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[SGL23-01] 白亜紀以降の東アジアのテクトニクスを支配する要因:インド亜大陸の衝突とイザナギ―太平洋プレートの沈み込み
キーワード:白亜紀以降の東アジアのテクトニクス、インド亜大陸の衝突、太平洋プレートの沈み込み境界の後退、北東方向の左横ずれ断層と東西伸長、古第三紀の中央構造線の活動、イザナギー太平洋海嶺の沈み込み
近年、マントルトモグラフィー等に基づきイザナギ―太平洋海嶺が第三紀の初頭(60-50 Ma)に東アジア大陸下に沈み込んだことが判明している(例えばSeton et al., 2015)。また、近年放射年代の測定データ量と質が向上し、インドの亜大陸のユーラシア大陸への衝突開始が53-47Maであることも明かとなった(例えばTong et al., 2024)。一般に、ヒマラヤ山脈やチベット高原の形成はインドの亜大陸の衝突によることが直観的に理解される。加えて、東アジア内陸のリフト帯や大陸東縁・南縁の縁海等の形成について、Tapponnier et al. (1982)は、アナログモデル実験に基づき、例えば南シナ海はインドの亜大陸の衝突によってRed River断層に沿う左横ずれより押し出されたインドシナ地塊が南東に押し出された結果形成されたと推論した(extrusion tectonics)。同様に、山西省の盆地やバイカル地溝もインド亜大陸の衝突で生じた北東方向の左横ずれ断層運動に沿って生じた東西伸長によって形成されたと考えられた。さらに近年、Jiao, Tapponnier et al. (2023)はDEMを用いた数値実験で彼らのモデルを精緻化させている。しかし、Tapponnierらのフランス学派は、東アジアの東縁および南縁の沈み込み帯を自由境界としていて、海洋プレートの沈み込みと大陸プレートの相互作用を考えていない。一方、Schellart et al. (2019)は、インドの亜大陸が一定の速度でアジア大陸に突入し、沈み込み境界(海溝が)一定の速度で後退するという境界条件で、前者と後者の速度比を変数としてアナログモデル実験を行った。その結果、海溝の後退速度がインド亜大陸の衝突速度の1/3程度の時に、ヒマラヤの褶曲帯、東アジア内陸のリフト帯の描像や実際の東西伸長量が良く説明出来るとした。しかし、このモデルによって生成された主要な北東方向の左横ずれ断層の位置は実際のものから少しずれているほか、例えばTan-Lu断層のような第1級の左横ずれ断層が再現されていないように思える。また、論文では日本列島における3 Ma以降の東西短縮変形は再現されないことがコメントされているが、実際はTakahashi (2017)が論じたように、日本海溝が西進して東西短縮が作られたように、太平洋プレートが白亜紀以降一方的に後退して来たわけではない。そのような欠陥にも拘わらず、Schellart et al. (2019)のモデル実験は、白亜紀以降の第1次の東アジアのテクトニクスを良く説明するように思える。
我々の興味の対象である白亜紀以降の日本列島のテクトニクスと東アジア大陸内部のそれの対比は興味深い課題であるが、実際の所殆ど研究は進展していない。近年、Kubota et al. (2020)は、古第三紀の中央構造線において2回の大規模な運動が生じたことを明らかにした。一つは、暁新世(59 Ma)の南北水平伸長による正断層運動で、もう一つは前期始新世(47-46 Ma)における南北短縮による左横ずれトランスプレッションである。Kubota et al. (2020)は、暁新世(59 Ma)の南北水平伸長をイザナギ―太平洋海嶺の浮揚性沈み込みによって引き起こされた隆起に伴う重力崩壊に起因すると推定している。一方、左横ずれトランスプレッションは前期始新世のインドの亜大陸のユーラシア大陸の衝突開始やマリアナ海溝における沈み込み開始(48±10 Ma, Wu et al., 2016)とタイミング的には一致する。しかし、現在の所、MTLに沿う左横ずれトランスプレッションがこれらの地質イベント成因的に関連しているのかは全く分かっていない。
我々の興味の対象である白亜紀以降の日本列島のテクトニクスと東アジア大陸内部のそれの対比は興味深い課題であるが、実際の所殆ど研究は進展していない。近年、Kubota et al. (2020)は、古第三紀の中央構造線において2回の大規模な運動が生じたことを明らかにした。一つは、暁新世(59 Ma)の南北水平伸長による正断層運動で、もう一つは前期始新世(47-46 Ma)における南北短縮による左横ずれトランスプレッションである。Kubota et al. (2020)は、暁新世(59 Ma)の南北水平伸長をイザナギ―太平洋海嶺の浮揚性沈み込みによって引き起こされた隆起に伴う重力崩壊に起因すると推定している。一方、左横ずれトランスプレッションは前期始新世のインドの亜大陸のユーラシア大陸の衝突開始やマリアナ海溝における沈み込み開始(48±10 Ma, Wu et al., 2016)とタイミング的には一致する。しかし、現在の所、MTLに沿う左横ずれトランスプレッションがこれらの地質イベント成因的に関連しているのかは全く分かっていない。