17:15 〜 19:15
[SMP28-P09] 低温でのドロマイトの延性変形:東アルプスの例
キーワード:ドロマイト岩、延性変形、東アルプス
本研究は、東アルプス山脈での野外調査を踏まえ、苦灰岩(ドロマイト岩石)の延性変形の条件について考察 するものである。
一般に、天然で高歪みを受けた岩石の微細組織は、変形条件や変形機構を推定するために用いられており、中部・下部地殻の強度をモデル化する上で重要な役割を果たす。中でも、橄欖岩、石英片岩、石灰岩などといった単一鉱物からなる岩石は、比較的単純な系であるため、変形実験との比較が容易であり、盛んに研究が行われている。ここで、炭酸塩岩は、パッシブマージンに多く堆積する岩石であり、大陸衝突においてその変形が重要である。炭酸塩岩は、主に方解石からなる石灰岩と、主にドロマイト鉱物からなるドロマイト岩で構成されるが、石灰岩に比べて、ドロマイト岩の変形に関する研究例が少ない。この理由の一つとして、ドロマイト岩が中程度の変成条件下で脆性破壊を起こし、マイロナイトに代表されるような歪みの局所化においてあまり重要でないと示唆する天然観察が多かったことが挙げられる。しかし、変形実験の結果を天然条件に外挿すると、300⁰Cといった低温でも延性変形を起こすことが示されており、最近では、これを裏付ける天然での観察もいくつか報告されている。このことから、ドロマイトのマイロナイトはより普遍的に存在し、ドロマイトのマイロナイトの微細組織から造山帯での変形条件に関してさらなる情報を得られる可能性がある。
これについて検討するため、オーストリア東アルプスMatrei Zoneにて岩石を採取し、微細組織の観察および先行研究の変形実験との比較を行った。この地域は、Penninic oceanic domainとよばれる変成海底堆積物の上に、Austroalpine domainとよばれる変成岩類がのし上がったプレート境界域である。このうち、Matrei Zoneでは、kmスケールの強い褶曲や面構造・線構造に代表される特に強い延性変形が記録されている。主な岩石は、変成基盤岩、石英片岩、ドロマイトを主とする炭酸塩岩、そして、Bündnerschieferとよばれる、緑泥石や炭質物を含む泥質片岩である。このMatrei Zoneは、大陸縁辺でみられる岩石組成をもつことから、主にAustroalpine domainの一部として解釈される。この地域のドロマイト岩の特徴として、破壊やブーディン構造などといった脆性破壊を起こしたものが多いものの、特に石英片岩とともい露出する、顕著なマイロナイト組織など、強い延性変形を示すものもあることである。そこで、本研究では、ドロマイト岩における延性変形の条件を検討するために、延性変形を示すドロマイト岩や周辺の石英片岩や泥質片岩を採取し、室内分析を行った。ラマン炭質物温度計と石英c軸ファブリック温度計から、変形温度は430~550⁰Cと推定され、石英応力計から変形時の差応力は50~70MPaと推定された。ドロマイトの組織観察では、粒径100μm程度の粒子では、転位クリープやバルジングによる動的再結晶が確認され、10μm以下の細粒な領域では粒界依存クリープと転位クリープの両方を示唆する組織がみられた。これらの観察により、バルジングによる動的再結晶で細粒化が起こり、細粒となった領域で粒径依存の変形機構が作用し始めることで、歪みが局所化されたと結論づけられた。先行研究で行われた変形実験を参考に、ドロマイトの変形機構図を作成すると、上述の変形条件下では、100μm以上の粗粒な粒子では転位クリープが卓越し、10μm以下の細粒な粒子では転位クリープ・拡散クリープの境界にあることが示される。よって、歪みエネルギーによる細粒化と表面エネルギーによる粒成長の拮抗が起こったと示唆される。また、歪み速度は10-12/s程度と推定された。本研究の成果は、ドロマイトマイロナイトから歪み速度や差応力といった造山運動に重要なパラメータを抽出する可能性を示唆する。
一般に、天然で高歪みを受けた岩石の微細組織は、変形条件や変形機構を推定するために用いられており、中部・下部地殻の強度をモデル化する上で重要な役割を果たす。中でも、橄欖岩、石英片岩、石灰岩などといった単一鉱物からなる岩石は、比較的単純な系であるため、変形実験との比較が容易であり、盛んに研究が行われている。ここで、炭酸塩岩は、パッシブマージンに多く堆積する岩石であり、大陸衝突においてその変形が重要である。炭酸塩岩は、主に方解石からなる石灰岩と、主にドロマイト鉱物からなるドロマイト岩で構成されるが、石灰岩に比べて、ドロマイト岩の変形に関する研究例が少ない。この理由の一つとして、ドロマイト岩が中程度の変成条件下で脆性破壊を起こし、マイロナイトに代表されるような歪みの局所化においてあまり重要でないと示唆する天然観察が多かったことが挙げられる。しかし、変形実験の結果を天然条件に外挿すると、300⁰Cといった低温でも延性変形を起こすことが示されており、最近では、これを裏付ける天然での観察もいくつか報告されている。このことから、ドロマイトのマイロナイトはより普遍的に存在し、ドロマイトのマイロナイトの微細組織から造山帯での変形条件に関してさらなる情報を得られる可能性がある。
これについて検討するため、オーストリア東アルプスMatrei Zoneにて岩石を採取し、微細組織の観察および先行研究の変形実験との比較を行った。この地域は、Penninic oceanic domainとよばれる変成海底堆積物の上に、Austroalpine domainとよばれる変成岩類がのし上がったプレート境界域である。このうち、Matrei Zoneでは、kmスケールの強い褶曲や面構造・線構造に代表される特に強い延性変形が記録されている。主な岩石は、変成基盤岩、石英片岩、ドロマイトを主とする炭酸塩岩、そして、Bündnerschieferとよばれる、緑泥石や炭質物を含む泥質片岩である。このMatrei Zoneは、大陸縁辺でみられる岩石組成をもつことから、主にAustroalpine domainの一部として解釈される。この地域のドロマイト岩の特徴として、破壊やブーディン構造などといった脆性破壊を起こしたものが多いものの、特に石英片岩とともい露出する、顕著なマイロナイト組織など、強い延性変形を示すものもあることである。そこで、本研究では、ドロマイト岩における延性変形の条件を検討するために、延性変形を示すドロマイト岩や周辺の石英片岩や泥質片岩を採取し、室内分析を行った。ラマン炭質物温度計と石英c軸ファブリック温度計から、変形温度は430~550⁰Cと推定され、石英応力計から変形時の差応力は50~70MPaと推定された。ドロマイトの組織観察では、粒径100μm程度の粒子では、転位クリープやバルジングによる動的再結晶が確認され、10μm以下の細粒な領域では粒界依存クリープと転位クリープの両方を示唆する組織がみられた。これらの観察により、バルジングによる動的再結晶で細粒化が起こり、細粒となった領域で粒径依存の変形機構が作用し始めることで、歪みが局所化されたと結論づけられた。先行研究で行われた変形実験を参考に、ドロマイトの変形機構図を作成すると、上述の変形条件下では、100μm以上の粗粒な粒子では転位クリープが卓越し、10μm以下の細粒な粒子では転位クリープ・拡散クリープの境界にあることが示される。よって、歪みエネルギーによる細粒化と表面エネルギーによる粒成長の拮抗が起こったと示唆される。また、歪み速度は10-12/s程度と推定された。本研究の成果は、ドロマイトマイロナイトから歪み速度や差応力といった造山運動に重要なパラメータを抽出する可能性を示唆する。