17:15 〜 19:15
[SGL22-P04] 海底熱水域の重晶石のESR年代測定-初期228Ra/226Ra比の考慮と放射化分析によるBa濃度測定-
キーワード:ESR年代測定、重晶石、海底熱水域、ラジウム同位体比
電子スピン共鳴(ESR)年代測定では、鉱物中に自然放射線によって生成する、不対電子をもつラジカルが年代とともに蓄積することを利用する。本研究グループは,熱水中のBaが海水中の硫酸イオンと反応して生成する重晶石 (BaSO4) を用いて,実用的に電子スピン共鳴(ESR)によって年代測定が行えることを初めて見出した[1].海底熱水域の活動年代は,鉱床の資源探査の可能性や,熱水を熱源として生きる生物群集の消長を議論する上で重要なデータを提供する.
これまで、重晶石のESR年代測定に関して、さまざまな測定上の改善が行われてきたが、今回、
(1)初期228Ra/226Ra比の考慮
(2)放射化分析によるBa濃度測定による重晶石含有量の推定
の2点について、さらに測定法の改善を試みた。
重晶石にはBaを置き換えてRaが含まれ,これが放射線源となっている。自然界にはRaの同位体として226Raと228Raがあるが、半減期が1600年である226Raに比べ、228Raの半減期は5.75年と短いため、228Raはすぐに観測できなくなってしまう。このため、228Raが観測できない試料については、228Raとその娘核種からの放射線による重晶石の総被曝線量は無視されてきた。しかし、一定の仮定をおいて計算をすると、228Raが観測できなくなる50年から、その寄与が十分小さくなる300年程度の試料の場合には年代を過大評価してしまう可能性があることが示されている[2]。今回、現在の熱水中のRaをMnファイバーを用いて吸着して回収し、228Ra/226Ra比を測定し、これを初期の228Ra/226Ra比として計算に取り入れることでESR年代を補正することを試みた。
年間線量率の計算に、試料中の重晶石の含有率が必要であるが、これまで、化学的に抽出した重晶石(必ずしも純度が100%とは限らない)の質量と抽出前のバルクの試料の質量の比を重晶石の含有率としてきた。しかし、抽出の過程で重晶石が失われている可能性もあるため、バルク試料のBa含有量から重晶石の含有率を算出することで、重晶石の含有率を求めた。
伊豆,小笠原諸島の一つである青ヶ島の東方で2015年に新たに海底熱水域(東青ヶ島海丘カルデラ熱水域)が発見され,採取された鉱石中に高濃度の金が含まれることがわかった.この濃集機構を調べるために研究が進められてきており,海洋研究開発機構によって,海底広域研究船「かいめい」によって2023年6月から7月、および2024年8月から9月にかけて, KM23-08_09C およびKM24-09航海が実施された.この航海において採取された鉱石に含まれる重晶石を用いて,上記の点の改良を含めてESR年代を求めることを試みた.Central Coneサイトから3試料,Eastサイトから7試料を分析した.
無人探査機(KM-ROV)で採取した鉱石試料を切断し、さらにその一部を割って数cmのサイズとした.脱イオン水に浸して質量を測定した後,乾燥させて質量を測定し,含水量を求めた.試料を砕いて20gを取り,低バックグラウンドガンマ線分光測定により,バルクのRa濃度を求めた.その後,化学処理により重晶石を抽出し,数段階のガンマ線の照射を行ってESR測定を行い、SO3-ラジカルの信号強度の線量応答から総被曝線量を求めた。
バルク粉末試料数gを粉砕し、十分に一様にして、約10mgについてそれぞれの試料の中性子放射化分析を行った。京大原子炉において、熱中性子で30秒の中性子照射を行い、生成した137mBa, 139Baからのそれぞれ662, 166 keV のガンマ線を純Ge半導体ガンマ線分光装置によってカウント数を測定し、純粋な重晶石を測定したカウント値との比較から試料中の重晶石の含有量を求めた。
無人探査機による熱水域の探査の際に、ステンレス製のかごに市販のMnファイバーを入れ、15分から2時間熱水噴出孔にさらすことによってRaを吸着させ、洗浄、乾燥後、低バックグラウンド純Ge半導体ガンマ線分光装置によって2週間計測して吸着したRaの228Ra/226Ra比を計測した。
放射化分析によって得られたバルク試料の重晶石含有率と従来の方法の質量比から求めた含有率を比較したところ、ほぼ一致するものの前者が系統的に高く、抽出作業中に重晶石が失われていると考えれば、放射化分析による値を採用するのが適切であると判断される。
Mnファイバーによる測定で、現在の熱水中の228Ra/226Ra比(放射能比)として3回測定の平均値0.20±0.02が得られた。この値を、重晶石に初期に取り込まれたRa同位体比として、補正を行ってESR測定によって得られた総被曝線量から年代を求めたところ、300年程度の試料について、補正前に比べて30年ほど若い値が得られた。合計10試料について、0から2100年の値が得られた。
[1] Okumura et al. (2010) Geochronometria, 37, 57-61.
