13:45 〜 14:00
[SMP28-13] EBSD解析のジルコン年代への応用: 三波川エクロジャイト中のジルコンに見られる疑似包有物と多段階の変形ステージの認識

キーワード:ジルコン、U–Pb、三波川帯、包有物、塑性変形
三波川変成帯のエクロジャイトから「疑似包有物」を含む火成ジルコンを見出し, 変形構造の同定や原岩形成年代の測定を試みた。
ジルコンは, 閉鎖温度の高さや物理的・化学的安定性などから, 変成岩のU-Pb年代測定によく用いられている。また, ジルコン中に含まれる包有物の鉱物組み合わせと年代情報を組み合わせて, P-T条件と年代値を直接結びつけることも可能である。他方, 変成岩中のジルコンは, 変形によって生じた亜粒界などに沿って流体パスが形成され, 鉛損失による年代の若返りや疑似包有物(ホスト鉱物成長時の取り込みではなく,成長後の変形などによって後生的に混入した微細鉱物)の混入が起こることが知られている。造山運動のような大規模なテクトニクスを解析する上でジルコン年代は非常に重要な役割を担うが, ジルコン年代の正しい解釈やP-T条件との結び付けには, ジルコン自体の鉱物組織を考慮して慎重に議論する必要がある。しかし, 特に若いジルコンにおける年代の若返りは考慮されないことが多く, また包有物の解釈もCL像を用いた経験的な判断にゆだねられている。本研究では, 三波川変成帯のエクロジャイト中のジルコンを用いて, レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)によるU-Pb年代測定と電子線後方散乱(EBSD)による歪分布解析を組み合わせることで,ジルコン中の変形構造の詳細な記載を行った。
ジルコンは, 愛媛県別子地域に分布する瀬場変斑れい岩体のエクロジャイトから分離された。本岩体の変成年代や原岩形成年代について明瞭な合意は得られていない。抽出されたジルコンのCL像から, ブロードな累帯や曇ったような構造を有するコア部と, その周囲の薄いリム部が認識された。コア部の238U年代として, 179~199 Maのコンコーダントな年代を得た。REEパターンは負のEu異常とHREEに富んだ右肩上がりの組成で, Th/U比は火成ジルコンに特徴的な値(>0.1)を示した。
次にジルコン結晶内の歪分布を調べるため, EBSDによって結晶方位を測定し, Grain Reference Orientation Deviation(GROD)値とKernel Average Misorientation(KAM)値をマッピングした。これらの歪分布と, 光学顕微鏡による観察・CL像・BS像を比較し, 変形構造の同定を行った。その結果, ジルコン中に見られる変形構造は, ①脆性破壊による亀裂, ②塑性変形による亜粒界, ③空孔や液体包有物の配列の3種類に分類された。①亀裂は光学顕微鏡観察・BS像から最も明瞭に認識され, KAMマップでは不明瞭な場合がある。②亜粒界はKAMマップやCL像から明瞭に認識され, 光学顕微鏡やBS像からは認識できない。③空孔配列は光学顕微鏡やCL像から明瞭に認識されるが, KAMマップからは認識できない。変形構造とコア-リム構造の前後関係は, コア部の形成→③空孔配列→変成リム形成→①亀裂・②亜粒界と認定された。
ジルコン中に認められた微細鉱物(オンファス輝石・緑簾石・曹長石・フェンジャイトなど)は, 上記に挙げた変形構造に沿って分布していた。特にエクロジャイト相の変成作用を表すオンファス輝石は①亀裂上や②亜粒界上にのみ分布していた。このことから, これらの微細鉱物はジルコン成長時に取り込まれた包有物ではなく, ジルコン成長後の変形によって生じた亜粒界に沿って後生的に混入したものであると考えられる。つまり, 瀬場変斑れい岩中のジルコンはオンファス輝石などの高圧指標鉱物を含んでいるものの, これらの高圧指標鉱物は変形時に取り込まれた「疑似包有物」であり, 180~200 Maという年代は変成年代ではなく, 苦鉄質メルトから晶出した原岩形成年代であると判断される。これはREEパターンやTh/U比といった微量元素データからも支持される。
本研究は, 変成岩中のジルコン年代を解釈する際, CL像の観察に加えてEBSDによる歪分布解析を行うことで, ジルコンの変形時に後生的に混入した「疑似包有物」を判別できることを示した。また, CL像・BS像・光学顕微鏡・EBSDを組み合わせることで, ジルコン中に見られる複数の変形組織を区別できる可能性がある。ジルコン年代学にEBSDを組み合わせることは, 変形構造を持つジルコンの変成・変形史を年代値と直接結びつけて解読できる有効なツールである。
