地震間隔を推定できる可能性が示された. また, 海岸段丘形成に必要な地震の規模を推定できることも明らかになった.従来,Shimazaki & Nakata, 1980による時間予測モデルは海岸段丘の崖高や旧汀線高を基に算出されることが一般的である. しかし,本研究の結果は, 喜界島の地下構造を考慮した場合, 既存モデルが必ずしも適用可能であるとは限らないことも示唆された. この結果は, 時間予測モデルの再評価や修正の必要性を示している.