17:15 〜 19:15
[SGD03-P18] 粘弾性変形の時間発展における万有引力の効果

キーワード:余効変動、粘弾性変形、時間発展、地殻変動、重力変化
粘弾性変形は地震の後に発生する余効変動の主要なメカニズムであると考えられており,その時間発展は指数関数などの単純な時間関数に従うとされることが多い.実際,万有引力のない半無限一様Maxwell粘弾性媒質の表面における地震後の変位と重力変化は,単一の時定数を持った指数関数に従う.このことは,Okada(1985)とOkubo(1991)の解に対応原理を適用することで確認できる.一方,より現実的な状況として万有引力と弾性層が存在する場合が考えられる.この場合の粘弾性変形について,Fukahata and Matsu'ura(2018)は変位の方向や震央距離によって変動の時定数が数倍以上変化することや,変位が時間変化する方向が逆向きになる場合があることを示した.ただし,この複雑な時間発展の物理的な解釈は明らかではない.そこで,本研究は上述のような複雑な時間発展が起こる原因として,万有引力の効果を調べた.具体的には,ごく単純な状況で粘弾性変形の数値計算を行い,万有引力の効果によって時間発展がどのように変化するのかを整理する.さらに,この結果をもとに得られた時間発展に対して物理的な解釈を与える.
結果の解釈を行いやすくするために,本研究は一様なMaxwell粘弾性媒質を仮定した.粘弾性変形の計算には万有引力下の球状媒質を扱う手法(Zhou, 2022; Zhou and Wang, 2023)を用いた.長い時定数を持つ変動も統一的に議論するため,地震後約16000年後までという長い期間の変動を計算した.海溝型地震を想定して,震源は傾斜角10度の逆断層とした.震源深さと震央距離は変動の空間スケール依存性を把握するために適宜変更する.また,万有引力の強さを変更した場合の計算も行うために,比例係数CGを導入し,万有引力定数や重力加速度の大きさを制御した.万有引力なし(NoG)の場合には,十分小さな値としてCG=10-10とした.本研究で扱った物理量は水平変位・鉛直変位・重力変化の3つである.水平変位は万有引力とカップリングするスフェロイダル成分のみの値であり,重力変化は空間固定点における値である.
まず,万有引力が存在しない場合(NoG),解析的な結果から予想される通り,各変動の時間発展は単一の時定数による単純な緩和的変動となった.この時定数は媒質のMaxwell緩和時間程度のオーダーであった.これに対し,万有引力が存在する場合,より遅い時刻の時間変化が加わることで各変動の時間発展はより複雑になった.本稿ではこの新たな変動のことを「引力緩和」と呼ぶ.等価定理(Fukahata and Matsu'ura, 2006)を用いた万有引力効果の見積もりから,引力緩和の成因は主に初期応力の移流の効果であると考えられる.引力緩和の時定数は震央距離や震源の深さに依存し,特に空間スケールが大きいほど時定数が短くなった.これは万有引力効果の大きさの空間スケール依存性(Segall, 2010)を反映していると考えられる.さらに,震源深さに比べて震央距離が大きい場合,引力緩和の進行する向きが途中で逆転した.この現象は,上述の空間スケール依存性から理解することができ,特に短波長成分によって引き起こされると解釈できる.また,水平変位・鉛直変位・重力変化のそれぞれで時間発展の特徴が異なっていた.具体的には,重力変化においては引力緩和がより早く卓越する場合があった.また,水平変位においては鉛直変位や重力変化と同じタイミングでの変動の振幅が小さく,より遅い時刻に大きな変動が観察された.
謝辞:粘弾性変形の計算には京都大学学術情報メディアセンターのスーパーコンピュータを使用した.
結果の解釈を行いやすくするために,本研究は一様なMaxwell粘弾性媒質を仮定した.粘弾性変形の計算には万有引力下の球状媒質を扱う手法(Zhou, 2022; Zhou and Wang, 2023)を用いた.長い時定数を持つ変動も統一的に議論するため,地震後約16000年後までという長い期間の変動を計算した.海溝型地震を想定して,震源は傾斜角10度の逆断層とした.震源深さと震央距離は変動の空間スケール依存性を把握するために適宜変更する.また,万有引力の強さを変更した場合の計算も行うために,比例係数CGを導入し,万有引力定数や重力加速度の大きさを制御した.万有引力なし(NoG)の場合には,十分小さな値としてCG=10-10とした.本研究で扱った物理量は水平変位・鉛直変位・重力変化の3つである.水平変位は万有引力とカップリングするスフェロイダル成分のみの値であり,重力変化は空間固定点における値である.
まず,万有引力が存在しない場合(NoG),解析的な結果から予想される通り,各変動の時間発展は単一の時定数による単純な緩和的変動となった.この時定数は媒質のMaxwell緩和時間程度のオーダーであった.これに対し,万有引力が存在する場合,より遅い時刻の時間変化が加わることで各変動の時間発展はより複雑になった.本稿ではこの新たな変動のことを「引力緩和」と呼ぶ.等価定理(Fukahata and Matsu'ura, 2006)を用いた万有引力効果の見積もりから,引力緩和の成因は主に初期応力の移流の効果であると考えられる.引力緩和の時定数は震央距離や震源の深さに依存し,特に空間スケールが大きいほど時定数が短くなった.これは万有引力効果の大きさの空間スケール依存性(Segall, 2010)を反映していると考えられる.さらに,震源深さに比べて震央距離が大きい場合,引力緩和の進行する向きが途中で逆転した.この現象は,上述の空間スケール依存性から理解することができ,特に短波長成分によって引き起こされると解釈できる.また,水平変位・鉛直変位・重力変化のそれぞれで時間発展の特徴が異なっていた.具体的には,重力変化においては引力緩和がより早く卓越する場合があった.また,水平変位においては鉛直変位や重力変化と同じタイミングでの変動の振幅が小さく,より遅い時刻に大きな変動が観察された.
謝辞:粘弾性変形の計算には京都大学学術情報メディアセンターのスーパーコンピュータを使用した.
