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[SGL23-P02] 日本海拡大期の東北日本弧前弧域南端における火山活動:栃木県茂木地域の前期中新世苦鉄質溶岩の岩石学的特徴とマグマ組成変遷

キーワード:中新世火山活動、東北日本弧前弧域、全岩化学組成、日本海拡大、玄武岩質安山岩、安山岩
【研究背景・目的・手法】
栃木県南東部に位置する茂木地域には,ジュラ紀八溝層群を不整合に覆う下部中新統(中川層群:下位から市場層,元古沢層,山内層,茂木層)の日本海拡大期の火山岩類を主体とした地層が分布する.茂木地域では地質図作成や古地磁気測定,地質構造解析,放射年代測定,岩石化学組成分析等の研究が行われているが,中川層群における火成活動の復元やマグマ変遷などの火山学的な研究は少ない.また,山内層と茂木層中の玄武岩質安山岩~安山岩溶岩(以下,苦鉄質溶岩)は同質とされているが[1,2],それらの岩石学的特徴とそのマグマ起源を比較・検討した例はなく,その関係性は不明である.そこで本研究では,山内層と茂木層下部にみられる苦鉄質溶岩を対象に地質調査,薄片観察,全岩化学組成分析を行い,それぞれの層の苦鉄質溶岩の特徴を明らかにした.また,その苦鉄質溶岩のマグマ組成変遷を高時間解像度で得ることができたので報告する.
【地質概説】
中川層群山内層は下位の元古沢層を不整合に覆う.主に玄武岩質~安山岩質火山砕屑岩からなり,明瞭なクリンカー部分をもつ玄武岩~安山岩溶岩を挟在する.火山砕屑岩は火山角礫岩,凝灰角礫岩,火山礫凝灰岩,凝灰岩からなる[2].中川層群茂木層は山内層を整合に覆うが,山内層中部を被覆しており一部でオーバーラップする[2,3].珪長質火山砕屑岩を主体とし,凝灰質砂岩,凝灰質シルト岩を含む.珪長質火山砕屑岩は凝灰岩,凝灰角礫岩,火山角礫岩で,軽石を含むことがある.また,上記の地層にデイサイトが貫入する[2].
【結果】
山内層中の苦鉄質溶岩は,明瞭なクリンカーを伴う溶岩流であり,溶岩と同質の礫からなる火山砕屑岩に挟在する.溶岩はいずれも斑状で,山内層中に貫入する無斑晶状の苦鉄質火山岩とは区別される.茂木層中の苦鉄質溶岩は山内層のものと産状が類似しており,茂木層の珪長質火山砕屑岩中に挟在する.また,山内層と茂木層下部の地層の姿勢は類似しており,それぞれの層の間に大きな地質構造の違いは認められず,時間間隙を示すような堆積物もみられない.
山内層および茂木層中の苦鉄質溶岩の石基組織は,ハイアロピリティックやハイアロオフティックである.含まれる斜長石の大きさに違いはあるものの鉱物組み合わせは同じであり,斑晶鉱物として単斜輝石,斜方輝石,斜長石を含む.また,それらの全岩化学組成はハーカー図上で直線的なトレンドを示す.SiO2は約52~62 wt.%でソレアイト系列である.両者の全岩化学組成に明瞭な違いは認められず,微量元素パターンも同一である.これらの化学組成は第四紀の東北日本弧に産出するソレアイトに組成が類似する.
【考察】
山内層および茂木層中の苦鉄質溶岩は,野外での産状や岩石学的特徴が類似することが本研究で明らかになった.したがって,これらの溶岩を噴出した火山活動は山内層から茂木層堆積時の間に発生したと考えられる.化学組成から,そのセッティングは現在の東北日本弧のソレアイトを産出する地域に類似していたと考えられる.茂木層堆積時には,この苦鉄質火山活動と,茂木層の珪長質火山岩類を噴出する珪長質火山活動が同時期に発生した.また,山内層中の苦鉄質溶岩を層序立てて組成変化をみると,下部から上部につれて珪長質になり,最上部ではやや苦鉄質な組成に変化する.その組成は徐々に変化しており,急激な変化は認められない.さらに,山内層および茂木層中の苦鉄質溶岩は,中川層群でみられる他の火山岩(元古沢層中の無斑晶質玄武岩[4],茂木層中のデイサイト[5])とはハーカー図上で異なる組成範囲およびトレンドを示し,明瞭に区別できる.そのことからも,山内層および茂木層中の苦鉄質溶岩は,茂木地域の他の火山岩と比べた場合でもよく類似していると言える.一方,元古沢層中の無斑晶質玄武岩や茂木層に貫入するデイサイトは,現在の東北日本弧においてみられない特異な化学組成を示すことが報告されている[4,5,6,7].上記のような特異な火成活動時期に挟まれた山内層および茂木層中の苦鉄質溶岩が第四紀の火山岩類と類似する結果は,日本海拡大期のマグマに多様性があったことを示唆している.
