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[SIT20-23] 動径 1 次元モデルを用いた外核最上部における安定成層の不均質性の推定
キーワード:外核対流、安定成層、不均質構造、動径一次元モデル
地球物理観データの解析から地球外核最上部において安定成層の存在が指摘されており, 地震波形解析からは 90 km から 300 km [1,2], 地磁気解析から約 140 km とその厚さが見積もられている [3]. これらの解析においては全球一様の厚さの安定成層を想定しているが, 地磁気変動に基づく外核表面流のモデルは水平方向に不均質な安定成層の可能性を示唆している [4].
Mound et al. (2019) [5] は核−マントル境界 (CMB) における熱的な水平不均質構造を取り入れた 3 次元回転球殻熱対流計算を行い, 局所的に安定成層が存在しうることを示した. マントル最下部の地震波速度異常分布 [6] に基づいた CMB 熱流分布を与えたところ, 地震波速度が低速であるアフリカ域の直下に厚さ約 500 km の安定成層が生成された. しかしながら彼らのモデルでは外核対流の主要因と考えられている組成対流の効果が取り込まれていない. さらにブシネスク系のために一定の外核平均密度と熱伝導率を仮定しており, 安定成層の厚さの定量的な評価に影響する可能性がある.
そこで本研究では, 外核の平均的な動径構造の推定に用いられてきた 1 次元熱組成対流モデル [7] を局所的に適用することにより, 外核最上部の安定成層の厚さの水平分布を評価する. モデルは断熱温度と一様組成分布を仮定し CMB の局所的な熱流量を与えることによって, 内核の成長率, 並びに熱と組成の対流フラックスを計算し, さらに運動エネルギー生成率分布を診断して安定成層の厚さを評価することができる [8].
最初に Mound et al.(2019) [5] と同様の条件設定においてブシネスク系における 1 次元モデル計算を行い安定成層の厚さを求めた. その結果は彼らの 3 次元計算とよく一致し, 1 次元モデルを用いた推定が有用であることを確認した.
次に, 内核成長に伴う ICB での組成フラックスを熱的な浮力に変換し熱フラックス条件に加えて 1 次元モデル計算を行った結果, 組成フラックスの効果を入れない場合と比較して安定成層の厚さが小さくなる傾向が確認された. 全球平均された CMB 熱流量と比べて 5 倍の ICB フラックスを与えた場合, 安定成層が最も発達するアフリカ直下において 100km 程度にまで薄くなった.
さらに, より現実的な外核の平均密度構造を導入し, 熱伝導率の不確定性を考慮した計算を行ったところ, 太平洋やアフリカなどの低速度域では CMB 熱流量が小さいために安定成層が最も発達し,その厚さが 300 km から 850 km と見積もられた.一方, 沈み込み帯に代表される CMB 熱流量が大きい領域では安定性の生成は期待できない結果となった.
このような安定成層の水平不均質構造が存在していると, 数十年スケールの地磁気変動過程に影響を与えている可能性があるだろう [4].
参考文献
[1] Tanaka, S. (2007) Earth Planet. Sci. Lett., 259, 486-499.
[2] Kaneshima, S. (2018) Phys. Earth Planet. Int., 276, 234-246.
[3] Buffett, B. A. (2014) Nature, 356, 329-331.
[4] Huguet, L., Amit, H., Alboussiere, T. (2016) Geophys. J. Int., 207, 934-948.
[5] Mound, J., et al. (2019) Nature Geosci., 12, 575-580.
[6] Masters, G. et al. (2000) in Earth's deep interior. Mineral physics and tomography from the atomic to the global scale, Geophysical Monograph series, 117, 63-87.
[7] Nakagawa, T. et al. (2023) in Core-Mantle Co-evolution: An Interdisciplinary Approach, AGU monograph series, 276, 145-163.
[8] Takehiro, S., Sasaki, Y. (2018) Front. Earth Sci. 6:192.
Mound et al. (2019) [5] は核−マントル境界 (CMB) における熱的な水平不均質構造を取り入れた 3 次元回転球殻熱対流計算を行い, 局所的に安定成層が存在しうることを示した. マントル最下部の地震波速度異常分布 [6] に基づいた CMB 熱流分布を与えたところ, 地震波速度が低速であるアフリカ域の直下に厚さ約 500 km の安定成層が生成された. しかしながら彼らのモデルでは外核対流の主要因と考えられている組成対流の効果が取り込まれていない. さらにブシネスク系のために一定の外核平均密度と熱伝導率を仮定しており, 安定成層の厚さの定量的な評価に影響する可能性がある.
そこで本研究では, 外核の平均的な動径構造の推定に用いられてきた 1 次元熱組成対流モデル [7] を局所的に適用することにより, 外核最上部の安定成層の厚さの水平分布を評価する. モデルは断熱温度と一様組成分布を仮定し CMB の局所的な熱流量を与えることによって, 内核の成長率, 並びに熱と組成の対流フラックスを計算し, さらに運動エネルギー生成率分布を診断して安定成層の厚さを評価することができる [8].
最初に Mound et al.(2019) [5] と同様の条件設定においてブシネスク系における 1 次元モデル計算を行い安定成層の厚さを求めた. その結果は彼らの 3 次元計算とよく一致し, 1 次元モデルを用いた推定が有用であることを確認した.
次に, 内核成長に伴う ICB での組成フラックスを熱的な浮力に変換し熱フラックス条件に加えて 1 次元モデル計算を行った結果, 組成フラックスの効果を入れない場合と比較して安定成層の厚さが小さくなる傾向が確認された. 全球平均された CMB 熱流量と比べて 5 倍の ICB フラックスを与えた場合, 安定成層が最も発達するアフリカ直下において 100km 程度にまで薄くなった.
さらに, より現実的な外核の平均密度構造を導入し, 熱伝導率の不確定性を考慮した計算を行ったところ, 太平洋やアフリカなどの低速度域では CMB 熱流量が小さいために安定成層が最も発達し,その厚さが 300 km から 850 km と見積もられた.一方, 沈み込み帯に代表される CMB 熱流量が大きい領域では安定性の生成は期待できない結果となった.
このような安定成層の水平不均質構造が存在していると, 数十年スケールの地磁気変動過程に影響を与えている可能性があるだろう [4].
参考文献
[1] Tanaka, S. (2007) Earth Planet. Sci. Lett., 259, 486-499.
[2] Kaneshima, S. (2018) Phys. Earth Planet. Int., 276, 234-246.
[3] Buffett, B. A. (2014) Nature, 356, 329-331.
[4] Huguet, L., Amit, H., Alboussiere, T. (2016) Geophys. J. Int., 207, 934-948.
[5] Mound, J., et al. (2019) Nature Geosci., 12, 575-580.
[6] Masters, G. et al. (2000) in Earth's deep interior. Mineral physics and tomography from the atomic to the global scale, Geophysical Monograph series, 117, 63-87.
[7] Nakagawa, T. et al. (2023) in Core-Mantle Co-evolution: An Interdisciplinary Approach, AGU monograph series, 276, 145-163.
[8] Takehiro, S., Sasaki, Y. (2018) Front. Earth Sci. 6:192.