日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT19] Coupling of deep Earth and surface processes

2025年5月27日(火) 13:45 〜 15:15 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Kim YoungHee(Seoul National University)、朴 進午(東京大学 大気海洋研究所 海洋底科学部門)、一瀬 建日(東京大学地震研究所)、Lee Hyunwoo(Seoul National University)、Chairperson:YoungHee Kim(Seoul National University)、朴 進午(東京大学 大気海洋研究所 海洋底科学部門)、一瀬 建日(東京大学地震研究所)、Hyunwoo Lee(Seoul National University)

13:45 〜 14:00

[SIT19-01] ステルス・ホットスポット火山

*豊国 源知1趙 大鵬1 (1.東北大学 大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター)

キーワード:巨大噴火、スラブ・ウィンドウ、地震波トモグラフィー、スラブ下のマントル構造

過去に発生した巨大噴火(VEI≥7)のほとんどは,プレート沈み込み帯の島弧火山列に位置する火山におけるものである.巨大噴火を引き起こすメカニズムについては,これまで山体等の浅部構造や,浅部のマグマ輸送システムと関連づけて説明されることが多く,プレート下の上部マントル構造など深部構造を含めて議論されることはあまりなかった.

沈み込み帯における地震波トモグラフィーでは,沈み込むスラブの上のマントルウェッジ内と,スラブ下のマントルに低速度異常領域が見いだされるという共通した特徴がある.マントルウェッジ内の低速度は,コーナーフローや沈み込むスラブからの脱水で説明でき,通常の島弧火山の成因として盛んに議論が行われてきた (図(A)).一方スラブ下の低速度の原因としては,沈み込みに伴うリターンフローである熱いマントル上昇流(SHMU; subslab hot mantle upwelling)等が考えられている.近年はプレート境界型巨大地震やスロー地震の発生との関わりが議論されるなど注目度が高まっている (e.g., Fan & Zhao, 2021).

我々は東南アジア,日本,地中海東部,オセアニア,南米の5領域を対象に,地表から核・マントル境界までの詳細なP波トモグラフィーモデルを得て,巨大噴火を引き起こす火山と上部マントル構造との比較を行った.用いたトモグラフィー手法は「マルチスケール・グローバルトモグラフィー法」と呼ばれるもので,対象地域下にグリッドを密に配置することで,グローバルトモグラフィーでありながらリージョナルトモグラフィーと同等の分解能を実現できる (Zhao et al., 2017).またリージョナルトモグラフィーと異なり,全地球で絶対走時残差を取り扱うことができるため,遠地地震波線を用いる際に領域外不均質の影響を除去する仮定を必要としない.さらに直達P波だけではなく,4種類の後続波(pPPPPcPPdiff)も用いることで波線密度を向上させた.5領域それぞれで,インバージョンに使った到着時刻データ数は700~800万個である.

結果として,巨大噴火を引き起こす火山の多くは,スラブ・ウィンドウ(スラブの穴や裂け目)の直上か極めて近傍で,かつSHMUが発達した場所に位置していることが明らかとなった.このような場所では,マントルウェッジ内のコーナーフローとSHMUが,スラブ・ウィンドウを通して混合していると考えられる (e.g., Toyokuni et al., 2022; Hu et al., 2023; Toyokuni & Zhao, 2024) (図(B)).またスラブ・ウィンドウがボトルネックとして働くことで,間欠的に大量のマントル物質が湧昇する可能性が高い.したがって沈み込み帯における巨大噴火は,島弧火山列の火山のうち,こうした特殊な条件が重なった場所で発生すると考えることができる.SHMUは,スラブ下にトラップされたホットプルームの一種と考えることができるため,SHMUに関連した火山は,島弧火山列に紛れ込んだホットスポット火山(=ステルス・ホットスポット火山)と捉えられる (図(C)).このモデルの妥当性は今後さらに検討する必要があるが,巨大噴火のリスクを深部構造から制約できる可能性がある.

References:
Fan, J. & Zhao, D. (2021) Nature Geosci., 14, 349–353.
Hu, H., Zhao, D., Lin, J. & Pilia, S. (2023) JGR Solid Earth, 128, e2022JB025976.
Toyokuni, G. & Zhao, D. (2024) G-Cubed, 25, e2024GC011739.
Toyokuni, G., Zhao, D. & Kurata, K. (2022) JGR Solid Earth, 127, e2022JB024298.
Zhao, D., Fujisawa, M. & Toyokuni, G. (2017) Sci. Rep., 7, 44487.