日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT20] 地球深部科学

2025年5月28日(水) 13:45 〜 15:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:石井 貴之(岡山大学惑星物質研究所)、飯塚 理子(早稲田大学教育学部理学科地球科学専修)、河合 研志(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、土屋 旬(大阪大学理学研究科宇宙地球科学専攻)、座長:石井 貴之(岡山大学惑星物質研究所)、飯塚 理子(早稲田大学教育学部理学科地球科学専修)、土屋 旬(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、河合 研志(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

14:00 〜 14:15

[SIT20-02] 下部マントル条件下におけるCaMgSi2O6 perovskiteの安定性

*中村 虎太郎1西 真之1肥後 祐司2辻野 典秀2柿澤 翔2、グレオ スティーブ3桑原 秀治3近藤 忠1 (1.国立大学法人大阪大学、2.高輝度光科学研究センター、3.愛媛大学GRC)


キーワード:CM-perovskite、X線回折、下部マントル、隕石

地球体積の約60%を占める下部マントルは、主にbridgmaniteとferropriclase, davemaoiteから構成されている。これまでの実験から、上部マントルの鉱物であるdiopside (CaMgSi2O6)は下部マントル圧力条件下で、bridgmanite (MgSiO3)とdavemaoite (CaSiO3)に二相分解することが知られている。しかし近年、中国の随州市で発見された隕石中に、マグネシウムとカルシウム両方を含むCaMgSi2O6 perovskite (以下CM-perovskite)が観察され、その隕石が経験した温度圧力から、下部マントルでこの鉱物の存在可能性が示唆された(Xie and Gu 2023)。熱力学的な平衡状態で鉱物CM-perovskiteが観察された場合、下部マントルの鉱物構成を再考することが必要となる。逆に、CM-perovskiteが準安定物質であり、 長時間の高温高圧維持の後に分解する場合では、沈み込む海洋プレートにおける鉱物相転移や隕石衝突イベントの温度圧力履歴の理解に新しい知見を与える可能性がある。
そこで、CM-perovskiteが出現する温度圧力条件探ることを目的として、マルチアンビルプレスを用いた高温高圧実験を行った。高温高圧下でのマルチアンビルプレス実験はGRCのORANGE 3000にて行われ、回収試料の分析は粉末X線回折とSEMによって行われた。出発物質はそれぞれ異なる輝石組成を持つガラスを2種類、天然多結晶体を2種類用いた。圧力は23, 25 GPa, 温度は2100 Kにて3時間保持を行い、先行研究でみられた隕石が経験した温度圧力と同じ条件で、相平衡実験を実施した。さらに、SPring-8のBL04B1に設置のSPEED-Mk.Ⅱおよび放射光X線を用いて、高温高圧その場観察法による実験を実施した。下部マントルの高温高圧条件を実現するために焼結ダイヤモンド製アンビルを使用した。最高圧力は 42GPa、最高温度は 2100 Kとした。
実験の結果、25 GPaの回収実験では、出現相としてbridgmaniteおよびdavemaoiteのみが同定された。また、23 GPaの実験では、これらに加えてmajoriteも観察された。SEMによる電子画像ではMgとCaが分離した領域が確認され、XRD分析でもCM-perovskiteに対応する回折ピークは検出されなかった。一方、放射光その場観察実験では、40 GPa, 1500–1700 KにてCM-perovskiteが出現し、1900 Kでは二相分解が起こった。その場XRD測定の結果、CM-perovskiteはcubic-perovskiteに類似した格子定数を示し、体積はdavemaoiteとbridgmaniteの中間的な値を持つと推定された。さらに、解析の結果、CM-perovskiteは高温条件下で時間とともに減少する傾向を示した。
今回の発表では、分析結果から分かった下部マントル条件下でのCM-perovskiteの出現可能性ならびにCM-perovskiteの安定性について議論する。