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[SGL23-P06] 八代海南部の底生有孔虫群集から推定される堆積環境
キーワード:八代海、学術研究船白鳳丸第KH-18-3次研究航海、有孔虫、珪藻
平成28年熊本地震の震源断層の一つである日奈久断層帯の南部延長は八代海区間として海底断層群を構成している。周辺海域の東シナ海と有明海では最終氷期以降の海水準変動や古環境の推定が行われてきたが,八代海は閉鎖的な海域であると同時に活構造に富むことなど特異な堆積場である。本研究では,熊本地震を端緒に実施された採泥調査を機に,有孔虫化石から八代海南部の堆積環境を考察する.
平成30年度学術研究船「白鳳丸」共同利用KH-18-3次研究航海が2018年7月27日〜2018年7月30日の4日間の日程で実施され,八代海南部にてピストンコアラー・マルチプルコアラーによる採泥とサムボトムプロファイラーによる地層探査が行われた.先行研究では,ピストンコア試料から様々な分析が行われた(池端,2019MS;後藤,2019MS;堀,2019MS;山﨑,2019MS;影山,2019MS;伊藤,2020MS;寺澤,2021MS;西,2022MS;白川,2023MS;森,2023MS).
本研究で使用したPC06は,緯度32°18′49.56″N・経度130°24′37.38″E,水深48mから採取され,コア長445㎝,PC07は緯度32°18′52.92″N・経度130°24′31.86″E,水深47mから採取され,コア長477㎝であり(影山,2019),断層を挟んで隣接する.
各ピストンコアの表層からおおよそ50㎝間隔に2㎝ずつ試料を採取し,その後試料処理を施した.試料は2019年にサブサンプリングされたDI試料(PC06からDI055∼DI064,PC07からDI065∼DI073)を用いたところ乾燥が著しく有孔虫の保存状態不良のため,新たにDI試料と同じ層準でKS試料の再サブサンプリングを行った。試料は,篩上で水洗して泥成分を除去した後,残渣を濾紙に移し,50℃に設定した定温乾燥機で約24時間乾燥させた.方眼シャーレ上での観察に際し,粒子同士が重なり合わない量になるよう,観察に適した量になるまで分割器で試料を1/2n分割した.分割した試料から,実態顕微鏡下でネイル用の筆を用い,1層準分あたり200個体以上の有孔虫を拾い出した.拾い出した有孔虫が200個体の規定に達しない場合は,その層準から見つかる全ての有孔虫を拾い出した.優占率が5%を超えるものを優勢種として同定を行った.
底生有孔虫が200個体を超えて産出したのは,PC06ではKS055(海底下2∼4㎝),PC07ではKS065(海底下2∼4㎝)のみであり,DI試料との比較はできなかった.どちらもほぼ現生の有孔虫群集と考えられ,採取地点がほぼ同じRifardiほか(1998)のSt.59でみられたクラスターⅠaに相当し,KS055とKS065では底生有孔虫群集に大きな差はないと思われる.八代海の水銀含有量最大値の等値曲線において0.5∼1ppmの地帯に位置する(Rifardiほか,1998)PC06・PC07は,両サンプルともBulimina denudataが最優勢種であり,大木ほか(2004)の報告での水銀含有量が異常値を示す地点でのB.denudataの産出頻度が高くなることとも一致する.Nonionoides grateloupiは,通常は水深最大180mの外側陸棚に生息しており(Pascual et al., 2009),表層生産性の高い海域と低い海域との境界で優勢な日和見的種として分類され(根本ほか, 2008 ; Olugbenga T. Fajemila et al., 2015),断続的に有機物が供給される環境を示唆する.上記の2種はKS055・KS065共通の優勢種であり,他にKS055ではCibicides cf. lobatulusが,KS065ではAmmonia tepidaとHopkinsina glabraが,優勢種としてほかに産出した.A.tepidaは内湾汽水域の環境指定種であり(森脇ほか, 2015),水銀を含む汚染への耐性も有する(Thejasino Suokhrieほか,2017).H.glabraは鹿児島湾中央部の水深28∼150m,松島湾の沿岸域や湾岸域などに生息が確認されている.他の層準では有孔虫がほとんど見つからなかったことから,堆積当時の環境が有孔虫の生存もしくは遺骸の保存に適さないものであったと推定される.
PC06・PC07における現生の底生有孔虫群集が明らかになり,KS055とKS065に大きくは異ならず,それ以前の環境は有孔虫に向かない環境だったことが示唆された.