引用文献 [1]伊崎ほか(1985)福島大理科報告.[2]星・高橋(1996a)地質雑.[3]星・高橋(1996b)地質雑.[4]周藤ほか(1985b)岩鉱.[5]白水ほか(1983)岩鉱.[6]高橋ほか(1995)地質学論集.[7]山元・山﨑(2023)地質雑.
栃木県南東部に位置する茂木地域には,ジュラ紀八溝層群を不整合に覆う下部中新統(中川層群:下位から市場層,元古沢層,山内層,茂木層)の日本海拡大期の火山岩類を主体とした地層が分布する.茂木地域では地質図作成や古地磁気測定,地質構造解析,放射年代測定,岩石化学組成分析等の研究が行われているが,中川層群における火成活動の復元やマグマ変遷などの火山学的な研究は少ない.また,山内層と茂木層中の玄武岩質安山岩~安山岩溶岩(以下,苦鉄質溶岩)は同質とされているが[1,2],それらの岩石学的特徴とそのマグマ起源を比較・検討した例はなく,その関係性は不明である.そこで本研究では,山内層と茂木層下部にみられる苦鉄質溶岩を対象に地質調査,薄片観察,全岩化学組成分析を行い,それぞれの層の苦鉄質溶岩の特徴を明らかにした.また,その苦鉄質溶岩のマグマ組成変遷を高時間解像度で得ることができたので報告する.
【地質概説】
中川層群山内層は下位の元古沢層を不整合に覆う.主に玄武岩質~安山岩質火山砕屑岩からなり,明瞭なクリンカー部分をもつ玄武岩~安山岩溶岩を挟在する.火山砕屑岩は火山角礫岩,凝灰角礫岩,火山礫凝灰岩,凝灰岩からなる[2].中川層群茂木層は山内層を整合に覆うが,山内層中部を被覆しており一部でオーバーラップする[2,3].珪長質火山砕屑岩を主体とし,凝灰質砂岩,凝灰質シルト岩を含む.珪長質火山砕屑岩は凝灰岩,凝灰角礫岩,火山角礫岩で,軽石を含むことがある.また,上記の地層にデイサイトが貫入する[2].
【結果】
山内層中の苦鉄質溶岩は,明瞭なクリンカーを伴う溶岩流であり,溶岩と同質の礫からなる火山砕屑岩に挟在する.溶岩はいずれも斑状で,山内層中に貫入する無斑晶状の苦鉄質火山岩とは区別される.茂木層中の苦鉄質溶岩は山内層のものと産状が類似しており,茂木層の珪長質火山砕屑岩中に挟在する.また,山内層と茂木層下部の地層の姿勢は類似しており,それぞれの層の間に大きな地質構造の違いは認められず,時間間隙を示すような堆積物もみられない.
山内層および茂木層中の苦鉄質溶岩の石基組織は,ハイアロピリティックやハイアロオフティックである.含まれる斜長石の大きさに違いはあるものの鉱物組み合わせは同じであり,斑晶鉱物として単斜輝石,斜方輝石,斜長石を含む.また,それらの全岩化学組成はハーカー図上で直線的なトレンドを示す.SiO2は約52~62 wt.%でソレアイト系列である.両者の全岩化学組成に明瞭な違いは認められず,微量元素パターンも同一である.これらの化学組成は第四紀の東北日本弧に産出するソレアイトに組成が類似する.
【考察】
山内層および茂木層中の苦鉄質溶岩は,野外での産状や岩石学的特徴が類似することが本研究で明らかになった.したがって,これらの溶岩を噴出した火山活動は山内層から茂木層堆積時の間に発生したと考えられる.化学組成から,そのセッティングは現在の東北日本弧のソレアイトを産出する地域に類似していたと考えられる.茂木層堆積時には,この苦鉄質火山活動と,茂木層の珪長質火山岩類を噴出する珪長質火山活動が同時期に発生した.また,山内層中の苦鉄質溶岩を層序立てて組成変化をみると,下部から上部につれて珪長質になり,最上部ではやや苦鉄質な組成に変化する.その組成は徐々に変化しており,急激な変化は認められない.さらに,山内層および茂木層中の苦鉄質溶岩は,中川層群でみられる他の火山岩(元古沢層中の無斑晶質玄武岩[4],茂木層中のデイサイト[5])とはハーカー図上で異なる組成範囲およびトレンドを示し,明瞭に区別できる.そのことからも,山内層および茂木層中の苦鉄質溶岩は,茂木地域の他の火山岩と比べた場合でもよく類似していると言える.一方,元古沢層中の無斑晶質玄武岩や茂木層に貫入するデイサイトは,現在の東北日本弧においてみられない特異な化学組成を示すことが報告されている[4,5,6,7].上記のような特異な火成活動時期に挟まれた山内層および茂木層中の苦鉄質溶岩が第四紀の火山岩類と類似する結果は,日本海拡大期のマグマに多様性があったことを示唆している.
引用文献 [1]伊崎ほか(1985)福島大理科報告.[2]星・高橋(1996a)地質雑.[3]星・高橋(1996b)地質雑.[4]周藤ほか(1985b)岩鉱.[5]白水ほか(1983)岩鉱.[6]高橋ほか(1995)地質学論集.[7]山元・山﨑(2023)地質雑.