日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD03] 地殻変動

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)、野田 朱美(気象庁)、姫松 裕志(国土地理院)


17:15 〜 19:15

[SGD03-P08] 伊豆大島におけるGNSS観測キネマティック解析の精度調査

*奥山 哲1川口 亮平1鬼澤 真也1 (1.気象研究所)

キーワード:GNSS、キネマティック解析、GPS

はじめに
火山活動を監視する上で、地殻変動は地下のマグマ溜りへのマグマの蓄積や噴火前の流体の上昇を捉えることのできる重要な観測項目である.中でもGNSSは地表面の3次元変位が得られることから火山性地殻変動観測の大きな柱であり、気象庁では150点弱のGNSS観測点を山上および山麓に設置し、地殻変動を観測している.
観測されたGNSSデータは、精密暦(最終暦・速報暦)を用いた24時間スタティック解析にかけられる.すなわち、得られる地殻変動データは3日ないし2週間遅れの1日1サンプルデータである.このため、気象庁におけるGNSS観測は主に中長期評価に用いられており、それより短い時間スケールの地殻変動は傾斜計を用いて監視している.
しかし傾斜計観測点は数が少ないため、GNSSデータを短期評価にも活用することで迅速な異常検知に貢献し、火山活動監視能力の向上が期待できる.このような背景をもとに、今回GNSSキネマティック解析の精度について調査したので報告する.

GNSSキネマティック解析
気象研究所では伊豆大島島内の15点においてGNSS連続観測を実施しており、気象庁・国土地理院等他機関のデータとあわせ、24時間スタティック解析を行っている.データのサンプリング間隔は30秒であり、衛星システムはGPSのみである.また伝送の都合上、データ取得間隔は1時間に1回である.これらのデータを過去5時間分連結し、rtklib(Takasu et al, 2007)によるPPK(Post-Processing Kinematic)解析を行う.使用する暦は放送暦である.解析結果は基線ごとに1時間単位で分割し、ハードディスクに保存され、解析結果の確認はブラウザから行う.
2024年1月の解析結果を用いて精度を調査した結果、基線長の標準偏差は概ね1 cm以下であり、想定通りの精度が得られた.その一方で、基線長が4 kmを超える基線では標準偏差が約2 cmと悪く、Ambiguityが決定できないエポックの率も高い.また、1日のうちで精度が低下する時間帯があることがわかった.この時間帯は1ヶ月で約2時間早まることから、衛星配置の問題と考えられる.基線解析では両方の観測点で捕捉された衛星データしか用いられないため、長基線において精度が低下する問題も、共通の捕捉衛星数が少ないことが原因と思われる.

精度向上の試み
これを改善するため、解析にGLONASS衛星および準天頂衛星を導入した場合の効果について、気象研究所の元町(G06B)-白石山(G09D)の基線を用いて調査した.まず捕捉衛星数の比較では、GPSのみの場合、最も少ない時刻では6衛星であったのに対し、GLONASS衛星を導入した場合には12衛星、さらに順天頂衛星を導入した場合には14衛星となった.捕捉衛星数の増加に伴い衛星配置による精度低下は大きく改善し、1時間の基線長標準偏差が1 cmを超える率は、GPSのみの場合には8.2%であったのに対し、マルチGNSS化後は2~3%となった.また、基線長標準偏差が1 cm以下の時間帯においても、わずかながら標準偏差の改善が見られた.
さらに、精密暦の効果についても調査を行った.使用した暦はJAXAの提供するMADOCAを用いた超速報暦である(Kawate et al., 2023).スタティック解析では精密暦を利用することで精度が大きく改善することから、キネマティック解析でも同様の効果を期待した調査であったが、残念ながら1時間ごとの基線長標準偏差に大きな改善は見られなかった.これは、衛星軌道誤差による座標値の誤差は1時間単位では長周期のトレンドとして現れ、座標値のばらつきには大きく影響しないためであると考えられる.

まとめ
火山性地殻変動の迅速な検出のため、伊豆大島においてGNSSキネマティック解析システムを構築した.2024年1月の解析結果では、GPS衛星のみを使用する場合、捕捉衛星数が減少することによる精度低下が顕著であったが、解析にGLONASS衛星・準天頂衛星を含めることで大きく改善した.また、1時間の基線長標準偏差で評価する限りにおいては、精密暦(超速報暦)を導入しても顕著な精度向上は見られなかった.
気象研究所が伊豆大島島内に設置した15点のGNSS観測点のうち、いくつかの点では1秒サンプリングのデータを15分ごとに伝送している.今後、これを用いたより迅速な地殻変動把握にも取り組む予定である.