本研究の結果は2本のコア試料のみから採取された底生有孔虫化石によるものである.今後他のサイトのコアからも有孔虫を採取し,広域的にみる必要がある.また,今回使用したピストンコア試料についても珪藻などの有孔虫以外のサンプルを用いた定量的な評価によって,今回有孔虫の採取されなかった層準の詳細な古環境の解明が期待される.
平成30年度学術研究船「白鳳丸」共同利用KH-18-3次研究航海が2018年7月27日〜2018年7月30日の4日間の日程で実施され,八代海南部にてピストンコアラー・マルチプルコアラーによる採泥とサムボトムプロファイラーによる地層探査が行われた.先行研究では,ピストンコア試料から様々な分析が行われた(池端,2019MS;後藤,2019MS;堀,2019MS;山﨑,2019MS;影山,2019MS;伊藤,2020MS;寺澤,2021MS;西,2022MS;白川,2023MS;森,2023MS).
本研究で使用したPC06は,緯度32°18′49.56″N・経度130°24′37.38″E,水深48mから採取され,コア長445㎝,PC07は緯度32°18′52.92″N・経度130°24′31.86″E,水深47mから採取され,コア長477㎝であり(影山,2019),断層を挟んで隣接する.
各ピストンコアの表層からおおよそ50㎝間隔に2㎝ずつ試料を採取し,その後試料処理を施した.試料は2019年にサブサンプリングされたDI試料(PC06からDI055∼DI064,PC07からDI065∼DI073)を用いたところ乾燥が著しく有孔虫の保存状態不良のため,新たにDI試料と同じ層準でKS試料の再サブサンプリングを行った。試料は,篩上で水洗して泥成分を除去した後,残渣を濾紙に移し,50℃に設定した定温乾燥機で約24時間乾燥させた.方眼シャーレ上での観察に際し,粒子同士が重なり合わない量になるよう,観察に適した量になるまで分割器で試料を1/2n分割した.分割した試料から,実態顕微鏡下でネイル用の筆を用い,1層準分あたり200個体以上の有孔虫を拾い出した.拾い出した有孔虫が200個体の規定に達しない場合は,その層準から見つかる全ての有孔虫を拾い出した.優占率が5%を超えるものを優勢種として同定を行った.
底生有孔虫が200個体を超えて産出したのは,PC06ではKS055(海底下2∼4㎝),PC07ではKS065(海底下2∼4㎝)のみであり,DI試料との比較はできなかった.どちらもほぼ現生の有孔虫群集と考えられ,採取地点がほぼ同じRifardiほか(1998)のSt.59でみられたクラスターⅠaに相当し,KS055とKS065では底生有孔虫群集に大きな差はないと思われる.八代海の水銀含有量最大値の等値曲線において0.5∼1ppmの地帯に位置する(Rifardiほか,1998)PC06・PC07は,両サンプルともBulimina denudataが最優勢種であり,大木ほか(2004)の報告での水銀含有量が異常値を示す地点でのB.denudataの産出頻度が高くなることとも一致する.Nonionoides grateloupiは,通常は水深最大180mの外側陸棚に生息しており(Pascual et al., 2009),表層生産性の高い海域と低い海域との境界で優勢な日和見的種として分類され(根本ほか, 2008 ; Olugbenga T. Fajemila et al., 2015),断続的に有機物が供給される環境を示唆する.上記の2種はKS055・KS065共通の優勢種であり,他にKS055ではCibicides cf. lobatulusが,KS065ではAmmonia tepidaとHopkinsina glabraが,優勢種としてほかに産出した.A.tepidaは内湾汽水域の環境指定種であり(森脇ほか, 2015),水銀を含む汚染への耐性も有する(Thejasino Suokhrieほか,2017).H.glabraは鹿児島湾中央部の水深28∼150m,松島湾の沿岸域や湾岸域などに生息が確認されている.他の層準では有孔虫がほとんど見つからなかったことから,堆積当時の環境が有孔虫の生存もしくは遺骸の保存に適さないものであったと推定される.
PC06・PC07における現生の底生有孔虫群集が明らかになり,KS055とKS065に大きくは異ならず,それ以前の環境は有孔虫に向かない環境だったことが示唆された.
本研究の結果は2本のコア試料のみから採取された底生有孔虫化石によるものである.今後他のサイトのコアからも有孔虫を採取し,広域的にみる必要がある.また,今回使用したピストンコア試料についても珪藻などの有孔虫以外のサンプルを用いた定量的な評価によって,今回有孔虫の採取されなかった層準の詳細な古環境の解明が期待される.