日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP28] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2025年5月27日(火) 10:45 〜 12:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:永冶 方敬(東京学芸大学)、山岡 健(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、座長:纐纈 佑衣(名古屋大学大学院 環境学研究科)、永冶 方敬(東京学芸大学)

11:30 〜 11:45

[SMP28-10] 関東山地と四国における三波川帯の熱史の違い

*纐纈 佑衣1清水 以知子2 (1.名古屋大学大学院環境学研究科 地球環境科学専攻、2.京都大学大学院理学研究科 地球惑星科学専攻)

キーワード:三波川帯、炭質物ラマン温度計、シュードセクション解析、黒雲母、灰曹長石

三波川帯は、関東山地から九州まで約800kmに及ぶ中高P/T型の沈み込み型変成帯である。関東山地の三波川帯は約60kmで、鮎川と三波川が流れる西部と、長瀞に代表される荒川沿いの東部に分けられる。本研究では、三波川帯の模式地である西部の鮎川ユニットについて、炭質物ラマン温度計とシュードセクション解析を用いて,温度構造と変成分帯の関係を調べるとともに、四国三波川帯の年代データと比較し、変成史を考察した。
先行研究では、関東山地の三波川帯は,緑泥石帯、ざくろ石帯、黒雲母帯に分けられ、その変成度は南から北に向かって上昇する傾向が見られる。鮎川ユニットでは、黒雲母帯全域で灰曹長石の出現が報告されており,四国三波川帯の別子ユニットのように曹長石-黒雲母帯と灰曹長石-黒雲母帯には分かれていない。また,鮎川ユニットは砕屑性ジルコンの年代とK-Ar及びAr-Ar年代によって2つのユニットに分けられており,南側の緑泥石帯とざくろ石帯の一部は上部ユニットで、上昇年代は白亜紀後期の約60–80 Maである一方,北側のざくろ石帯の一部と黒雲母帯は下部ユニットで、上昇年代が古第三紀の約50–60 Maと比較的若い年代が報告されている。
炭質物ラマン温度計を用いた結果、推定温度範囲は357℃から538℃であり、南から北に向かって温度が上昇する傾向が見られた。変成分帯と炭質物ラマン温度計によって得られた温度の関係は、緑泥石帯が360℃程度、ざくろ石帯が約390–470℃、黒雲母帯が約470–540℃であった。三波川帯の他地域の炭質物ラマン温度計の結果と変成分帯の関係を比較すると、関東山地の黒雲母帯が約470℃で出現するのに対し、四国の黒雲母帯は約500℃で出現する。この温度差は圧力条件の違いによるものと考えられる。シュードセクション解析の結果から、関東山地において黒雲母が約470℃で出現するのに必要な圧力条件は約0.8GPaであるのに対し、四国で黒雲母が約500℃で出現するのに必要な圧力条件は約0.9GPaである。また、シュードセクション解析によると、灰曹長石の体積割合は圧力が低いほど高く、このことも関東山地の変成圧力が四国よりも低いことを裏付けている。
四国三波川帯別子ユニットの白雲母のK-Ar及びAr-Ar年代から決定された上昇年代は、関東山地の鮎川ユニットよりも古く、約80 Maである。この年代データから、四国の別子ユニットが隆起していた時期には、関東山地はまだ沈み込みあるいはピーク変成作用の最中であったと考えられる。先行研究において、三波川帯では海嶺接近モデルが提案されており,年代が若いほど浅い深度で暖かい変成作用を被った可能性が高い。関東山地は四国よりも年代が若く、特に黒雲母帯は海嶺の沈み込み期に近い約50–60Maの上昇年代が報告されていることから、黒雲母や灰曹長石の出現が容易な低圧条件下で変成作用が受けた可能性が示唆された.