日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP28] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2025年5月27日(火) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:永冶 方敬(東京学芸大学)、山岡 健(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、座長:宇野 正起(東北大学大学院環境科学研究科)、山岡 健(国立研究開発法人産業技術総合研究所)

10:15 〜 10:30

[SMP28-06] 東南極リュツォ・ホルム岩体ルンドボークスヘッタにおける石灰珪質グラニュライトの温度圧力流体条件とFe3+の影響

*阿部 こよみ1、Connolly James2,4外田 智千3、Krishnan Sajeev4Satish-Kumar Madhusoodhan5 (1.新潟大学自然科学研究科、2.ETH Zurich、3.国立極地研究所、4.Centre for Earth Sciences, Indian Institute of Science、5.新潟大学理学部)


石灰珪質岩は高度変成作用を受けた地域の温度–圧力–流体進化や酸素フガシティーの状態を理解するための鍵となる岩石である(Satish-Kumar et al., 2006; Dasgupta and Pal, 2005).流体や酸素フガシティーの情報は鉱物の化学組成に記録され,鉄の酸化状態として表されることが多い.鉄の酸化状態は岩石から地質学的な情報を引き出すうえで重要な意味合いを持つが,現在の地質学の分野で用いられる多くの測定機器(XRF, EPMA)では鉄イオンの状態を区別することはできない.しかし,鉱物の熱力学的なデータセットや相平衡モデリングを行うソフトウェアが充実してきたことで,鉄の状態や酸素の量をこれらを用いて推定できる可能性がある.そこで本研究では,相平衡図(シュードセクション)を用いて全岩化学組成中に含まれる三価鉄や酸素の量を推定し,東南極リュツォ・ホルム岩体ルンドボークスヘッタから産出する石灰珪質岩の温度–圧力–流体進化を議論する.
ルンドボークスヘッタが属するリュツォ・ホルム岩体は,高温から超高温変成作用を受けた地域である.リュツォ・ホルム岩体は,北東部の角閃岩相から南西部のグラニュライト相へと変化し,ルンドボークスヘッタにて最高変成度を迎えたことが知られている.ルンドボークスヘッタの温度圧力条件は、この地域から産出する泥質変成岩によりすでに求められている(Yoshimura et al., 2008).石灰珪質岩は両輝石グラニュライト中にブロック状で産出した.
試料の薄片観察の結果,石灰珪質岩は鉱物組み合わせと鉱物モードに応じて5つの領域に分割できることが分かった.Zone ⅠとⅤは,Scp+Cpx+Qz+Plの組み合わせを持ち,ガーネットは確認できなかった.Zone ⅡとⅣは主にGrt+Cpx+Scp+Pl+Qzの組み合わせであり,柱石と斜長石の鉱物モードが著しく変化していることが認められ,それぞれをScp-richドメインとPl-richドメインとした.また後退変成作用で形成されたと考えられるコロナ状ガーネットが存在した.Zone Ⅲの主な組み合わせはGrt+Scp+Qz+Cpxであり,ガーネットはポーフィロブラスティックな組織を持っていた.鉱物化学組成分析の結果,ガーネットはグロッシュラーからアンドラダイトの固溶体組成を示した.ポーフィロブラスティックなガーネットや粒状に存在するガーネットはグロッシュラーに近い組成を示したのに対し,コロナ状に晶出するものはアンドラダイト成分に富んでいた.
Scp-richドメインとPl-richドメインのそれぞれに対してT-XO2シュードセクションを作成し,酸素の量を推定した.さらにここで推定した酸素の量を用いてP-Tシュードセクションを構築した.本研究のシュードセクションの鉱物組み合わせによって示される温度圧力範囲は大まかに先行研究のものと一致するが,温度に関して乖離が生じていることが分かった.原因として熱力学データや固溶体モデルなどの不確実性による影響や、各ドメインの部分的な平衡条件を示していることなどが考えられる.

参考文献
Dasgupta, S. and Pal, S., 2005. Origin of grandite garnet in calc-silicate granulites: Mineral–fluid equilibria and petrogenetic grids. Journal of Petrology, 46 (5), 1045–1076.
Satish-Kumar, M., Motoyoshi, Y., Suda, Y., Hiroi, Y. and Kagashima, S., 2006. Calc-silicate rocks and marbles from Lützow-Holm Complex, East Antarctica, with special reference to the mineralogy and geochemical characteristics of calc-silicate mega-boudins from Rundvågshetta. Polar Geoscience, 19, 37–61.
Yoshimura, Y., Motoyoshi, Y. and Miyamoto, T., 2008. Sapphirine + quartz association in garnet: implication for ultrahigh-temperature metamorphism at Rundvågshetta, Lützow-Holm Complex, East Antarctica. Geological Society, London, Special Publications, 308 (1), 377–390.