ジルコンは, 閉鎖温度の高さや物理的・化学的安定性などから, 変成岩のU-Pb年代測定によく用いられている。また, ジルコン中に含まれる包有物の鉱物組み合わせと年代情報を組み合わせて, P-T条件と年代値を直接結びつけることも可能である。他方, 変成岩中のジルコンは, 変形によって生じた亜粒界などに沿って流体パスが形成され, 鉛損失による年代の若返りや疑似包有物(ホスト鉱物成長時の取り込みではなく,成長後の変形などによって後生的に混入した微細鉱物)の混入が起こることが知られている。造山運動のような大規模なテクトニクスを解析する上でジルコン年代は非常に重要な役割を担うが, ジルコン年代の正しい解釈やP-T条件との結び付けには, ジルコン自体の鉱物組織を考慮して慎重に議論する必要がある。しかし, 特に若いジルコンにおける年代の若返りは考慮されないことが多く, また包有物の解釈もCL像を用いた経験的な判断にゆだねられている。本研究では, 三波川変成帯のエクロジャイト中のジルコンを用いて, レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)によるU-Pb年代測定と電子線後方散乱(EBSD)による歪分布解析を組み合わせることで,ジルコン中の変形構造の詳細な記載を行った。
ジルコンは, 愛媛県別子地域に分布する瀬場変斑れい岩体のエクロジャイトから分離された。本岩体の変成年代や原岩形成年代について明瞭な合意は得られていない。抽出されたジルコンのCL像から, ブロードな累帯や曇ったような構造を有するコア部と, その周囲の薄いリム部が認識された。コア部の238U年代として, 179~199 Maのコンコーダントな年代を得た。REEパターンは負のEu異常とHREEに富んだ右肩上がりの組成で, Th/U比は火成ジルコンに特徴的な値(>0.1)を示した。
次にジルコン結晶内の歪分布を調べるため, EBSDによって結晶方位を測定し, Grain Reference Orientation Deviation(GROD)値とKernel Average Misorientation(KAM)値をマッピングした。これらの歪分布と, 光学顕微鏡による観察・CL像・BS像を比較し, 変形構造の同定を行った。その結果, ジルコン中に見られる変形構造は, ①脆性破壊による亀裂, ②塑性変形による亜粒界, ③空孔や液体包有物の配列の3種類に分類された。①亀裂は光学顕微鏡観察・BS像から最も明瞭に認識され, KAMマップでは不明瞭な場合がある。②亜粒界はKAMマップやCL像から明瞭に認識され, 光学顕微鏡やBS像からは認識できない。③空孔配列は光学顕微鏡やCL像から明瞭に認識されるが, KAMマップからは認識できない。変形構造とコア-リム構造の前後関係は, コア部の形成→③空孔配列→変成リム形成→①亀裂・②亜粒界と認定された。
ジルコン中に認められた微細鉱物(オンファス輝石・緑簾石・曹長石・フェンジャイトなど)は, 上記に挙げた変形構造に沿って分布していた。特にエクロジャイト相の変成作用を表すオンファス輝石は①亀裂上や②亜粒界上にのみ分布していた。このことから, これらの微細鉱物はジルコン成長時に取り込まれた包有物ではなく, ジルコン成長後の変形によって生じた亜粒界に沿って後生的に混入したものであると考えられる。つまり, 瀬場変斑れい岩中のジルコンはオンファス輝石などの高圧指標鉱物を含んでいるものの, これらの高圧指標鉱物は変形時に取り込まれた「疑似包有物」であり, 180~200 Maという年代は変成年代ではなく, 苦鉄質メルトから晶出した原岩形成年代であると判断される。これはREEパターンやTh/U比といった微量元素データからも支持される。
本研究は, 変成岩中のジルコン年代を解釈する際, CL像の観察に加えてEBSDによる歪分布解析を行うことで, ジルコンの変形時に後生的に混入した「疑似包有物」を判別できることを示した。また, CL像・BS像・光学顕微鏡・EBSDを組み合わせることで, ジルコン中に見られる複数の変形組織を区別できる可能性がある。ジルコン年代学にEBSDを組み合わせることは, 変形構造を持つジルコンの変成・変形史を年代値と直接結びつけて解読できる有効なツールである。