[2] Toyoda et al. (2016) Geochronometria, 43, 201-206.
これまで、重晶石のESR年代測定に関して、さまざまな測定上の改善が行われてきたが、今回、
(1)初期228Ra/226Ra比の考慮
(2)放射化分析によるBa濃度測定による重晶石含有量の推定
の2点について、さらに測定法の改善を試みた。
重晶石にはBaを置き換えてRaが含まれ,これが放射線源となっている。自然界にはRaの同位体として226Raと228Raがあるが、半減期が1600年である226Raに比べ、228Raの半減期は5.75年と短いため、228Raはすぐに観測できなくなってしまう。このため、228Raが観測できない試料については、228Raとその娘核種からの放射線による重晶石の総被曝線量は無視されてきた。しかし、一定の仮定をおいて計算をすると、228Raが観測できなくなる50年から、その寄与が十分小さくなる300年程度の試料の場合には年代を過大評価してしまう可能性があることが示されている[2]。今回、現在の熱水中のRaをMnファイバーを用いて吸着して回収し、228Ra/226Ra比を測定し、これを初期の228Ra/226Ra比として計算に取り入れることでESR年代を補正することを試みた。
年間線量率の計算に、試料中の重晶石の含有率が必要であるが、これまで、化学的に抽出した重晶石(必ずしも純度が100%とは限らない)の質量と抽出前のバルクの試料の質量の比を重晶石の含有率としてきた。しかし、抽出の過程で重晶石が失われている可能性もあるため、バルク試料のBa含有量から重晶石の含有率を算出することで、重晶石の含有率を求めた。
伊豆,小笠原諸島の一つである青ヶ島の東方で2015年に新たに海底熱水域(東青ヶ島海丘カルデラ熱水域)が発見され,採取された鉱石中に高濃度の金が含まれることがわかった.この濃集機構を調べるために研究が進められてきており,海洋研究開発機構によって,海底広域研究船「かいめい」によって2023年6月から7月、および2024年8月から9月にかけて, KM23-08_09C およびKM24-09航海が実施された.この航海において採取された鉱石に含まれる重晶石を用いて,上記の点の改良を含めてESR年代を求めることを試みた.Central Coneサイトから3試料,Eastサイトから7試料を分析した.
無人探査機(KM-ROV)で採取した鉱石試料を切断し、さらにその一部を割って数cmのサイズとした.脱イオン水に浸して質量を測定した後,乾燥させて質量を測定し,含水量を求めた.試料を砕いて20gを取り,低バックグラウンドガンマ線分光測定により,バルクのRa濃度を求めた.その後,化学処理により重晶石を抽出し,数段階のガンマ線の照射を行ってESR測定を行い、SO3-ラジカルの信号強度の線量応答から総被曝線量を求めた。
バルク粉末試料数gを粉砕し、十分に一様にして、約10mgについてそれぞれの試料の中性子放射化分析を行った。京大原子炉において、熱中性子で30秒の中性子照射を行い、生成した137mBa, 139Baからのそれぞれ662, 166 keV のガンマ線を純Ge半導体ガンマ線分光装置によってカウント数を測定し、純粋な重晶石を測定したカウント値との比較から試料中の重晶石の含有量を求めた。
無人探査機による熱水域の探査の際に、ステンレス製のかごに市販のMnファイバーを入れ、15分から2時間熱水噴出孔にさらすことによってRaを吸着させ、洗浄、乾燥後、低バックグラウンド純Ge半導体ガンマ線分光装置によって2週間計測して吸着したRaの228Ra/226Ra比を計測した。
放射化分析によって得られたバルク試料の重晶石含有率と従来の方法の質量比から求めた含有率を比較したところ、ほぼ一致するものの前者が系統的に高く、抽出作業中に重晶石が失われていると考えれば、放射化分析による値を採用するのが適切であると判断される。
Mnファイバーによる測定で、現在の熱水中の228Ra/226Ra比(放射能比)として3回測定の平均値0.20±0.02が得られた。この値を、重晶石に初期に取り込まれたRa同位体比として、補正を行ってESR測定によって得られた総被曝線量から年代を求めたところ、300年程度の試料について、補正前に比べて30年ほど若い値が得られた。合計10試料について、0から2100年の値が得られた。
[1] Okumura et al. (2010) Geochronometria, 37, 57-61.
[2] Toyoda et al. (2016) Geochronometria, 43, 201-206.