日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD03] 地殻変動

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)、野田 朱美(気象庁)、姫松 裕志(国土地理院)


17:15 〜 19:15

[SGD03-P17] 2022年トンガ火山噴火の大気波伝播に伴う大気荷重変動と重力変化

*小田 雄大1風間 卓仁1本多 亮2三浦 哲3 (1.京都大学大学院理学研究科、2.山梨県富士山科学研究所、3.東北大学大学院理学研究科)


キーワード:相対重力連続観測、トンガ火山噴火、気圧変化、大気荷重、ラム波

2022年1月15日13時(日本時間;以下同じ)頃、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山において大規模な噴火が発生した。この噴火によって励起された大気波は地球大気を伝播し、これに伴う大気圧変動が世界各地で観測された。Imanishi(2022)は長野県松代で超伝導重力計iGrav#028による重力連続観測を実施していたところ、トンガ火山噴火の大気圧変動に伴う約0.5 microGalの重力変化を観測した。また、Imanishi(2022)は観測された重力変動についてZürn and Wielandt(2007)の理論(acoustic gravity waveモデル;以下「AGWモデル」と記す)によって再現できることを示した。特に、これまでほとんど観測例のなかった大気荷重変動起源の慣性効果を重力変化として明瞭に検出した点で重要である。なお、Imanishi(2022)は観測された重力データにカットオフ周波数2.5 mHzのローパスフィルターを適用し、理論計算に用いるラメ定数λおよびμについて、どちらも40 GPaという値を用いることでこの重力観測データを再現できることを示した。

小田ほか(2025)は京都大学の重力測定室でLaCoste型相対重力計G031による重力連続観測を実施していたところ、トンガ火山噴火の大気圧変動に伴う約1.4 microGal(周波数0.1~10 mHz)の重力変化を観測した。また、観測された重力データにバンドパスフィルターを適用することで、周波数0.1~1 mHzの長周期帯と周波数1~10 mHzの短周期帯に分け、それぞれの重力変動についてAGWモデルを用いて再現した。その結果、長周期帯および短周期帯の重力変化はPREM(Dziewonski and Anderson, 1981)の深さ30 kmおよび10 kmにおけるラメ定数をモデル計算に用いた時にそれぞれ再現され、周期帯によってラメ定数が異なる値となった。これは、重力変化において感度を有する地球媒質の深さが気圧波の波長によって異なるためであると考えられる。

そもそも、Imanishi(2022)および小田ほか(2025)が理論計算に用いたAGWモデルは引力効果・フリーエア効果・慣性効果の3つの効果から構成され、このうちフリーエア効果と慣性効果は大気荷重変動に起因する効果である。AGWモデルでは、単位気圧変化が引き起こす地面の上下変位として、Sorrells(1971)の理論式が用いられており、AGWモデルにおけるラメ定数はこの理論式中にのみ現れる。Sorrells(1971)の理論式では地球媒質の均質性を仮定しているが、実際の地球弾性は鉛直不均質構造を有しているため、観測された重力変化も現実の弾性鉛直構造を反映していると考えられる。

そこで本研究は、地球鉛直構造を加味したモデル計算が可能であるTanimoto and Wang(2019)の手法とPREMから作成した地球鉛直構造を用いて、単位気圧変化が引き起こす地面の上下変位を算出した。さらに、この上下変位をSorrells(1971)の理論式と置き換えることで、地球弾性の鉛直不均質構造を加味したAGWモデルを構築し、大気圧変動に伴う重力変化をフォワード計算した。その結果、京都大学の重力測定室で観測された約1.4 microGal(周波数0.1~10 mHz)の重力変化について、周波数帯を分離することなく再現することに成功し、このとき観測値と計算値のRMSEは0.09 microGalとなった。また、本研究は富士山に設置されたgPhone重力計#163および蔵王山に設置された超伝導重力計iGrav#003で検出されたそれぞれ約2.0、2.6 microGalの重力変化について、同様の解析を実施した。その結果、これらの重力変化も周波数帯を分離することなく再現され、このときの観測値と計算値のRMSEはそれぞれ0.15、0.19 microGalとなった。これらの結果は、相対重力連続観測によって2022年トンガ火山噴火の大気波伝播に伴う大気荷重変動が重力変化として明瞭に検出されたことを示しており、その大気荷重変動は地球の鉛直不均質構造を反映していることを示している。