日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD03] 地殻変動

2025年5月26日(月) 10:45 〜 12:15 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)、野田 朱美(気象庁)、姫松 裕志(国土地理院)、座長:伊藤 武男(名古屋大学大学院環境学研究科附属 地震火山研究センター)、渡邉 俊一(海上保安庁海洋情報部)


11:30 〜 11:45

[SGD03-10] InSAR解析による令和6年能登半島地震の余効すべり検出

*岩井 大典1木下 陽平1 (1.筑波大学)

キーワード:InSAR、余効すべり、令和6年能登半島地震

大規模な地震では,余効変動と呼ばれる地震後もゆっくりと動き続ける現象がみられる. 余効変動の発生要因には,余効すべり,粘弾性緩和,間隙弾性反発がある.余効すべりは,地震の際にすべった断層やその周辺が地震後もゆっくりとすべる現象で,地震後数ヶ月~数年続く短期的な変動である.令和6年能登半島地震では,GNSS観測によって1月1日のM7.6の地震後,能登半島を中心に広範囲で余効変動と考えられる地殻変動が観測された(国土地理院).しかし,余効変動の発生要因は明らかになっていない.また,国内外で発生した大規模な地震において余効すべりが発生していることが報告されているものの,発生箇所や規模,余震分布との関係は明らかになっていない.そこで本研究では,地表面変位を高精度かつ面的に検出できる衛星測地技術であるInSAR(Interferometric Synthetic Aperture Rader)で余効すべりを捉え,より高解像度で余効すべりの分布を推定し断層運動メカニズムを解明することを目的とする.面的に変位量を抽出することができれば,点観測であるGNSSでは捉えられていない余効すべりを捉えられる可能性がある.
本研究ではまず,能登半島北部の断層周辺を含むALOS-2 SM-1モードの北行軌道・右向き観測によるSLC 14枚(2024年1月12日から2024年8月23日)を用いて干渉画像を作成した.干渉画像には地表面変位による位相変化に加え,軌道縞や地形縞,電離層や大気遅延による位相変化など様々なノイズが含まれる.本研究では検出精度を向上させるため,軌道縞と地形縞の除去に加え,電離層と大気遅延の補正を行った.電離層補正には,Sprit-Spectrum法 (Gomba, et al., 2016)を用いた.大気遅延補正には,GNSSデータを利用した手法 (Kinoshita, 2022)を用いた.余効すべりの影響がほとんどないと考えられる能登半島南側の穴水町に基準点を取り,断層周辺の海岸線の変位量を抽出し,時系列グラフを作成した.基準点および変位量を抽出する点は,最初の干渉ペア(2024年1月12日と2024年1月26日)でコヒーレンスが0.5以上のピクセルとし,そのピクセルを中心とした半径200mの円内のピクセルの平均変位量を算出した.粘弾性緩和による地震後の余効変動のフォワードモデルの作成には,京都大学の深畑幸俊博士が公開する粘弾性プログラムを使用した.モデルの妥当性は,F5解を用いて作成したGNSS観測における変位図との比較で評価した.
時系列グラフでは,2024年1月12日から2024年4月19日までの間に1 cm~3 cm程度の衛星から遠ざかる変位が確認された.時系列グラフは対数関数的に減衰しており,余効すべりの減衰シグナルは対数関数で説明できることから(Stamps, D. S., & Kreemer, 2024),粘弾性緩和の影響を否定できないが余効すべりによる変位を抽出できた可能性がある.しかし,本地震は北西―南東方向に圧力軸を持つ逆断層型の内陸型地震であり,地震時の断層すべりと同じ方向に余効すべりが発生した場合,北行軌道・右向き観測であることを考慮すると衛星に近づく変位が生じる.そこで,変位の発生要因を明らかにするため,粘弾性緩和による余効変動のフォワードモデルの作成した.震源断層から約80 km以上離れている富山湾周辺では,GNSS観測の変位は粘弾性緩和によるものと仮定し,富山湾周辺でモデルとGNSS観測の変位が一致するように断層パラメータを調整した.断層の傾斜角を35~60°で5°刻みで変化させ,GNSS観測と比較した.傾斜角が35°におけるRMSE(Root Mean Square Error)は,東西方向で8.705 mm,南北方向で10.640 mm,鉛直方向で19.467 mmであった.一方,傾斜角が60°におけるRMSEは,東西方向で8.856 mm,南北方向で13.373 mm,鉛直方向で16.173 mmであった.東西方向,南北方向は傾斜角が小さい方がGNSSと一致しており,鉛直方向は傾斜角が大きい方が一致していた.ただし,富山湾周辺での変位は依然として一致せず,断層パラメータの調整が必要である.
今後は粘弾性緩和モデルを富山湾周辺で変位が一致するよう調整し,粘弾性緩和による変位をInSARの結果から差し引くことで,時系列グラフで見られた対数関数的な減衰シグナルが余効すべりに起因する変位であるのかを評価する.